コピアポ鉱山落盤事故
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それで本当に結束することができた」[25]
主要人物
ルイス・アルベルト・ウルスア
鉱山の現場監督だった。事態が容易ならざるものであること、救出が難しいことを理解し、「避難所」と彼らが呼んだ安全地帯に鉱夫たちを移動させた。わずかな物資を長期間もたせるために皆のまとめ役となった
[26][27]。事故の直後には3人を選抜して坑道を探索させ、状況を確認した。周辺の情報を細かくまとめた地図は救出を容易なものにした。救出作戦においては、地下の側から地上のエンジニアとテレビ会議で密に連絡をとっている[28][29]。また救出の際には「自らが最後まで残る」と希望する者が複数存在したが、その役職上の責任もあり、ルイスが最後まで残ることが認められ、33人目の救出者となった[30]ピーター・ドラッカーの愛読者でもある[31]
フロレンシオ・アバロス
地下ではサブリーダーになり、ウルスアを支えた。それまでの経験と丈夫な肉体、精神力を買われて、脱出用カプセルへ乗る最初の人間に選ばれた。もともとはシャイな人間であり、鉱夫の家族へ送るビデオを撮る際は撮影係にまわった。彼の弟も閉じ込められている[29]
ジョニ・バリオス
医師役をつとめて全員の健康状態を確認し、必要ならワクチンを与えたり、地上の医療班に仔細な報告をした。仲間たちはアメリカのテレビドラマにちなんで、彼を「ドクターハウス」と冗談めかして呼んでいた[32][27][29]
マリオ・ゴメス
一番の年長者であり、宗教面でのリーダーとなった。聖像を掲げて礼拝所を設け、地上の精神科医のカウンセリングを助けている[27][29]
ホセ・エンリケス
33年間採掘に携わりながら同時に牧師福音派)でもあった[33]。鉱夫たちの司祭となり日々の祈祷を行った[29]
マリオ・セプルベダ
精力的に鉱山内の状況をビデオに収めて地上に送り、世界中に彼らが首尾よくやっていることを伝えた。地元メディアは彼をテレビゲームにちなんで「スーペルマリオ」とあだ名していた[29][34][35]
作業員の健康

8月23日、鉱夫たちと音声での交信が可能となった。健康上の問題はほとんどないことが報告された。「地下700メートルに閉じ込められ、高温多湿な中で18日間も過ごしたわりには想定していたほど彼らは不調をきたしていない」と救助隊の医師はメディアに語っており、また5 %ブドウ糖液と過度の空腹による胃潰瘍を抑える薬が彼らのもとに届いていることも伝えた[36]。物資は伝書鳩の役割にちなんで palomas(鳩)と名づけられた1.5メートルの青いプラスチックのカプセルによって1時間かけて搬送された[19][37]。エンジニアたちはボーリング穴をゲルで覆い、シャフトを補強するとともにカプセルが通過しやすくした[38]。高濃度のブドウ糖液や補水液、薬品などのほか、鉱夫たちが空気不足を伝えると酸素も送られるようになった[37]。固形食も数日してから運ばれている[37][39]。ボーリング穴は他にも2つ開けられた。1つが酸素を送るためで、もう1つが鉱夫の家族とビデオチャット用の装置を通すために使われた[39]。親族は手紙を書くことも許可されていたが、前向きな内容にするように要求された[19]

鉱夫の士気を案じて、救助隊は検討されている計画では救出に数か月かかるかもしれないことを鉱夫たちに伝えることをためらった。

救助隊と顧問医は鉱夫たちが非常に統率のとれた集団だったとしている[32]。救助隊とともに働いた心理学者や医師は彼らを暇にさせず、精神を集中させるようにした[37]。タイマーつきの蛍光灯が届けられ、擬似的に再現された昼夜によって人間の通常の生活リズムが保たれるようにした[39]。鉱夫たちは救出に向けて尽力する人々の能力を確信し、「この地底から助け出すために、大勢のプロがいてくれている」と言った[40]。心理学者は鉱夫たちが悲観的にならず気力を保つためにはそれぞれに見合った仕事を受け持つことが大切だと確信した[40] 。彼らは8時間ごとのシフトを組む3つの班にわかれ、輸送カプセルの受け渡し、環境保全、それ以上の落盤を防ぐ安全管理、コミュニケーションや衛生関係の仕事を分担した[40][41][42][43]。ウルスアが全体を統括するリーダーとなり、最年長のゴメスが精神的な指導者に選ばれた[40]。精神衛生の専門家は集団が規律と規則を守ることが精神衛生のために重要だと信じ、集団が階級構造をとるよう補助した[44]地下に閉じ込められた作業員に物資を補給するための細いチューブ(2本のうちの1本)

医療の仕事を任せ、健康について相談させるのにはジョニ・バリオスが最適だというのが医師たちの判断だった。彼はかつて医療トレーニングを受けたことがあったためである[45]。彼は毎日回診をして診断票を作り、鉱夫たちのカルテを更新していた。地上の医療班とも毎日ミーティングをもっていた。彼が非常に忙しくなると、ダニエル・エレラを助手にして記録をつけるようになった[46]。バリオスは破傷風やジフテリア、インフルエンザ、肺炎の予防注射も行った[32]。鉱夫たちの多くは高温多湿の環境のため皮膚に大きな問題を抱えるようになった[32] 。速乾性の衣服やマットレスなどが送られたために、地面に直に眠る必要はなくなっていた[32] 。9月には止血帯や点滴薬、副木を含めた応急手当のキットが彼らのもとに届き、ビデオで応急処置を学習した[47]

温度と湿度が高い環境では衛生は重要な問題となる。場所決めを徹底することで清潔さは保たれた。「どうすれば環境が保てるのか彼らはよくわかっていた。トイレとゴミ捨て場を決め、リサイクルさえしていた。プラスチックと生ごみの分別もしていた。自分たちのいる場所に気を使っていたということだ」と医師のアンドレス・リャレナは語った。彼らは天然の落水を日常のシャワーとして使い、石鹸とシャンプーを palomas から受け取った。汚れた衣服は送り返した。彼らはいくつかの水源も掘り上げ、医師により飲料に適すると判断されたうえで、井戸の浄水剤が送られた[46]

環境と安全は第一の課題であった。19歳ともっとも若いジミー・サンチェスは「環境アシスタント」に任命され、毎日携帯用の機器で酸素と二酸化炭素を測定し空気の質を確かめた。温度は平均して31度であった。鉱夫たちによる班は落盤の危険のある箇所や天井から落石の危険のある箇所を特定するためにパトロールを行ったり、採掘作業の際に生じた水の流れを変える作業に従事したりした[46]

ハイメ・マニャリク保健相は「今の状況は宇宙ステーションの片隅で数か月過ごす宇宙飛行士の生活にとてもよく似ている」と語った[48]


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