コーポラティズム
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先進諸国のコーポラティズム度[19]シュミッターによる順位[20]キャメロンによる指標[21]
集権度独占度順位集権度独占度組織率指標
 オーストリア1.03.01.00.81.05090.0
 ノルウェー5.01.52.00.70.86597.5
 スウェーデン5.04.54.00.70.870105.0
 フィンランド5.04.54.00.60.84765.8
 デンマーク8.01.54.00.40.85464.8
 オランダ2.08.56.00.60.62833.6
 ベルギー3.08.57.00.60.65566.0
 ドイツ9.06.08.00.20.83232.0
 スイス7.013.09.00.40.62424.0
 カナダ12.58.510.50.00.42710.8
 アメリカ合衆国12.58.510.50.00.4218.4
 フランス10.013.012.00.00.2244.8
 イギリス12.511.013.00.30.44531.5
 イタリア12.513.014.00.20.24116.4
 オーストラリア---0.30.44028.0
 日本---0.10.2164.8

特徴
マクロ経済への影響

ネオ・コーポラティズム論において、インフレ率などの経済指標と労働組合の強さの関係について、通説と異説の見解に分かれる[注釈 2]

通説的理解では、労働組合が強さや集権性に反比例してインフレ率が低くなる傾向が主張される。その理由としては、

労働組合が集権的に組織されている場合、政府が社会保障政策を充実させることと引き換えに、労働組合が賃上げ要求を抑制する。

労働組合の交渉力が経営者にとって無視しがたいほど強力である場合、労働組合の経営参加が制度的に保障されるため、企業経営やマクロ経済を圧迫するほどの賃上げ要求を控えるようになる。

労働組合が集権的に組織されていない場合は「賃金交渉における集合行為問題」[注釈 3]が生じてしまう。その一方で、労働組合が集権的に組織されている場合、労組の全国組織は、全国レベルでの賃金交渉でマクロ経済全体を考慮した水準に抑制し、その交渉結果を傘下労組に強要するため、「賃金交渉における集合行為問題」が回避される。

などと説明される。

これに対して異説では、労働組合の力や集権性が弱い場合と強い場合の両極端でインフレ率が低くなり、その中間でインフレ率が高くなる傾向が主張される。労働組合の力が弱い場合、市場メカニズムに従って賃金水準が決定されるため、インフレが抑制される。しかし、労働組合が分権的ながらも一定の交渉力を持っている場合、「賃金交渉における集合行為問題」によりインフレが生じる。「賃金交渉における集合行為問題」が回避されるには、労組の全国組織が賃上げ抑制を傘下労組に強要できる程度に、労働組合が集権的に組織されている必要があるとされる。
福祉国家との関係

集権化された労働組合が賃上げ要求を抑制する場合、その見返りに経営者団体が社会保障政策の拡充を容認することがある。逆に、左派政党の政権下で、賃上げ抑制に対する見返りの政策が期待できる場合、集権化された労働組合は賃上げ抑制に応じやすくなる。

また、普遍主義的な社会保障政策は、失業率が上昇すると一気に財政負担が増大してしまうことから、完全雇用の実現が前提条件となる。このため、普遍主義を志向する福祉国家では積極的労働市場政策が推進されることが多い。ネオ・コーポラティズムの性格が強い国では、生産性の高い産業への労働者の移動や、産業の再編・合理化に対して、労働組合が協力(もしくは率先して推進)することがある(たとえばレーン=メイドナー・モデルフレキシキュリティ)。
衰退

しかし、1980年代頃からネオ・コーポラティズム的な政労使の協調体制の衰退が指摘されている。原因の1つはグローバル化の影響である。すなわち、資本の国際移動の自由化により国内産業の流出する可能性が生じたことから、政策決定における経営者団体の発言力が高まっている。また、製造業からサービス産業への産業構造の転換によって労働者の均質性が失われ、労働組織率の低下に伴って労働組合の発言力も低下している。

たとえばスウェーデンは従来からネオ・コーポラティズムの典型例と言われてきたが、社会民主労働党の下野(1991年2006年)に象徴される労働組合の退潮、1980年代以降の賃金交渉の分権化、行政改革税制改革、福祉政策の削減など、ネオ・コーポラティズムの著しい衰退が指摘されている[22]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ たとえばスウェーデンの場合、政策決定過程では、

調査委員会(utredning、kommitteer)

平均4名程度で行われる審議会に、官僚政治家、利益集団などが参加する。


レミス(remiss)

利益集団に対する意見聴取手続き。

政策実施過程では、

行政委員会(Lekmannastyrelse、直訳すると「素人委員会」)

政策実施を担当する行政機関である「庁」(styrelse、verk、イギリスのサッチャー政権下の行政改革におけるエージェンシーに相当)の運営機関に利益集団が参加。具体的には、労働市場庁(Arbetsmarknadsstyrelsen、1948年)の行政委員会を通じた労働組合の影響力行使が有名である。

などの諸制度が挙げられる。宮本、1999年、64-67頁。
^ このほか、

労働組合の集権性と政府の党派性の組み合わせ

(労働組合ではなく)経営者側の協調体制

中央銀行金融政策との関係
を重視する研究などがある。新川他、2004年、121-163頁。
^ 「賃金交渉における集合行為問題」とは以下のような囚人のジレンマである。

過度な賃上げは労働コストの上昇による国際競争力の低下やコスト・プッシュ・インフレを招く。

しかし、労働組合が分権的に組織されている場合、個々の労働組合にとって、他の企業・産業の賃金交渉で賃上げ抑制が実現される保証はない。

もし他の企業・産業で大幅な賃上げが実現したにもかかわらず、自分たちだけ賃上げを抑制してしまうと、インフレによって実質賃金が低下してしまう。また、たとえ他の企業・産業で賃上げが抑制されたとしても、自分たちだけ抜け駆けして大幅な賃上げを実現することで、(個々の賃金交渉がマクロ経済全体に及ぼす影響は小さいから)「良好なマクロ経済環境」と「大幅な賃上げ」の両方の果実を得ることができる。

このように「良好なマクロ経済環境」は公共財の性格を持つため、多くの労働組合がただ乗りして、大幅な賃上げを要求してしまう。

その結果としてマクロ経済が悪化する。
新川他、2004年、125頁、138頁。

出典^ Wiarda, 1996, p. 27.
^ Clarke, 2001, p. 113.
^ Clarke, 2001, p. 113
^ 稲上他、1997年。
^ 橘川、島田、2008年。
^定義集 コーポラティズム・市場社会主義・社会民主主義・ヘゲモニー
^ リーダーズ英和辞典(研究社)、ロイヤル英和辞典(旺文社)、ランダムハウス英和大辞典・プログレッシブ英和中辞典(小学館)
^ 加藤秀治郎「政治学の基礎」(一藝社、2002年、p138-139)
^ [1]
^ Wiarda, 1996, p. 23-24.
^ Slomp, 2000, p. 81
^ Adler, 2002, p. 349
^ Wiarda, 1996, p. 10
^ Murchison, 1967, p. 150.
^ Morgan, 2009, p. 14
^ Wiarda, 1996, p. 28-88"
^ Wiarda, 1996, p. 31-38, 44, 111, 124, 140.
^ シュミッター、1984年、28-30頁。
^ 新川他、2004年、112頁。


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