コウモリ
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哺乳類では、他にもムササビモモンガヒヨケザルなどの飛膜を広げて滑空する種が知られているが、鳥類に匹敵するほどの完全な飛行能力を有するのは翼手目のみである。

コウモリの前肢(前足)は、親指が普通のの形で鉤爪があることを除けば、全て細長く伸びている。飛膜はその人差し指以降の指の間から、後肢(後ろ足)の足首までを結んでいる。と指を伸ばせば翼となって広がり、腕を曲げればこれを折りたたむことができる。さらに後ろ足との間にも飛膜を持つものも多い。また、鳥と異なり、後ろ足は弱く、立つことができない。休息時は後ろ足でぶら下がる。前足の親指は爪があって、排泄時など、この指でぶら下がることもできる。また、場合によってはこの指と後ろ足で這い回ることができる。

ココウモリ類は超音波を用いた反響定位を行うことでよく知られている。種によって異なるが、主に30kHzから100kHzの高周波を出し、その精度はかなり高く、ウオクイコウモリのように微細な水面振動を感知し、水中を捕らえるものまでいる。コウモリの存在する地域における夜行性昆虫カエルなどは反響定位対策となる器官習性を持つものも多い。ただし、大型のオオコウモリの仲間は反響定位を行わない種が多い。

哺乳類は一般に大型のものほど長命であるが、コウモリ類は身体の大きさの割に非常に長生きで、体重20?30gにすぎないキクガシラコウモリが20年以上生きた例も有る。これは、空を飛べて夜行性であるために天敵が少なく死亡率が低いこと、空を飛ぶという制約から高い繁殖力を持てず(ほぼすべての種で、1回の繁殖期でもうける子供は1頭だけである)、充分な数の子孫を残すには長命になるしかなかったことなどが考えられる。コウモリはこうした長命を保つために特殊な代謝をしている事が窺われ、休眠時は呼吸や心拍数が極端に下がり一種の仮死状態となる。鳥類でも同様の代謝を持つ進化を遂げた動物としてハチドリなどがいる。

竹竿(和竿)の先に鳥黐(とりもち)を付け、それを振ってコウモリをおびき寄せ、接着させて捕獲することができる。しかし、#コウモリと感染症に詳述するように、コウモリは狂犬病をはじめとする様々な人獣共通感染症のキャリアとなりうるため、危険を伴う。

熱帯においては、花粉を食べる種があるため、それに対する適応として花粉の媒介をコウモリに期待する、コウモリ媒の花がある。

コウモリは目の前の獲物だけでなく、次の獲物の位置も先読みしながら最適なルートを飛んでいる[注釈 1]
進化

恐竜の栄えた中生代において、飛行する脊椎動物の主流は恐竜に系統的に近い翼竜と恐竜の直系子孫である鳥類が占めていた。中生代の終結において、恐竜とともに翼竜は絶滅し、鳥類も現生の鳥類に繋がる新鳥類以外の系統が絶えた。これにより、飛行する脊椎動物という生態系ニッチには幾分か「空き」ができた。ここに進出する形で哺乳類から進化したのがコウモリ類である。コウモリが飛行動物となった時点では、鳥類は既に確固とした生態系での地位を得ていたため、コウモリはその隙間を埋めるような形での生活圏を得た。

コウモリの直系の祖先にあたる動物や、コウモリが飛行能力を獲得する進化の途上過程を示す化石は未だに発見されていない。恐らく彼等は樹上生活をする小さな哺乳類であり、前肢に飛膜を発達させることで、樹上間を飛び移るなど、活動範囲を広げていき、最終的に飛行能力を得たと思われる。確認される最古かつ原始的なコウモリはアメリカ合衆国ワイオミング州化石が産出したオニコニクテリスで、始新世初期(約5200万年前)の地層から発見されている。この時期には既に前肢は(現生群に比べ短いなどの原始的特徴が目立つものの)翼となっており、飛行が可能になっていたことは明白である。化石からの構造を詳細に研究した結果、反響定位を持っていなかったことが判明し、コウモリはまず飛行能力を得たのちに、反響定位を行う能力を得たことが分かっている。
分布

翼手目は南極大陸以外の全大陸分布し、さらに海洋島にも広く分布する。このような例は人為分布を除いては哺乳類の中では他にない。これは、哺乳類が(クジラ類などの例外を除けば)陸上動物であり、しかも大きく進化したのが大陸移動による各大陸の分裂後であったため、陸橋等の存在如何でその分布が大きく制限されているのに対し、翼手目は鳥類同様に翼による飛翔能力を持ち、海などによって遮られた場所でも自由に移動できたためであると考えられている。たとえば、ハワイ諸島において、在来の陸上哺乳類はアカコウモリ属の1種のみだった。
分類
位置づけ


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