コーポラティズム
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コーポラティズム(: Corporatism、: Corporativismo)とは、政治経済分野における共同体の概念の1つで、国家や社会などの集団の、有機体的な関連性と相互の協調を重視する[1][2]

コーポラティズムの概念は19世紀ヨーロッパで、当時の個人主義的自由主義による個人主義的な社会観に反対する形で発生し、共同体を人間身体のように見做し、個人の間における有機体的で社会連帯的で機能的な特質と役割に基礎を置いた。

20世紀にはベニート・ムッソリーニなどファシストがコーポラティズムを主張し、国家組織に経営者労働者の代表を組織し、統制経済を行った。これは「国家コーポラティズム」や「権威主義的コーポラティズム」とも呼ばれる。

また第二次世界大戦後は、北欧などの民主主義諸国における政府利益集団のパートナーシップに基づく政策立案・政策運営・利害調整もコーポラティズムと呼ばれる。これは「ネオ・コーポラティズム」(新コーポラティズム)や「社会コーポラティズム」、「民主的コーポラティズム」、「社会民主主義的コーポラティズム」などとも呼ばれる。
用語

「コーポラティズム」の語はラテン語の「corpus」(身体)に由来する[3]。日本では時期や指す内容にも応じて、「協同主義」「協調主義」「統合主義」[4][5][6]、あるいは「協調組合主義」[7]などと訳されている。通常、第二次世界大戦前はワイマールドイツの経済会議やイタリアのファシズム国家の団体統合原理である「職能代表制」を指したが、第二次世界大戦後は政府と労働組合などの巨大な圧力団体との密接な関係を指すようになった[8]。また「ネオ・コーポラティズム」は「新協調主義」や「新協調組合主義」[9]とも訳されている。
概要

公式なコーポラティストのモデルは、農業や経営、民族、労働、軍事、後援、科学、宗教などのコーポレート・グループの集約的な身体(集団)への契約を基礎とする[10]。コーポラティズムの最も著名な形態の1つは、経済政策を設定するための経営・労働・国家の利益集団の間の調整を含む、三者構成原則である[11]

コーポラティズムは、階層的な機能という社会学的な概念に関連している[12]。集団的で社会的な相互交流や相互作用は、家族や一族や民族などの親族集団の中では一般的である[13]。人間以外でもペンギンなどの一部の動物の種は、強い集団的な社会組織を示す事が知られている[14]。自然では有機体細胞は、集団的な組織体と相互作用を含むことが認識されている[15]

コーポラティストの共同体や社会的相互作用の視点では、キリスト教イスラム教ヒンドゥー教仏教儒教などの宗教が、主要世界では一般的である[16]。そしてなによりも、コーポラティズムは政治的スペクトルをまたがった多くのイデオロギーを使用してきており、それには絶対主義資本主義保守主義、ファシズム、自由主義、進歩主義反動主義社会民主主義社会主義サンディカリスムなどが含まれる[17]
思想としてのコーポラティズム

コーポラティズム的な着想は、19世紀後半以降の非常に多種多様な思想の中に垣間見ることができる。具体的には、

身分制議会を主張したオーストリアのオトマール・シュパン

イギリスのギルド社会主義

レオ13世回勅レールム・ノヴァールム」(1891年

ピウス11世の回勅「クアドラジェジモ・アンノ」(1931年

などが挙げられる。また、ヴァイマル憲法における経済議会はコーポラティズムの制度化とも考えられる。
国家コーポラティズム

国家コーポラティズムの典型例としては、イタリアのファシズムにおける「コーポラティスト国家」が挙げられる。ポルトガルエスタド・ノヴォなど、戦後イベリア半島ラテンアメリカの権威主義諸国も国家コーポラティズムの性格を有していた。

ただし、フィリップ・シュミッターは、思想としてのコーポラティズムも、政治システムとしての国家コーポラティズムも、検討が十分ではないと指摘している[18]
ネオ・コーポラティズム
背景

戦後のヨーロッパの小国(北欧諸国やオーストリアなど)では、集権的な利益集団システムや、政府・労働組合・経営者団体の協調に基づく政策過程が観察された。シュミッターやゲルハルト・レームブルッフは、国家コーポラティズムとの外見的類似性から、このような政治システムをネオ・コーポラティズムと呼称した。

特に1970年代先進諸国スタグフレーションに喘ぐ中で、ネオ・コーポラティズム体制を構築していた開放経済の諸国は比較的良好な経済パフォーマンス(低失業率、低インフレ率)を維持していた。ネオ・コーポラティズムは、このことを説明する政治的要因としても着目された。
定義

ネオ・コーポラティズムは主に賃金政策やマクロ経済政策の分析に使用される概念である。これを例にとって定義すると以下のとおりである。ネオ・コーポラティズムと多元主義OECD各国の労働組合加入率(従業員に占める割合%)
利益集団システム

ネオ・コーポラティズムは、最も狭義には集権的な利益集団システムを指す。たとえば労働組合の場合、集権性の度合いは、

労働組合の組織率が高い。

国内の労働組合が単一の全国組織(頂上団体
)を頂点としたヒエラルキーとして組織されている。

各労働組合にとって上位組織への加入が強制的である。

組合費の配分について頂上団体への比率が相対的に多い。

下位組織のストライキなどに際して頂上団体が財政支援を行う。

頂上団体が多数の専属スタッフを抱えている。

頂上団体の決定から逸脱する下位組織に対して、頂上団体が有効な制裁措置を執りうる。

などの指標によって測られる。このように利益集団システムの集権性の度合いが強いほど、その国のコーポラティズム度は高く位置づけられる。
団体交渉

団体交渉が、工場レベル・企業レベル・産業レベル・国レベルなど、どのレベルで行われるかは国によって、また年代によって異なる。労使交渉が国レベルなどのハイレベルで行われ、かつ、労使の上位組織による交渉結果がそれぞれの下位組織を強く拘束する場合、コーポラティズム度は高く位置づけられる。「団体交渉#種別」も参照
政策過程

労使の利益集団システムが高度に集権化されている場合、政府は、それぞれ頂上団体にそれぞれのセクターの利害を包括的・独占的に代表させ、利害調整のパートナーとして政策決定過程に組み込むことがある(利益表出)。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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