コウモリ
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翼手目の系統的位置[8][9][10][11][12]

古代ローマ博物学者であるプリニウスは、コウモリのことを「翼持つネズミ」と呼び、鳥類に分類していた。江戸時代小野蘭山の『本草綱目啓蒙』でも、「かはほり」(コウモリ)はムササビと共に鳥類に分類されている。

近代分類学では哺乳類に分類されたが、その始祖と言うべきカール・フォン・リンネは、主にオオコウモリの形態からコウモリを霊長類に分類した[13]。その見解が否定されて後も、霊長目(サル目)などと共に主獣類として分類されていた。

オオコウモリが霊長類に近いという説はその後もあり、1986年「ココウモリとオオコウモリでは、脳と視神経の接続の仕方がまったく異なり、オオコウモリのそれは霊長目および皮翼目(ヒヨケザル目)と同一で、他の哺乳類には見られない独特のものである」ことを主な根拠に、「ココウモリはトガリネズミ目から進化し、オオコウモリはそれより後に霊長目から進化した」という、コウモリ類2系統説が提唱された[14]

しかし、1990年代からの分子系統の研究により、翼手目はやはり単系統で、食肉目(ネコ目)、鯨偶蹄目奇蹄目(ウマ目)、鱗甲目(センザンコウ目)などと共に、ローラシア獣上目の系統に属することが明らかになった。なお、主獣類は多系統だったもののコウモリを除けば単系統であり、真主獣類として現在も認められている。

2006年東京工業大学のグループによる研究(レトロポゾンの挿入の分析)によって、翼手目はローラシア獣類の中でも奇蹄目や食肉目、鱗甲目に近縁であるという説が提唱された[15]。奇蹄目のウマと翼を持つコウモリが含まれることから、ギリシャ神話の有翼馬であるペーガソス (: Π?γασο?, P?gasus) にちなんだペガサス野獣類 (Pegasoferae) がこの系統の名称として提案された。

しかしその後の複数の分子系統解析から、翼手目は真無盲腸目の姉妹群であるScrotifera類の中の最初の分岐群であることがわかっており、Ferunglata(有蹄類鯨偶蹄目+奇蹄目)+広獣類食肉目+鱗甲目))と姉妹群である[9][12]
オオコウモリとココウモリ

伝統的に、翼手目は大翼手亜目(オオコウモリ亜目 Megachiroptera、オオコウモリ類)と小翼手亜目(コウモリ亜目 Microchiroptera、ココウモリ類)に分けられてきた。

オオコウモリはその名のとおり大型のコウモリの仲間で、オオコウモリ科の1科のみが属する。中には翼を広げた幅が2mに達する種もある。よく発達した視覚によって、植物性の食物を探す。果実を好み、農業従事者からは害獣として扱われる場合もある。オオコウモリのほとんどの種は反響定位を行わない[注釈 2]

ココウモリは小型のコウモリの仲間で、17科が属し、多くの種に分かれている。多くが食虫性であるが、植物食、肉食、血液食など様々な食性の種がいる。コウモリ亜目の特徴は、反響定位をすることである。超音波を発し、その反響を検知することで、飛行中に障害物を避けたり、獲物である昆虫等を見つけたりすることができる。

オオコウモリとココウモリには翼を持つという共通点があるが、それを除けばあまりにも多くの違いがあるため、上記の通り「別々の祖先から進化し、独立に飛行能力を獲得したのではないか」という説もあった。しかし、最近のミトコンドリアDNA配列の解析により、オオコウモリとココウモリは系統的にも近縁であることが明らかになっており、どちらも飛行能力を初めて獲得した共通の祖先から進化したものと考えられている。

1997年のマッケンナとベルによる分類体系では、小翼手亜目の下に陽翼手下目Yangochiropteraと陰翼手下目Yinochiropteraの2グループが置かれていた[2]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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