コンピュータ囲碁
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最初に19路盤で動作するプログラムを書いたのは1969年のアメリカのZobristで、この時の棋力は38級程度(囲碁のルールを覚えた程度の棋力)であった。

70年代に入って、置かれた石の周辺に発生する影響力を関数として扱う手法や、石の生死を判定するアルゴリズムなどが生まれた。1979年には、攻撃と防御の基本的戦略と、完全につながった石を「連」、つながってはいないがひと塊の石として認識できる石の集まりを「群」として扱う階層パターンを持った囲碁プログラムInterim.2が15級程度の棋力を発揮した[3]
1980年代

1984年に、初めてのコンピュータ囲碁大会USENIXが開催される。翌1985年、台湾の応昌期が設立したING杯(1985-2000)は2000年までに互先で人間の名人に勝てば4000万台湾ドル(約1億4千万円)の賞金を出したことで有名になった。

80年代のソフトでは、アメリカの「Nemesis」「Go Intellect」、台湾の「Dragon」、オランダの「Goliath」などが有力で、日本の第五世代コンピュータでも人工知能応用ソフトとして「碁世代」が開発された。また、この頃から、商用囲碁ソフトが販売されるようになった。
1990年代

90年代になると中国の「Handtalk」、「Silver Igo」などがアマチュアの級位者上級並みの棋力に到達した。また、日本での大会としては、FOST杯(1995-1999)、世界コンピュータ囲碁大会 岐阜チャレンジ(2003-2006)などが開催された。

初期のコンピュータ囲碁のアルゴリズムは、人間の思考に近い手法を採用していた。まず、石の繋がり・地の大きさ・石の強さ(目の有無)などからある局面の状況を評価する静的評価関数をつくる。次に、評価関数の結果を元に石の活きを目指す・相手の石を殺す・勢力を拡大するなどさまざまな目的の候補着手を導く。もしくは、定石・布石・手筋などのデータベースを参照する知識ベースの手法により候補となる着手を作成する。各着手についてその後、数手進めた局面を評価関数によって評価する(ゲーム木探索)。到達局面での評価を元にミニマックス法により互いの対局者が最善手を選択した場合の現局面における各候補着手の優劣の評価を行い着手を決定する。その際、アルファベータ法を採用し、有望ではない着手の先読みを途中で打ち切り、有望な手を深く読む工夫を施した。

1993年、ランダムな候補手で終局まで対局をシミュレーションし(プレイアウトという)、その中で最も勝率の高い着手を選ぶというモンテカルロ法を応用したアルゴリズムを持つ囲碁プログラムが登場した。当初は、コンピュータの性能が低かったことと、単純にランダムな着手によってプレイアウトを行ったため従来の手法を持ったプログラムより弱かった(原始モンテカルロ碁)。
2000年代

2006年、ゲーム木探索とモンテカルロ法を融合し、勝率の高い着手により多くのプレイアウトを割り当てプレイアウト回数が基準値を超えたら一手進んだ局面でプレイアウトを行う「モンテカルロ木探索」を実装した囲碁プログラム「Crazy Stone」が登場した。2006年にCrazy Stoneが第11回コンピュータオリンピアードの9路碁部門で優勝すると、急速にその手法が広がり他の多くのソフトウェアも同様のアルゴリズムを採用するようになり、コンピュータ囲碁は格段の棋力向上を果たすようになった[4]。2007年に開催された第1回UEC杯コンピュータ囲碁大会(以下UEC杯)でもCrazy Stoneは優勝した(Crazy Stoneは2011年から『最強の囲碁』として市販化)。

2008年3月、パリ囲碁トーナメントのエキシビジョンでモンテカルロ木探索を採用した「MoGo」がタラヌ・カタリン五段(以下、段位・称号は対局当時のもの)と対戦した[4]。19路盤では9子局の置き碁(ハンディキャップ付きの対局)で敗れたが、ハンデのない9路盤での対局では3局対戦し1局に勝利した[4]。通常用いられる19路盤ではなく9路盤のエキシビジョンであるとはいえ、コンピュータがプロ棋士に公の場で互先で1勝を挙げたのは史上初のことだった[4]。8月に行われたアメリカ碁コングレスでは、「MoGo」が9子局の置き碁ながら韓国のプロ棋士に勝利した[5]。当時はプロ棋士を相手に9子局で勝つというのは非常に高い壁だと考えられており、このニュースも驚きをもって迎えられた[5]。9月に行われた第7回情報科学技術フォーラムでは、MoGoの9子局での勝利を受け、Crazy Stoneと青葉かおり四段のエキシビジョンマッチが8子局で行われた。Crazy Stoneは序盤から中盤にかけて損を重ねながらも中押しで勝利した[5]。このとき、即興で王銘?九段との9路盤での対局もCrazy Stoneが定先コミのない碁)のハンデをもらう形で行われ、Crazy Stoneが1目勝ちした[5][6][注釈 1]。青葉はCrazy Stoneは少なくともアマチュア二段程度の棋力はあると評価し[5]、王は「十九路盤の棋力を判定するならアマ三段ぐらいだが、まだ底知れない力を秘めている」「プロレベルまで、十年以内で来るのではないか」と評価した[6]。12月の第2回UEC杯では優勝したCrazy Stoneと青葉の対局が7子局で行われ、ここでもCrazy Stoneが勝利した[7]

2009年8月には、同年5月に開催された「第14回コンピュータオリンピアード」の優勝プログラム「Zen」(『天頂の囲碁』として市販)が、9路盤で黒番コミ2目半というハンデをもらって王と対局し、勝利した[8]。Zenも実力をアマチュア三・四段と評価されており、王は「従来の囲碁ソフトは読み切れる局面で力を発揮したが、このソフトは読み切れないような難しい局面において力を発揮する」と評価した。11月に行われた第3回UEC杯では、優勝したZenと3位の「KCC囲碁」が6子局でプロ棋士に挑んだ。


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