コロナショック
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野村総合研究所木内登英は、緊急事態宣言の影響で、5月中に個人消費が約11.2兆円減ったと指摘。野村證券の美和卓は、7-9月期以降の景気回復は緩やかで、「L字形になる公算が大きい」と指摘する。業績不振企業が設備投資を縮小し、賃金引き下げで個人消費の伸び悩みが懸念される[14]

経済指標・統計日本の失業率(男女別、年齢別)。15-24歳(細線)が若年失業者にあたる[15]

月例経済報告 - 政府は2020年3月26日に発表した3月の月例経済報告で、景気は「新型コロナウイルス感染症の影響により、足元で大幅に下押しされており、厳しい状況にある」との判断を示した。2013年7月から使い続けた「緩やかな回復基調にある」という文言を6年9か月ぶりに削除し、景気判断を大幅に下方修正した[16]。「厳しい」という表現を使ったのは、日本経済が東日本大震災の影響から脱却し切れていない2012年7月以来[17]。4月23日には翌4月の報告を発表し、判断を2か月連続で下方修正して「新型コロナウイルス感染症の影響により、急速に悪化しており、極めて厳しい状況にある」と表現した。「悪化」という表現は、2009年5月以来である[18]

景気ウォッチャー調査 - 2020年3月の景気ウォッチャー調査(25日?31日に実施)では、現状判断の指数が14.2まで急落し、リーマン・ショック時よりも低い値になった。2002年1月以降で最悪の数値となった。内閣府は基調判断を「極めて厳しい状況にある」とした[19]。4月の同調査(25日 - 30日に実施)では、現状判断の指数が7.9に下がり、3月に続いて過去最低を更新。内閣府は基調判断を更に引き下げて「極めて厳しい状況にある中で、さらに悪化している」とした[20]。その後2022年1月の調査(月25日?31日に実施)では、現状判断の指数が37.9となり、前の月を19.6ポイント下回って5か月ぶりに悪化に転じた。下落幅は過去2番目の大きさであり、内閣府の基調判断も下方修正された[21]

GDP - 2020年の日本のGDP成長率は▲4.62%を記録した[1]。四半期別では、2020年Q3が▲28.1%と最大であった[1]

完全失業率 - 2018年に2.4%台前半であった失業率は、2020年Q4には3.00%となったが、これを境に下落に転じている[22]。なおOECD平均では同時期に+3.0%の上昇である。

その他の経済指標も軒並み記録的な落ち込みになった。2020年4月の新規求人数は前月比-22.9%で過去最大、4月の百貨店の売上高は前年同月比-72.8%で過去最大、5月の輸出額は前年同期比-28.3%で2009年9月以降最大である[23]

倒産・経営破綻

帝国データバンクの調査によれば、新型コロナウイルスの影響を受けた日本企業の倒産は2020年3月11日時点で8件[24]、3月24日時点で13件[25]、4月6日の時点では40件[26] 、11月10日時点で693件[27]。東京商工リサーチによると4月10日時点でコロナの影響で破綻した中小企業が51社になり、4月は26社と急増していて北海道が最多と発表した[28]

4月27日、東京商工リサーチはコロナ関連の中小企業の経営破綻が100社に達したと発表した。2月は2社、3月は23社だった[29]。無担保・無利子の融資制度もあるが経営者も高齢化しており倒産より廃業が増えるおそれもある。コロナ前から高齢化や後継者不在を理由に廃業の機会を窺っていた経営者が、コロナをきっかけに廃業を決断したケースも目立った。

5月5日東京商工リサーチによると、影響による倒産数が3月末の25社から114社に急増した。1千万円未満の倒産も4月だけで50件あった[30]

5月15日、レナウン (企業)東京地方裁判所民事再生法 の適用を申し立て、民事再生手続きを行ったが再建を断念し破産手続きに移行した[31]負債総額は138億円[32]

5月の倒産件数(負債額1千万円以上)は300件強にとどまり、1964年以降56年ぶりの低水準になる事がわかった。裁判所や弁護士の業務が縮小したせいで、倒産に伴う法的な手続きが進んでいないのが原因である[33]

6月に単月最多の103件の経営破綻が発生し、集計対象外の負債1,000万円未満を含めた新型コロナウイルス関連破綻は9月15日時点で累計500件に達している。業種別では飲食業・アパレル関連・宿泊業が上位を占め、この3業種が突出している[34]

12月、コロナにより経済的苦境に立たされた個人の債務者(個人事業主でも可)を法的整理よりも有利な条件で救済するため、コロナ版ローン減免制度の運用が開始された[35]。同制度では、無料で弁護士、税理士、公認会計士及び不動産鑑定士の支援を受けながら金融債務の圧縮を図ることができる。自宅不動産を温存する道も残されているほか、信用情報機関への登録も避けることができる。2021年3月6日現在までに94件の申立てが行われている[36]

労働

生活困窮に関する電話相談を全国で弁護士などが行ったところ、2020年4月23日時点で収入が堪えて家賃が払えないなど約5千件が寄せられた。電話相談を行った弁護士グループは、保障なき休業要請では廃業や失業に追い込まれる人が相次ぐという見解を示し、厚生労働省に現金の継続給付などを求める要望書を提出した
[37]

4月25日、厚生労働省は雇用調整助成金の助成率を要請に応じる事を条件に10割に引き上げると発表[38]

5月1日、厚生労働省は、男女雇用機会均等法に基づく指針に、新型コロナウイルスへの感染にストレスを感じた場合、休業を義務づける規定を追加する。企業に対し、医師の指導に従って在宅勤務や休業などを認めるよう義務づける方針。妊婦への企業の対応をまとめた指針の一部改正を労働政策審議会に諮問し実施する[39]

2019新型コロナウイルスの感染流行で、正社員の在宅勤務が推奨され、民間の調査機関「パーソル総合研究所」が2020年4月、全国25,000人を対象に実施した調査では、正社員のテレワーク実施率が27.9%だったのに、非正規は17.0%にとどまった。2020年4月に施行された改正労働者派遣法では、社員と派遣社員との待遇面での不合理な格差を禁止しているのに、派遣社員だけ在宅勤務を認めないのは法に反する。正社員には1週間おきの出勤が認められているのに、派遣社員は毎日出勤が命じられている。正社員に支給された在宅用のパソコンが派遣社員には支給されない。派遣先から派遣社員にはテレワークの仕組みがないので、有給か欠勤にしてほしい。以上のように派遣先で事前に仕組みが整っておらず、すぐに対応できない面がある。都道府県の労働局や労働組合など官民とも相談窓口はあるが、派遣社員は職場で居づらくなるので声が上げにくい[40]

大手就職情報会社リクルートキャリアリクナビ)、マイナビディスコは、予定されていた就活イベントの中止を相次いで発表した[41][42]

厚生労働省は2021年4月8日、新型コロナウイルスの影響で解雇雇い止めされた人が、2020年2月の集計開始から約1年2カ月で10万人を超えたと発表した。なお解雇や雇い止めを把握できるのは一部にとどまり、実際の数字はさらに多いと推測される[43]

金融

緊急事態宣言発令の翌日、
安倍晋三は「金融機関の機能維持は極めて重要」とし、銀行業界のトップに業務継続を直接要請した[44]

4月13日、メガバンク3行で新型コロナウイルスの感染確認が相次いで発表された。金融機関は、緊急事態宣言の対象地域でも「金融インフラ維持」のため、店舗を開けて預貯金・融資・為替などの業務を継続するよう求められているが、濃厚接触者の通常通りの勤務続行は困難で、人繰りも含めて厳しい対応を迫られている[44]
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