ゲド戦記
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「解放の呪文」(The Word of Unbinding, 1964年)

「名前の掟」(The Rule of Names, 1964年) イェボーが名前を明かされた顛末。後にゲドがこの経緯をもとにイェボーと取引をした。

がある。また、未邦訳の短編が2編存在する。

The Daughter of Odren, 2014年

Firelight, 2018年

世界設定

物語が展開するアースシーは、後述のように幾つもの島が集まった海域であり、大陸は存在しない。多島海の外部世界についての知識は作中では知られていない[7]

羅針盤が機能し、北に行くと気温が下がり、南に行くと気温が上がるなど、地球の北半球に似た世界である。また、南北方向に移動すると見える星座も変化する[8]地動説を前提にしているともとりうる台詞もある[9]

人々の大半は赤い肌や浅黒い肌をしており、白い肌を持つのは東海域にあるカルガド帝国の住民のみである。
地名
アースシー
物語の舞台である多島海世界。
魔法を受け入れる文化を持つハード語圏と、魔法を嫌うカルガド帝国に大まかに分かれ、前者はさらに中央部の多島海(アーキペラゴ)と東西南北の各辺境海域に区分される。ハード語圏において魔法は身近な存在であり、医者にして化学者であり天気さえ変える力のある魔法使い(常に持つ杖が称号保持者の証明となっている」)はもちろん、まじない師の類いであっても町の識者として敬意を集めている。対照的にカルガド帝国では鎧や船などの技術に長け、戦や略奪を好む野蛮さで知られている。
ハブナー島
アースシーにおいて、人間が居住しているものとしては最大の島。多島海のさらに中央に所在する。
ハブナー・グレートポート
ハブナー島の、そしてアースシー最大の都市。港町。かつてアースシー全てを支配していた王朝の首都であった。「帰還」以降、アースシー王となったレバンネンがここを首都としている。
ローク島
多島海の中海に所在する、魔法使いを養成する学院が存在する島。アースシー世界の中心で、レバンネンがその座につくまで空位が続いていたアースシーの王に代わって、秩序を維持するものとしてアースシーに強い影響力を与えていた。悪しきものが近づこうとすると、周囲(厳密にはその船の進路前方)に嵐の防護壁「ロークの風」が自動で築かれる。
ゴント島
北海域に位置する小さな島で、ゲドの故郷。ひなびた田舎だが、アイハルや後に「武勲(いさおし)」が作られるゲドなど、高名な魔法使いを何人も輩出し「ゴントの名産品はヤギと魔法使い」と評される。アースシー北東部のカルガド帝国と隣接し、度々侵攻されている。
エンラッド島
北海域に位置する島で、レバンネンの故郷。近隣にあるエア島と共に、アースシーでも歴史の古い島として知られる。
アチュアン島
カルガド帝国を構成する島の一つ。ほぼ中部にある。テナーの出身地。太古の力を「名なきもの」としてまつる神殿がある。
セリダー島
西海域のさらに最西端に位置する、アースシーの「さいはての島」。
国、組織、団体など
学院
魔法を正しい方向に導く(
白魔術化する)ために設立された学校。男子校。正式な校名はなく、「学院」、または所在地名で「ローク」とのみ呼ばれる。魔法を教授する、風・詩・姿かえ・手わざ・名付け・守り・薬草・様式・呼び出し(五十音順)の9人の「長(おさ)」と大賢人、計10人の賢人によって管理される。アースシーにおける魔法使いとは、学院卒業者のことを指す、いわば学位である。「魔法使い」の称号を受けていなければ、いかに優れた技の持ち主でも「まじない師」でしかない(女性の入学は許可されていないため、女性はどれほど魔法の才能があっても「魔法使い」にはなれない)。入学に当たっては別の魔法使いから大賢人に宛てた、本人を魔法使いを目指すにふさわしい者とする推薦状親書が必要。守りの長に自身の真の名を名乗らなければ敷地内には入ることさえ出来ない、どんな扉開け・開錠の術も撥ね返す堅い守りが固められている。逆に卒業し出て行く時には守りの長の真の名を探り当て呼ばないと外に出られない。『ゲド戦記』が用いた概念の中で最も大きな影響があったのは「正しい魔法は学校で学ぶ」というこの制度であり、『ハリーポッター』を筆頭に多くの現代ファンタジー作品が追随した[2]
カルガド帝国
アースシーの東部に位置する小国。ハード語圏とは言語や人種が異なる(ハード語圏の人々は有色、カルガド人は白人)。魔法を忌み嫌い、アチュアンの地に祀られた太古の兄弟神、ウルアーとアトワーを崇めている。近隣のハード語圏の島にたびたび侵攻している。

