コミックス倫理規定委員会
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精神科医フレデリック・ワーサムは不適当な間に合わせの手段であるとして、コミックス倫理規定を認めなかった[3]
ノンコード・コミックス

コミックス倫理規定に(準)抵触した最初のコミックが、早くも1956年に発行された。この年、ウィリアム・ゲインズは『ワイアード・ファンタジー』誌18号(1953年)に掲載された作品『審判の日』 Judgement Day を、『インクレディブル・サイエンス・フィクション』誌33号(1956年1-2月)に再掲載した。[4]『審判の日』は倫理規定により不適格とされた作品の差し替え掲載であったが、『審判の日』自体もまた、「黒人を主人公としている」点により「不適格」とされた。[4]

ジョー・オーランド(英語版)の作画によるゲインズの物語は「人種的偏見の弊害に対する辛辣な寓話」であり、「主人公が黒人でなければ、その内容は必然的に無意味なものとなっていた」。[4]ゲインズが委員会に対し、「委員会がこの号に承認印を与えないのであれば、世界がその理由を知る事となるだろう」と通告したことにより、委員会は最初の決定を覆し、『審判の日』を認可することとなった。[4]しかしながら、倫理規定委員会により彼のコミックに与えられた厳しい規制に直面し、ニュー・ディレクションシリーズのタイトルを模索していたゲインズは、やがて間もなく「パロディ雑誌『MAD』に専念するために、コミック・ブックの出版を断念した。」[4]
アンダーグラウンド・コミックス

1960年代後半にアンダーグラウンド・コミックスの時代が到来し、漫画家らが倫理規定では明白に禁止された主題を取り扱ったコミックを制作するようになった。しかしながら、これらのコミックはヘッド・ショップのような従来とは異なる販路で主に流通することによって、コミックス倫理規定の権威を回避し、委員会の認可を受けることなくある程度の成功を収めていた。
倫理規定の改正

1971年、マーベル・コミックの編集主幹スタン・リーは、合衆国保健教育福祉省から、薬物濫用に関する啓蒙コミックを発刊出来ないかとの打診を受けた。[4]リーはこの依頼を受けて、薬物使用を危険で魅力の無い行為として描いた3話分のスパイダーマンの原作を執筆した。アーチー・コミックの社長ジョン・L・ゴールドウォーター(英語版)の決定により、コミック倫理規定委員会は物語の文脈とは無関係に、麻薬中毒者の登場を理由にしてこのストーリーの承認を拒否した(当時委員会理事のレオナルド・ダーヴィンが「病気療養中」であり、ゴールドウォーターの決定の履行を許すこととなった)。[4]合衆国政府自らがその要請で自分に信頼を寄せたという確信と、マーベルの社長マーティン・グッドマン(英語版)の許可により、リーはこのストーリーをコミックス倫理規定委員会の承認無しで、『アメイジング・スパイダーマン』誌の96号から98号(1971年5月-7月)に掲載した。この物語は好評を博し、承認を拒否したコミックス倫理規定委員会の議論は非生産的ではないかとの意見が呼び起こされた。「あれは私たちが抱えた唯一の大きな問題だった」と、リーは1998年のインタビューで当時の倫理規定を振り返っている。

「私は委員会を理解していた。委員たちは物事を字義通りかつ形式的に取り扱う、法律家のような人々だった。倫理規定には薬物を扱ってはならないと書かれており、彼らのルールに従えば彼らは正当だった。だから、私はその時は委員会に腹を立てさえしなかった。私は「どうにでもなれ!」と言って、その三冊から承認シールを引っぺがしただけだった。そして、私たちは再び倫理規定に舞い戻った。私はコミックの原作を書いている時、倫理規定を気にした事は一度もなかった。私の心にとって暴力的や性的すぎる事はどんな事であれ、基本的にやりたいと思った事は一切なかったからだ。私は若年層がこれらの本を読んでいる事を自覚していたし、仮に倫理規定が存在しなかったとしても、自分の物語の書き方をいささかも変えるつもりはなかった。[5]

1971年の間に倫理規定は幾度か改正された。マーベルの『スパイダーマン』の事件に先立つ1971年1月28日に、最初の「規制緩和」により「犯罪行為への同情」および(「それが例外的な物であり、犯人が罰せられるという前提で」)「公務員の汚職」の描写が解禁され[4]、同様に、ある程度の犯罪活動による法執行官の殺害と、「行動による誘惑ではない口説き」の描写が許可された[4]。更に、「フランケンシュタイン吸血鬼ドラキュラ、その他にエドガー・アラン・ポーサキアーサー・コナン・ドイル他の尊敬された作家による世界中の学校で読まれている高品質な文学作品のような、古典的な伝統の上で取り扱われる場合において、吸血鬼、食屍鬼、狼男」が新たに解禁された。要求された「文学的な」背景を欠いている事から、ゾンビーはタブーとされたままであった。しかしながら1970年代中頃に、マーベルは一見死人の様に見える、ハイチの様々なスーパーヴィランの洗脳された従者達を、「ザベンビース」と名付ける事によって、ゾンビーに対する規制を回避した。この慣習はマーベルのスーパーヒーロー物に広く用いられた。『アベンジャーズ』において、死の世界から甦った復活スーパーヒーローのワンダーマンは、「ザベンビー」とも呼ばれるようになった。

スタン・リーとマーベルは、DCコミックスの編集総責任者カーマイン・インファンティーノ(英語版)から「倫理規定を無視している」との非難を受けた。「DCは倫理規定が変更されない限り、いかなる薬物を扱った物語も発刊しない」と、インファンティーノは主張した。[4]しかしながら、合衆国保健教育福祉省がリーのストーリーを認可したことを取り巻く世論を受けて、「有害な習慣」として提示される場合に限り「麻薬や薬物依存」の描写を認可すべく、倫理規定は改正された。
「ウルフマン」と原作者名表記


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