コククジラ
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これらのことから、コククジラの分類は見直される可能性が示唆され、2019年の分子系統解析では完全にナガスクジラ科に内包されることが明らかになった[注釈 9][17]

なお、比較的に知名度の高い近縁種としてアキシマクジラが存在する。
形態ブリーチング

上記の通り、本種はヒゲクジラ類としては比較的に小柄な部類であり、成獣は体長が12 - 15メートル、体重12 - 40トン[5][18]になる。

背鰭はないが、背から尾柄の背面にかけて複数の隆起がある[5][18]。腹面に平行に入る細い溝(畝)はないが、下顎に2 - 4本の溝がある[6]。体色は灰黒色で、不規則に灰色の斑紋が入る[5]。皮膚の表面には、フジツボ類やクジラジラミ類が着床している個体が多い[6]

ヒゲクジラ類としては例外的に下顎よりも上顎の方が長い[6]が、一方で採餌様式から下顎も発達している[19]。口の中のクジラヒゲは左右に140 - 180枚ずつ存在する[5][6]

(人間の概念に当てはめれば)ほとんどの個体が「右利き」であり、採餌時に体を右側に傾けるために右側のクジラヒゲがより摩耗して短くなっている事例が多く、またそれに影響されて、フジツボなどの寄生生物の付着量も体の左右側のどちらか一方に偏向している傾向にある[20][21]

後述の北米沿岸に存在する「レジデント」は、より長距離の回遊を行う個体よりも概して小柄であり、また、頭骨や尾びれも小型化している[22]
生態採餌方法の構図波打ち際干潟などの浅瀬を好み、陸上からも頻繁に観察できる(ヌートカ湾)。磯で採餌する個体(ヤクイナ岬)。

ブローはハート型になる[23]

本種は現生のヒゲクジラ類では特に底生生物の採餌に特化しており、本種の沿岸性の強さの理由の一つにもなっている。海底の泥や砂ごと口に含み、底生生物を髭で濾しとって捕食する[6]。上述の通り「右利き」の個体が多く、海底での採餌時の癖が各個体に定着しているため、フジツボなどの付着生物が頭部の片側に編重している事例が目立つ[20]。通常はこれらの底生生物を主な餌とするが、後述の通り環境汚染気候変動などの生息環境の悪化によって健康状態の悪化や餓死を中心とした大量死が何度か発生しており[24]底生生物の減少からかカタクチイワシ科などの通常は食糧としない小魚を捕食する事例が散見される様になった[25]

11月下旬から12月上旬に交尾を行う[6]。妊娠期間は13か月[5][6]。寿命は70年[5]セミクジラと同様に複数の雄が一頭の雌と交代で交配する繁殖形態を持ち、コククジラの場合は雌雄合わせて3頭の場合が多いとされる[26]

通常は外洋に出ることは少なく、浅い沿岸部を南北に往復し、年間2万キロメートル以上を回遊する。これは現生哺乳類の年間の通常の回遊距離としては(ザトウクジラと同様に)おそらく最長の部類とされている。

きわめて沿岸性が強く、水深が数メートルの浅瀬にも頻繁に現れ、干潟で採餌を行う事も少なくない[23]。しかし、稀にではあるが河川を一ヶ月以上も遡上して死亡したり[27]、街中の水路に入り込んでしまう事例も存在する。

セミクジラホッキョククジラザトウクジラニタリクジラカツオクジラ)・ミンククジラなど他の沿岸性が強いヒゲクジラ類と共通する特徴としてブリーチング(ジャンプ)などの海面行動を活発に行ったり、人間に興味を示して積極的に接近する傾向がある。コククジラも人懐っこく好奇心が旺盛であり、陸上からも容易に観察できるためにホエールウォッチングの対象として人気であり(後述の通り、産業としてのホエールウォッチングは本種を対象として開始された)、人間とのスキンシップを積極的に行う事も知られている[28]
天敵子鯨はシャチホオジロザメに狙われることがある。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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