コンピュータ音楽
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1967年5月、イタリア初のコンピュータ音楽の実験が、フィレンツェのS 2F Mスタジオにおいて[18]ゼネラル・エレクトリック情報システム・イタリアの協力により行われた[19]オリベッティ社製GE115を使用しピエトロ・グロッシ(英語版)が演奏した。この実験では、フェルッチョ・ズーリアンが書いた3つのプログラムが使用され[20]、グロッシがバッハパガニーニヴェーベルンの作品を演奏し、新しい音の構造を研究するために使用された[21]

1970年代後半には、これらのシステムが市販されるようになった。1978年には、マイクロプロセッサで動くシステムがアナログシンセサイザーを制御するローランド MC-8マイクロコンポーザが発売された[15]。1960年代から1970年代にかけてジョン・チャウニングが研究を行ったFM合成技術により、より効率的なデジタル音響合成が可能となった[22]。1983年には、世界初のフルデジタルシンセサイザー・ヤマハDX7が発売された[23]。DX7を始めとする、安価なデジタルチップやマイクロコンピュータの登場により、コンピュータ音楽のリアルタイム生成が可能となった[23]。1980年代、NECのPC-8800シリーズなど日本製パーソナルコンピュータにFM音源チップが搭載され、MMLなどの音楽記述言語(英語版)やMIDIインタフェースが搭載され、ゲーム音楽チップチューン)の制作に多く使われるようになった[15]。1990年代初頭には、パーソナルコンピュータの性能が向上し、コンピュータ音楽のリアルタイム生成が可能になった[24]

コンピュータとソフトウェアの進歩は、コンピュータ音楽の生成や演奏に劇的な影響を及ぼしている。今日では、コンピュータを利用したシンセサイザー、ミキサー、エフェクターなどは一般的なものとなり、音楽の制作にデジタル技術を使うことは普通のこととなっている[25]
研究

コンピュータ音楽の分野では、研究者によりコンピュータによる音響合成、作曲、演奏の研究が盛んに行われている。コンピュータ音楽の研究に関する組織として、国際コンピュータ音楽協会(英語版)(ICMA)、C4DM (Centre for Digital Music)、IRCAMなどがある。
コンピュータによる作曲と演奏詳細は「アルゴリズム作曲法」を参照「生成音楽(英語版)」、「進化音楽(英語版)」、および「遺伝的アルゴリズム」も参照

ゴットフリート・ミヒャエル・ケーニヒヤニス・クセナキスなど、楽譜だけでなく音響もコンピュータで生成する作曲家が現れるようになった。ケーニヒは、自身のセリエル音楽に基づくアルゴリズム作曲プログラムを制作した。ケーニヒのソフトウェアは、数学の方程式に基づいてコードを生成し、これを手書きで楽譜に変換して人間が演奏していた。1964年の『プロジェクト1』、1966年の『プロジェクト2』がその一例である。後に、ケーニヒはこの原理を音響生成に拡張し、コンピュータが直接音を出せるようにした。これらのプログラムは、ケーニヒがユトレヒトのソノロジー研究所(英語版)で1970年代に製作したものである[26]

2000年代には、アンドラニク・タンジアン(英語版)がカノンフーガの構造に基づく楽曲を生成するアルゴリズムを開発し、それによって作られた楽曲"Eine kleine Mathmusik I"、"Eine kleine Mathmusik IIをコンピュータにより演奏した[27][28][29]
コンピュータにより作曲した楽曲の人による演奏

モーツァルトなどの過去の偉大な作曲家の作風をコンピュータにより模倣する試みも行われている。デイヴィッド・コープ(英語版)は、自身が製作したプログラムにより他の作曲家の作品を分析し、その作風を模倣した新しい楽曲を製作している。コープが製作した中で最も有名なプログラムはエミリー・ハウエル(英語版)である[30][31][32]

スペインのマラガ大学の研究プロジェクトであるMelomics(英語版)は、イアムス(英語版)(Iamus)と呼ばれるコンピュータ・クラスターを使って、複数の楽器を使用した複雑な楽曲の作曲を行うものである。2012年、『Hello World!』などのイアムスが作曲した曲のロンドン交響楽団による演奏を収めたアルバム"Iamus"がリリースされ、『ニュー・サイエンティスト』誌は「コンピュータが作曲してフルオーケストラが演奏した、世界初の大作」と評した[33]。この研究グループは、技術者がこの技術を活用するためのAPIを開発し、楽曲をWebサイトで公開している。
機械即興演奏「機械学習」、「機械リスニング(英語版)」、「音楽と人工知能(英語版)」、および「コンピュータによる創造性(英語版)」も参照

機械即興演奏(machine improvisation)とは、コンピュータのアルゴリズムにより、既存の音楽素材を用いて即興で演奏を行うことである。その場で録音した、または録音済みの既存の音楽素材を、パターンマッチング機械学習などのアルゴリズムによって分析し、それによって得られたパターンを高度に組み合わせて、元の音楽素材のスタイルに沿った新しい楽曲を生成する。これは、既存の楽曲の分析を行わずに、アルゴリズムによって楽曲を生成する既存のコンピュータ音楽とは異なるものである[34]
統計的スタイルモデリング

スタイルモデリングとは、与えられた音楽データから、そのスタイル的特徴を捉えた計算可能な表現(モデル)を構築することを意味する。統計的なアプローチを用いてパターン辞書や冗長性における冗長性を捉え、それを再結合して新たな音楽データを生成する。機械即興演奏は、ヒラーとアイザックソンによる1957年の『ILLIAC組曲』や、クセナキスのマルコフ連鎖確率過程を用いた楽曲に始まる、統計モデルの音楽への適用の延長上にあるものである。現在では、可逆圧縮インクリメンタル・パーシング、接尾辞木文字列検索などの手法も用いられる[35]

異なる音楽スタイルの音楽データから生成したモデルを混合することにより、スタイルミキシング(音楽スタイルの合成)が可能になる。初めてスタイルミキシングを行ったのはシュロモ・ドゥブノフ(英語版)の『NTrope組曲』(NTrope Suite)で、ジャンセン=シャノン・ジョイントソースモデルを使用した[36]。その後、ドゥブノフとジェラール・アサヤグは、線形の時空間で漸進的に構築される有限状態オートマトンであるファクターオラクル(英語版)[37]を使用した楽曲を製作し[38]、これはスタイルの再投入を行うシステムの基礎となった[39]
実装

統計的スタイルモデリングの初の実装はOpen MusicのLZify法であり[40]、その次が、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)パリのフランスワ・パチェ(英語版)が2002年に開発した[41][42]、LZインクリメンタル・パーシングをマルコフモデル(英語版)で解釈してリアルタイム・スタイルモデリングに利用する対話型の機械即興演奏の実装だった[43]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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