『ノーカントリー』(2007年)では作品賞を含むアカデミー賞4部門を受賞。批評家たちから『ファーゴ』に匹敵する傑作だと賞賛され、全世界で1億6000万ドルを上回る興行収入を挙げた[5]。翌年に公開された『バーン・アフター・リーディング』(2008年)も全米興行収入初登場1位という大ヒットを記録。2年後には『トゥルー・グリット』(2010年)で全世界興行収入が『ノーカントリー』を上回る、2億5千万ドルを記録し、コーエン兄弟のキャリアにおいて最大のヒット作となる。
その後も『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(2013年)で、第65回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞。2015年には第68回カンヌ国際映画祭の審査員長に就任。同映画祭では史上初となる兄弟揃っての審査員長となった。 便宜上、『ディボース・ショウ』(2003年)までは監督・脚本にジョエル、脚本・製作にイーサンがそれぞれ別個にクレジットされてきたが、実際はどちらも兄弟の共同作業であり、『レディ・キラーズ』(2004年)からは監督・脚本・製作はすべて兄弟の連名となっている。また、コーエン兄弟はロデリック・ジェインズ(Roderick Jaynes)という変名で映画の編集作業も行っている[6]。 コメディ色の強いスリラー映画、もしくはスリラー色の強いコメディ映画、特にユダヤ的な笑いを用いたものを得意としている。作品のテーマとして犯罪、特に誘拐や恐喝を取り扱うことが多い。 基本的に兄弟が制作する映画は彼ら自身が書き上げた脚本に基づくものであるが、物語の大まかな枠組みとして既存の文学作品などからモチーフを借りてくることも多い。 特に兄弟のハードボイルド小説への傾倒は顕著である。『ミラーズ・クロッシング』はダシール・ハメットの『ガラスの鍵』や『血の収穫』を[7]、『ビッグ・リボウスキ』はレイモンド・チャンドラーの『大いなる眠り』を[8]、『バーバー』はジェームズ・M・ケインの『殺人保険 技術的な特徴としては、移動撮影や複雑なカット割りの多用が挙げられる[10]。 撮影監督として処女作の『ブラッド・シンプル』から3作目の『ミラーズ・クロッシング』までをバリー・ソネンフェルドが、4作目の『バートン・フィンク』以降の『バーン・アフター・リーディング』と『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』を除く『ヘイル・シーザー!』までの作品をロジャー・ディーキンスがそれぞれ担当している。 兄弟は彼らの制作映画にしばしば特定の俳優たちを起用することで知られる。スティーヴ・ブシェミ、フランシス・マクドーマンド、ジョン・ポリト、ジョン・タトゥーロ、ジョン・グッドマンらが「コーエン組」として認知されている。しかし近年では兄弟が名声を得たことによる作品のビッグ・バジェット化に伴い、ジョージ・クルーニー等のスター俳優の起用が増え、彼らの出演機会は以前と比べ相対的に減少しつつある。 映画中の音楽はカーター・バーウェルが一貫して作曲している。 兄弟はカンヌ国際映画祭の常連であり、『バートン・フィンク』(1991年)で同映画祭初の主要3部門(パルム・ドール、監督賞、男優賞)を制覇したのを皮切りに、『ファーゴ』(1996年)、『バーバー』(2001年)でも監督賞を、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(2013年)で審査員特別賞をそれぞれ受賞している。アカデミー賞では、『ファーゴ』(1996年)で脚本賞を受賞し、『ノーカントリー』(2007年)では作品賞や監督賞など、計4部門を受賞。名実ともに現代のアメリカ映画界を代表する巨匠として注目を集める存在である。 ジョエルは1984年に『ブラッド・シンプル』に主演したフランシス・マクドーマンドと、イーサンは1993年に『ミラーズ・クロッシング』の編集助手を担当したトリシア・クック ジョエルは『ファーゴ』でアカデミー賞脚本賞を、妻のマクドーマンドはアカデミー賞主演女優賞をそれぞれ受賞している。2011年に兄弟でダン・デイヴィッド賞受賞。
映画製作
特徴
脚本
撮影
配役
音楽
評価
私生活
作品
監督作品
ブラッド・シンプル Blood Simple(1984年)
赤ちゃん泥棒 Raising Arizona(1987年)
ミラーズ・クロッシング Miller's Crossing(1990年)
バートン・フィンク Barton Fink(1991年)
未来は今 The Hudsucker Proxy(1994年)
ファーゴ Fargo(1996年)
ビッグ・リボウスキ The Big Lebowski(1998年)
オー・ブラザー! O Brother, Where Art Thou?(2000年)
バーバー The Man Who Wasn't There(2001年)
ディボース・ショウ Intolerable Cruelty(2003年)
レディ・キラーズ The Ladykillers(2004年)
パリ、ジュテーム Paris, je t'aime[注 1](2006年)
それぞれのシネマ Chacun son cinema[注 2](2007年)
ノーカントリー No Country for Old Men(2007年)
バーン・アフター・リーディング Burn After Reading(2008年)
シリアスマン A Serious Man(2009年)
トゥルー・グリット True Grit(2010年)
インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌 Inside Llewyn Davis(2013年)
ヘイル、シーザー! Hail, Caesar!(2016年)[11]
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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