アースシーに住む、人間とは異なる知的生物。人間より賢く、遥かに長命で、多くは人間を見下している。いくつかの例外を除き、人間のような通り名は持たず、真の名だけを持つ。また、彼らの使う言葉は魔法に使われる「真のことば」であり、すなわち全ての竜は魔法を使う。真のことばで嘘を言うことさえあり、人間には見抜く方法がないので騙されることになる。
その他の用語
真の名(まことのな)
アースシーにおいて、すべてのものを支配できるもの。砂の一粒、水の一滴まで森羅万象が真の名を持っており、真の名を知っていればそれを操ることができる。人間については「本名」とも呼ばれる。学院ではこの全てを覚えることも学業の一環として課される(24時間でページの一覧が消去される魔法仕立ての教科書がある)。魔法使いには真の名を探り出す術をもっているものもおり、ゲドは生まれつき真の名を探り出す術に長けている。人間の場合、成人の儀式の際に、儀式に立ち会う魔法使いやまじない師の口を借りて
洗礼の形で知らされる。通常は一生変わることはないが、強い力を持つ魔法使いであれば、(無理やり)新しくつけかえて相手を生まれ変わらせることもできる。また、自分の真の名を相手に知られると、たとえ魔法使いであってもその相手に対しては完全に無防備になる[10]。そのため一般に、よほど信頼できる相手でない限り、真の名を他人に明かすことはない。
魔法
魔法使いの類によってかけられる。魔法をかけるにはまず相手(または物)の真の名を知らなければならない。その上で神聖文字を唱える。すると相手を操り、更にはそのものの本質を変えることさえできる。しかし本質を変えることは宇宙の規律を一時的にせよ操作することでもあり、濫用は厳しく戒められている。神聖文字とは、太古の昔、セゴイが海中から島々を持ち上げアースシーの世界を創った時に使われ語られた「真のことば」であり、ひいては竜のことばでもある。
太古の力
大地が持つ力であり、アースシー創世から存在するとも言われる。カルガド帝国では信仰の対象ともなっており、その中心がアチュアンの墓所である。太古の力は必ずしも魔法と対立するものではなかったが、ロークの学院設立以降、徐々に蔑まれるようになった。しかし、ローク島自体が本来は太古の力の中心であり、物語中でも、竜のカレシンなどに度々言及されている。
黄泉の国(よみのくに)
死者のゆく世界。仮死状態になると、生者の世界とを分ける石垣まで行くことができる。不毛な乾ききった土地で、そこに暮らす死者はいかなる感情も表さず、かつて親しかった者と会っても、気づくこともない。ハード語圏の人々のみの姿が見られ、輪廻転生を死生観とするカルガドでは「魔法使いたちは死ぬと、生まれ変わることもない、翼があるのに空も飛べない怪物になってしまう」という形で言い伝えられている。物語の要所で度々登場し、最終巻ではアースシーの魔法の原理である「真の名」のメカニズムと、黄泉の国がなぜ生まれたのか、なぜ死者に感情がないのかという謎が明かされる。
登場人物
ゲド / ハイタカ(原書ではSparrowhawk)
アースシーの魔法使いで大賢人。北海域のゴント島・十本榛の木村の出身。“ロークの学院始まって以来の秀才”と評され、最後の大賢人。ゲドが退いた後、大賢人は選出されていない。また竜と交渉出来る者、竜王でもある。学院生時代に「影」を呼び出し顔に傷を負う。レバンネンと共に最果ての地に赴き世界の均衡を取り戻すが、魔法の力を失う。
アイハル / オジオン
ゴント島の南西にある最大の町、ル・アルビに住む魔法使い。別名“沈黙のオジオン”。山羊飼いだったゲドに魔法使いの才能を見出し、彼を魔法学院があるローク島に送り出す。


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