なお、北米大陸の北太平洋岸からは鮮新世の化石が出土していない事から、現生種のコククジラはアジアで誕生した可能性が指摘されている[45]。 東の系統は、北米大陸やバンクーバー島やウランゲリ島やチュクチ自治管区などで採餌し、カリフォルニア州とメキシコの沿岸を繁殖場としている。 カリフォルニア州からアラスカ州の南東部にかけて、小柄で[22]他の大多数と異なり大規模な回遊を行わない「レジデント」が 200 - 300頭前後存在し、「PCFG[注釈 10]」として知られている[23]。これらの中には、バンクーバー島やピュージェット湾の沿岸で、北方への回遊の途中で3-5月まで滞在する少数の個体が存在し、通称「サウンダーズ[注釈 11]」と呼ばれている[46]。 以前はコルテス海や大陸側のメキシコの沿岸[注釈 12]にも定期的に回遊しており、1980年代までは2つの繁殖海域がソノラ州とシナロア州に存在したが、おそらくは人間による開発の影響で放棄されたとみられている[33][47]。
北米
西の系統は、過去の記録から推測すると夏はオホーツク海や黄海・渤海[49]などで過ごし、冬に朝鮮半島や日本列島、中国大陸の広東省や海南島などの沿岸で繁殖し、春と秋の回遊時には、朝鮮半島近海から日本列島を通過していたとみられる。
かつては東京湾や瀬戸内海なども含め、東アジア圏沿岸のほぼ全土が生息域であった。済州島、黄海・渤海[注釈 14]、中国南部[注釈 15]に繁殖海域が存在したと思われる[50]。南西諸島や台湾に越冬海域が存在したかは未確認であるが、完新世に該当する化石が台湾と澎湖諸島の付近から発見されていたり[51]、トンキン湾[41]や青ヶ島[43]やハワイ諸島[44]や東シナ海の沖合[42]など、既存の分布外での確認も散見されることから、南西諸島や台湾も通常の分布域に含まれていた可能性があるだけでなく[51]、バブヤン諸島などのフィリピン国内等にも到達した可能性もある。
アジア系個体群に現在のバンクーバー島やピュージェット湾に見られる夏季の地方滞在群[46]が存在したか否かに関しても不明であるが、渤海や黄海から中国南部にかけて年間を通して棲息していた可能性は示唆されている[49]。
捕鯨以前は日本列島の沿岸にも数多く、北海道ではセミクジラやツチクジラなどと同様に一種の風物詩とされるほどよく見られ、とくに採餌海域が到達していた可能性がある北海道全域[注釈 16]や本州や九州の北部[注釈 17]、土佐湾などは捕獲上の統計的に見ても数が多かったとされる[52]。