コククジラ
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数値統計上、アジア系個体群は実質的に日本の捕鯨業によって壊滅した[注釈 22]。沿岸の開発の影響も受けやすく、アジア系個体群にとってはサハリン北部で行われているロシア油田開発事業「サハリン2」による影響がとくに懸念されている。

保護活動の結果、北米大陸側の個体群は一時期は28,000頭前後まで回復したが、人間活動との軋轢によって死亡する個体だけでなく、人類の影響による環境破壊と環境収容力の低下から餓死する個体が増え、2023年もふくめて何度かの大量死が発生しており、これらの複数回の大量死によって14,000?16,000頭前後まで個体数が激減し、最大で50%以上が死亡したとされる[24]。この様な生息環境の悪化による北太平洋での大量死はザトウクジラにも発生しており、2013年から2021年にかけて北太平洋で7,000頭以上のザトウクジラが餓死したと推測されている[88]

本種が人類によって減少する以前の生息数には諸説あるが、遺伝子座などを利用した測定の結果、76,000頭から118,000頭という範囲で推定されており、いずれにしても現在の生息数(14,000?16,000頭前後)よりも遥かに多く生息していたことが示唆されている[89]。また、環境収容力の推定ではさらに多くが生息していた可能性も指摘されており、生息環境のデータが得られた地域に限定しても北太平洋だけで最大で約173,000頭の生息が可能であり、データが得られなかった北太平洋の他の地域も合わせればこれ以上になった可能性がある。さらに、この推定には北大西洋環境収容力の推定値は含まれていない[90]
アジア系個体群の動向アジア系個体群の一頭と思われる個体(サハリン)。2017年3月に青ヶ島で観察された個体。2018年の2月-3月にも同島で確認された[注釈 23]

アジア系の個体群(ニシコククジラ)は、日本列島における古式捕鯨の他にも、ユーラシア大陸における日本由来の商業捕鯨によって大量に捕獲されて壊滅したとされており[注釈 24]、その際に本種がもっとも捕獲されていたのは朝鮮半島だった[36]

朝鮮半島で日本の捕鯨業者によって捕獲された個体を測定した結果、胸ビレやヒゲ板、頭部のプロポーション等に北米系とは異なる特徴が見られたとされる。アジア系の個体数は、捕鯨以前の規模ですら北米系統よりは遥かに少なかったとする説が存在する[9][8][56]。その一方で、生息環境のデータなどから分析・推定された東アジア圏の環境収容力は、データが限定されていながらも、日本列島サハリンの南半分、千島列島などだけでも66,000頭以上とされており、これだけでも判明している限りは北太平洋全体の環境収容力の4割に達しており、データが得られなかった他の地域も合わせればこれ以上の個体数の生息が可能だったとされている[90]

現存するニシコククジラの何割が、純粋なアジア系の生き残りなのか北米系の個体群に由来しているのか、それとも両群の交配に由来するのかは不明である[95]混獲された個体や漂着個体などを解剖した結果、近年に中国日本の沿岸に出現してきた個体は北米側の個体群に由来する可能性および本来のアジア系群が実質的に絶滅した可能性も指摘されている[8][9][96]。また、個体数が激減したことによる近親交配の増加と遺伝的多様性の低下による悪影響も懸念されている[97]

なお、カムチャッカ半島の東岸などでは北米由来の個体が度々確認されてきたが、2010年以降、ニシコククジラの唯一の安定した生息域であるサハリンの北西部からカリフォルニア半島への回遊をする個体が複数存在すると判明しており、サハリンにおける個体数が急速に増加している[注釈 25]ことからも、近年の「アジア系」とされてきた個体には、北米の個体群に由来する個体が含まれている可能性が示唆されている[95]。しかし、本種を対象とした生存捕鯨が行われているカムチャッカ半島の北に位置するチュクチ自治管区に、アジア系の個体が回遊している可能性の有無などに関しては未知数である。

韓国および中国では、国家指定の保護動物に指定されてきたが、近年の同種の定期的な回遊を示す情報は存在しない。大韓民国では、大韓民国指定天然記念物にも「蔚山のコククジラ廻遊海面」が登録されており、賞金を付与する形式で目撃情報も募集されているが、1977年に蔚山広域市沖で2頭が目撃されて以降は確実な記録が存在していない[99]。しかし、2015年には三陟市で本種と思われるクジラの目撃が報告されている[100]

中国では、1933年から24件の記録が存在し、最新のものは1996年に黄海大連市荘河市に座礁した雌の成獣と、2011年の台湾海峡平潭県での雌の成獣の混獲である[96][101]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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