アジア系個体群に現在のバンクーバー島やピュージェット湾に見られる夏季の地方滞在群[46]が存在したか否かに関しても不明であるが、渤海や黄海から中国南部にかけて年間を通して棲息していた可能性は示唆されている[49]。
捕鯨以前は日本列島の沿岸にも数多く、北海道ではセミクジラやツチクジラなどと同様に一種の風物詩とされるほどよく見られ、とくに採餌海域が到達していた可能性がある北海道全域[注釈 16]や本州や九州の北部[注釈 17]、土佐湾などは捕獲上の統計的に見ても数が多かったとされる[52]。北海道北東部[注釈 18]、陸奥湾、伊豆半島周辺[53][注釈 19]、丹後半島、周防灘、鳥取砂丘沿い、有明海などにも本種に適した自然環境が存在する。かつて、日本列島の日本海沿岸は本種の分布には当てはまらないとされてきたが、少数の目撃や混獲等の記録が存在する事から覆された[54][55][56]。大村秀雄は祝島や小野田市沿岸や別府湾などの瀬戸内海および豊後水道が本種の繁殖海域であったとする説を発表しており[57][58]、広島県三原市の二つの無人島からなる「鯨島[注釈 20]に回遊していた鯨種を本種だと推定する説もある[59]が、これらの説を科学的に支持する資料は少数の捕獲記録以外には存在しないために検証が必要である[11]。
これまで日本では、大隅半島以南および南西諸島など東シナ海での確認は考古学的検証や記録からも発見された事はなかった[60][注釈 21]が、上記の通り東シナ海のかなりの沖合で音響調査によって遊泳している事が判明している[42]。近年、未確認の目撃例がトカラ列島および宮古島であったが、過去、このような記録がこれまで一切存在しなかった理由は謎である。 一度は絶滅した北大西洋では、本来は北米大陸側ではカナダからメキシコ湾、ヨーロッパ側ではアイスランドやスカンジナビア半島やブリテン諸島から地中海やサハラ砂漠の沿岸にかけて分布していたと思われる。 ハドソン湾やバルト海やパムリコ湾などの閉鎖的海域を含め、フロリダ半島、ワッデン海、地中海、西サハラなどに至る北大西洋の東西の広範囲に分布していた[62][63][64][65][66][67]。
大西洋と南半球