コロナ
[Wikipedia|▼Menu]
太陽の自転は、赤道域の自転が極域よりも速い差動自転をしていることにより太陽磁場が絶えず巻き上げられているため、黒点の活動は磁場がよりねじられやすい活動極大期に最も顕著となる。太陽黒点と関連しているのは、太陽内部から上昇する磁束のループであるコロナループである。磁束が高温の光球を押しのけ、光球の下部にある比較的温度の低いプラズマを露出させることにより、暗い太陽黒点が作り出される。

1973年に宇宙ステーションスカイラブ、その後「ようこう」を始めとする様々な宇宙機によって、スペクトルのX線領域の高解像度撮影が行われて以来、コロナの構造が非常に多様で複雑なものであることがわかってきた[10][11]。天文学者は通常、以下のようにいくつかの領域に分類している。
活動領域

活動領域は、光球の磁気の極性が反対の点を結ぶループ構造、いわゆるコロナループの集合体である。活動領域は一般的に、太陽の赤道に平行な2つの領域に分布している。電子温度は100万 - 500万 Kで、電子密度は109 - 1010個/cm3である[12]

活動領域は、太陽表面の異なる高さで発生する、磁場に直結した全ての現象に関係している。太陽黒点や白斑は光球で、スピキュール、Hαフィラメント、プラージュは彩層で、プロミネンスは彩層と遷移層で、太陽フレアコロナ質量放出 (corona mass ejection, CME) は彩層とコロナで発生する。フレアが非常に激しい場合には、光球を擾乱してモートン波を発生させることもある。一方で、静穏なプロミネンスは、大きく冷たく密度の高い構造物で、太陽面上に暗く蛇のようなHαリボンとして観測される。その温度はおよそ5,000 - 8,000 Kであることから、通常は彩層の特徴として考えられている。
コロナループ
TRACEにより波長171Aで撮影されたコロナループコロナループは、磁気太陽コロナの基本構造である。これらのループは、コロナホール領域や太陽風にみられる開いた磁束の従兄弟のような存在である。太陽本体から磁束のループが湧き上がり、高温の太陽プラズマで満たされる[13]。コロナループは、しばしば太陽フレアやCMEの前兆となる。コロナループの足元の光球上には、一方にN極、もう一方にS極があり、コロナループはそれらを繋いだ磁気ループである[14]。これらの構造物に供給される太陽プラズマは、光球から遷移層を経てコロナに至るまで、6,000 K以下から100万 K以上まで急速に加熱される。多くの場合、太陽プラズマは、フットポイント (foot point) と呼ばれる点からこれらのループを満たし、別のフットポイントから排出される。ひのでのX線望遠鏡 (XRT) やTRACESDO極端紫外線望遠鏡によるコロナの観測により、ループの下部から上部に向かって輝度が高くなる現象が捉えられるようになり、ひのでの極端紫外線分光観測によって、これがコロナループ足元からの上昇流であることがわかった。プラズマがフットポイントからループトップに向かって上昇する過程を「彩層蒸発 (chromospheric evaporation)」と呼んでいる[15]。また、ループの両方のフットポイントから対称的な流れが発生し、ループ構造に質量が蓄積されることもある。この領域では、プラズマは熱的不安定性のため急速に冷えることがあるため、周囲のコロナに比べて低温のプラズマ塊が太陽面ではダークフィラメントとして、あるいは太陽周縁部ではプロミネンスとしてはっきりと見えることがある。コロナループの寿命は、数秒、数分、数時間、数日のオーダーである。ループのエネルギー源と吸収源のバランスが取れている場合、コロナループは長時間続くことがあり、定常状態または静止状態のコロナループとして知られている。コロナループは、現在のコロナ加熱問題を理解する上で大変重要である。コロナループは、非常に放射性の高いプラズマの発生源であるため、日本のようこうやひので、アメリカのTRACEのような観測装置で容易に観測することができる。しかし、コロナ加熱問題を説明するためには遠くから構造を観測するだけでは不十分であり、コロナのある現場での観測が必要となる。NASAパーカー・ソーラー・プローブは、太陽に非常に近いところまで接近し、より直接的な観測を行う。反対の磁気極性の領域と繋がるコロナアーチ(A)とコロナホールの単極磁場(B)
大規模構造
大規模構造とは、太陽面の4分の1以上を覆うことができる非常に長いアーチのことで、活動領域のコロナループよりも密度の低いプラズマを含んでいる。これは、1968年6月8日にロケットでのフレア観測の際に初めて発見された。コロナの大規模構造は11年の太陽周期の間に変化し、太陽の磁場がほぼ双極子(+四極子)に近い状態となる極小期には特に単純なものとなる。
活動領域の接続
活動領域の相互接続は、異なる活動領域の極性が逆の領域を接続するアーチである。これらの構造の大きな変化は、フレア発生の後によく見られる。他の特徴としては、ストリーマーと呼ばれる、黒点や活動領域の上に長い尖ったピークを持つ、大きな兜のようなコロナの構造がある。ストリーマーは低速太陽風の発生源であると考えられている[16]
X線輝点
X線輝点 (XBP) は、太陽面に見られる小さな活動領域で、1969年4月8日に観測ロケット搭載のX線望遠鏡で初めて検出された[17]。X線輝点下部の光球には双極磁場構造が見られる[18]。これは、異なる磁場構造が互いに接近して生じたもので、輝点の発生後に磁場は消滅する[18]。このことから、X線輝点は、異なる磁場のN極とS極がコロナの中での磁気リコネクション過程を経た際に輝いているものであると考えられている[18]。X線輝点の数は太陽周期活動に関係なくほぼ一定である[19]。ひので搭載のX線望遠鏡 (XRT) による観測結果から推測される平均温度は110万 Kから340万 Kで、多くの場合温度の変化はX線放射の変動と相関が見られる[20]
コロナホール詳細は「コロナホール」を参照

コロナホールは、あまりX線を放出しないため、X線領域で暗く見える領域のことである[21][22]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:77 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef