ゲルマン祖語
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流音, 半母音wr, lj

摩擦音の [β], [d], [?] は音素でなく異音であるので閉鎖音と区別せずに /b/, /d/, /g/ と書く場合も多い。
グリムの法則

グリムの法則とは、ゲルマン祖語が印欧祖語から分化するときに破裂音に起こった重要な変化である。紀元前6世紀頃から紀元前2世紀までにかけて起こったとされる。

グリムの法則 破裂音から
摩擦音有声音から
無声音有気音から
無気音
唇音/p/ > /?//b/ > /p//b?/ > /b/
歯音/t/ > /θ//d/ > /t//d?/ > /d/
軟口蓋音/k/ > /x//?/ > /k//??/ > /?/
唇軟口蓋音/k?/ > /x?//??/ > /k?//???/ > /??/, /w/, /g/

ヴェルナーの法則

ヴェルナーの法則とは、無声摩擦音が有声音へと音韻推移する現象に関する法則である。

無声摩擦音 (/s/, /f/, /θ/, /x/) はアクセントのない音節に続くとき有声化してそれぞれ[z], [v], [d], [?]になる。

言い換えると語頭またはアクセントのある音節に続くときに無声のままである。

ここでいうアクセントとは、印欧祖語から引き継いだ「位置の変わるアクセント」である。

ヴェルナーの法則の変化の直後に第一音節に強勢がある現在のようなアクセントになった。

アクセントの変化の後 /s/の有声の/z/が音素になった。

有声の /f/, /θ/, /x/ は/b/, /d/, /?/ と混同されることがある。


母音

 前舌中舌後舌
/i(?)/ /u(?)/
半狭/e(?)/ /o(?)/
狭めの広/a?/  
 /a/ 


短母音4つ(i, u, e, a)、長母音5つ(?, ?, ?, ?, a)がある。詳しい音は不明である。

印欧祖語の a と o はゲルマン祖語で a になり、? と ? は ? になった(スラヴ語にも類似の変化がみられる)。

? と a はそれぞれ ?1 , ?2 のように番号をつけて書かれることもある。復元した単語の数が少ないこともあり a (?2) の音価は不明である. 言語学者のクラーエ(Krahe)の説では a を ? と同じ音であるとし、印欧祖語の ei または ?i が二重母音から単母音へ変化している途中を表しているのではないかとしている。「エー」に近い音が二つあったことはルーン文字(古層)に二字あること(?と?)と合致する。

強勢のない音節に来る母音は祖語末期から減少しはじめ、各言語で変化をたどった。

語形

名詞形容詞主格対格属格与格具格呼格の6つの格がある。代名詞副詞にわずかに所格奪格の名残が見られる。具格呼格は複数形が不明である。具格西ゲルマン語呼格ゴート語のみにのこる。

動詞代名詞には単数、複数形にくわえ双数形がある。代名詞の双数形は三群の古層まで続いたが動詞はゴート語のみに残る。名詞形容詞の双数形は記録上の最古の年代より前に消失した、あるいはイタリック語派と同じくゲルマン語派に分派する前にすでになかったと推測されている。
動詞の活用の体系

ゲルマン祖語の動詞

直説法接続法命令法(接続法は印欧祖語の希求法に由来)

能動態受動態(受動態は印欧祖語の中動態に由来)

時制現在過去(過去形は印欧祖語のアオリスト完了に由来)

主語人称:1、2、3人称と単数、双数、複数の組み合わせの9とおり

によって変化する。未来形がないのが特徴である。
名詞

名詞の変化は大体印欧祖語の体系を引き継いでいる。


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