コンピュータゲームにおける人工知能
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ゲームの難易度をプレーヤーの技量に基づいてリアルタイムに調整する動的ゲーム難易度調整(英語版)もゲームAIを利用することがある。

最近では創発的AIの概念もゲームに利用されており、「ブラック&ホワイト」、「nintendogs」、たまごっちなどの玩具がある。これらのゲーム内の「ペット」は、プレーヤーのアクションから「学習」し、行動を更新していく。実際には選択肢はある範囲内に限定されているのだが、プレーヤーに対して知的存在の幻影をある程度与えることができる。

チェス囲碁将棋の分野においてコンピュータが人間以上の能力を獲得してからは、プロ棋士が棋譜の解析や練習対局の相手として利用するようになった[11]。また人間の感覚では評価が高くなかったがコンピュータが高い評価を与えた手(ダイレクト三々など)をプロが使うようになったり、既存の定跡や古い棋譜を解析し淘汰や再評価が行われるなど様々な面で変化が起きた[11]
戦闘AI

多くのゲームは何らかの戦闘を含んでいる。ゲームAIは、戦闘における敵の振る舞いをより人間的に(見えるように)するのに役立つ。

近年のゲームAIで最も効果的な機能として「狩り」の能力がある。本来AIは白か黒かというような明確な反応を示す。プレーヤーがいる場所の設定に従い、AIは攻撃または防御のどちらかの行動をとる。近年これに「ハンティング」という考え方が導入された。「ハンティング」状態では、AIはキャラクターの立てる音や足跡といった具体的なマーカーを探す[12]。それによってプレイの形態がより複雑になった。AIが「狩り」の能力を備えたことで、敵への接近や回避の方法に頭を使う必要が出てきた。この機能は特にステルスゲームでよく見られる。

もう1つのゲームAIにおける近年の発展として、「生存本能」の開発がある。ゲームAIが操るキャラクターは環境内の各種オブジェクトを認識し、それが自身の生存に有益か有害かを判断できる。プレーヤーと同様、AIは銃撃戦で武器のリロードや手榴弾を投げる際などに無防備にならないよう遮蔽物を探すことができる。反応のしかたを設定するマーカーが存在する場合もある。例えば、AIが操るキャラクターの健康状態をチェックするコマンドが存在する場合、パーセンテージで表された健康状態によって反応を設定する。健康があるしきい値より低いとき、AIはキャラクターがプレーヤーから逃げるよう設定したりする。また、弾切れになったときは遮蔽物に隠れてリロードなどをする。このような振る舞いによってAIの操るキャラクターがより人間味を増す。この分野にはまだ改良の余地がある。AIは様々な状況に対応しなければならず、プレーヤーを驚かすほどの能力を示すのはまだ先のことである[12]

戦闘AIのもう1つの副作用は、AIが操るキャラクター同士が遭遇した際に見られる。id Software のゲーム DOOM でそのような状況が一般化し 'monster infighting' と呼ばれた。DOOM の攻略本では、'monster infighting' を利用して敵同士を戦わせ、生き残る方法なども紹介されていた。
チート

ビデオゲームにおける人工知能の文脈では、チートとは、ある状況でプレーヤーが得られない情報をNPCについてはアクセス可能としていることを指す[13]。例えば、NPCがプレーヤーが近くにいるかを知りたい場合、人間と同様の知覚(視覚、聴覚など)を操って知る方式もあるが、単にゲームエンジンにプレーヤーの位置を問い合わせることで知る方式になっている場合もある。AIにおけるチートは、その人工的に達成された知能に限界があることを示している。一般に戦略的創造性が重要なゲームでは、このような有利さをAIに与えておかないと最小限の試行錯誤で人間が容易に勝ってしまう。また、性能上の問題からチートを実装していることが多く、プレーヤーから見てその効果があからさまでない限りは許容されている。AIだけに与えられる特権のみをチートと呼び、コンピュータが本質的に持つ高速性と正確性はチートとは呼ばないが、一方でプレーヤーから見てコンピュータ固有の利点がNPCの人間離れした動きを生じているなら、それらも含めて「チート」と呼ぶこともある[13]

チェス囲碁将棋の分野においては、人間同士の対局でコンピュータの手を参照(カンニング)する「ソフト指し」が問題となっている[14][15]
脚注^ Grant, Eugene F.; Lardner, Rex (1952年8月2日). ⇒“The Talk of the Town - It”. The New Yroker. ⇒http://www.newyorker.com/archive/1952/08/02/1952_08_02_018_TNY_CARDS_000236053 
^ See ⇒"A Brief History of Computing" at AlanTuring.net.
^ Schaeffer, Jonathan. One Jump Ahead:: Challenging Human Supremacy in Checkers, 1997,2009, Springer, ISBN 978-0-387-76575-4. Chapter 6.
^ McCorduck, Pamela (2004), ⇒Machines Who Think (2nd ed.), Natick, MA: A. K. Peters, Ltd., pp. 480-483, .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 1-56881-205-1, ⇒http://www.pamelamc.com/html/machines_who_think.html 
^ スタートレック (マイコンゲーム) とは別系統のゲーム
^ First Queen(英語) - MobyGames
^ “ ⇒オフィシャルサイト”. 呉ソフトウェア工房. 2011年5月19日閲覧。
^ Schwab 2004, pp. 97?112
^ Schwab 2004, p. 107
^Emergent Intelligence in Games17 February 2011.
^ a b “「囲碁AI」の最強時代到来、プロ棋士の存在価値は薄れてしまうのか? 井山裕太名人、伊田篤史八段、本木克弥八段らに聞く囲碁AIの「利点と欠点」 。JBpress (ジェイビープレス)”. JBpress(日本ビジネスプレス). 2023年12月10日閲覧。
^ a b “Artificial Intelligence in Game Design”. ai-depot.net. 2024年5月23日閲覧。
^ a b Scott, Bob (2002). “The Illusion of Intelligence”. In Rabin, Steve. AI Game Programming Wisdom. Charles River Media. pp. 16?20 


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