コンピュータとソフトウェアの進歩は、コンピュータ音楽の生成や演奏に劇的な影響を及ぼしている。今日では、コンピュータを利用したシンセサイザー、ミキサー、エフェクターなどは一般的なものとなり、音楽の制作にデジタル技術を使うことは普通のこととなっている[25]。 コンピュータ音楽の分野では、研究者によりコンピュータによる音響合成、作曲、演奏の研究が盛んに行われている。コンピュータ音楽の研究に関する組織として、国際コンピュータ音楽協会
研究
コンピュータによる作曲と演奏詳細は「アルゴリズム作曲法」を参照「生成音楽(英語版)」、「進化音楽(英語版)」、および「遺伝的アルゴリズム」も参照
ゴットフリート・ミヒャエル・ケーニヒ、ヤニス・クセナキスなど、楽譜だけでなく音響もコンピュータで生成する作曲家が現れるようになった。ケーニヒは、自身のセリエル音楽に基づくアルゴリズム作曲プログラムを制作した。ケーニヒのソフトウェアは、数学の方程式に基づいてコードを生成し、これを手書きで楽譜に変換して人間が演奏していた。1964年の『プロジェクト1』、1966年の『プロジェクト2』がその一例である。後に、ケーニヒはこの原理を音響生成に拡張し、コンピュータが直接音を出せるようにした。これらのプログラムは、ケーニヒがユトレヒトのソノロジー研究所(英語版)で1970年代に製作したものである[26]。
2000年代には、アンドラニク・タンジアン(英語版)がカノンやフーガの構造に基づく楽曲を生成するアルゴリズムを開発し、それによって作られた楽曲"Eine kleine Mathmusik I"、"Eine kleine Mathmusik IIをコンピュータにより演奏した[27][28][29]。 モーツァルトなどの過去の偉大な作曲家の作風をコンピュータにより模倣する試みも行われている。デイヴィッド・コープ
コンピュータにより作曲した楽曲の人による演奏
スペインのマラガ大学の研究プロジェクトであるMelomics(英語版)は、イアムス(英語版)(Iamus)と呼ばれるコンピュータ・クラスターを使って、複数の楽器を使用した複雑な楽曲の作曲を行うものである。2012年、『Hello World!』などのイアムスが作曲した曲のロンドン交響楽団による演奏を収めたアルバム"Iamus"がリリースされ、『ニュー・サイエンティスト』誌は「コンピュータが作曲してフルオーケストラが演奏した、世界初の大作」と評した[33]。この研究グループは、技術者がこの技術を活用するためのAPIを開発し、楽曲をWebサイトで公開している。
機械即興演奏「機械学習」、「機械リスニング(英語版)」、「音楽と人工知能(英語版)」、および「コンピュータによる創造性(英語版)」も参照
機械即興演奏(machine improvisation)とは、コンピュータのアルゴリズムにより、既存の音楽素材を用いて即興で演奏を行うことである。その場で録音した、または録音済みの既存の音楽素材を、パターンマッチングや機械学習などのアルゴリズムによって分析し、それによって得られたパターンを高度に組み合わせて、元の音楽素材のスタイルに沿った新しい楽曲を生成する。これは、既存の楽曲の分析を行わずに、アルゴリズムによって楽曲を生成する既存のコンピュータ音楽とは異なるものである[34]。 スタイルモデリングとは、与えられた音楽データから、そのスタイル的特徴を捉えた計算可能な表現(モデル)を構築することを意味する。統計的なアプローチを用いてパターン辞書や冗長性における冗長性を捉え、それを再結合して新たな音楽データを生成する。機械即興演奏は、ヒラーとアイザックソンによる1957年の『ILLIAC組曲』や、クセナキスのマルコフ連鎖や確率過程を用いた楽曲に始まる、統計モデルの音楽への適用の延長上にあるものである。現在では、可逆圧縮インクリメンタル・パーシング、接尾辞木、文字列検索などの手法も用いられる[35]。 異なる音楽スタイルの音楽データから生成したモデルを混合することにより、スタイルミキシング(音楽スタイルの合成)が可能になる。初めてスタイルミキシングを行ったのはシュロモ・ドゥブノフ 統計的スタイルモデリングの初の実装はOpen MusicのLZify法であり[40]、その次が、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)パリのフランスワ・パチェ
統計的スタイルモデリング
実装
ライブコーディング詳細は「ライブコーディング(英語版)」を参照
ライブコーディング(live coding)[44]とは、パフォーマンスの一環としてコンピュータ音楽のためのプログラムをリアルタイムに書くことである。インタラクティブ・プログラミング(interactive programming)、オンザフライ・プログラミング(on-the-fly programming)[45]、ジャストインタイム・プログラミング(just in time programming)とも呼ばれる。あらかじめプログラミングしておくデスクトップミュージックでは、ライブで演奏するのに比べてカリスマ性や華やかさに欠けると感じるミュージシャンが、ライブコーディングを選択するようになっている[46]。
脚注[脚注の使い方]
出典^ 『コンピュータ音楽』 - コトバンク
^ Curtis Roads,The Computer Music Tutorial, Boston: MIT Press, Introduction
^ Andrew J. Nelson, The Sound of Innovation: Stanford and the Computer Music Revolution, Boston: MIT Press, Introduction