ゲゲゲの鬼太郎
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妖怪という言葉がひんぱんに用いられるようになったのもこのころからである(貸本時代にはほとんど使われていなかった)。貸本時代の作品のリメイクも多く、「霧の中のジョニー」を「吸血鬼エリート」に、「おかしな奴」を「陰摩羅鬼」に、「ボクは新入生」を「朧車」に、「ないしょの話」を「大海獣」にと、多少内容をアレンジして再執筆している。また怪獣映画さながらの「大海獣」や「妖怪獣」、「毛羽毛現」の恐竜、「白山坊」のモスラのような容姿の巨大蛾などが登場するのもこの時期の特色である。なお「妖怪大戦争」の回では、後に主要メンバーとなる、砂かけ婆子泣き爺一反木綿ぬりかべが鬼太郎の仲間として初めて登場する。

やがて安定した人気を得た本作品は1968年(昭和43年)に、タイトルを『墓場の鬼太郎』から『ゲゲゲの鬼太郎』に変更することでスポンサーの了解を得て、テレビアニメ化を果たす[7]。それに合わせて1967年(昭和42年)に『週刊少年マガジン』11月12日号から作品名を『ゲゲゲの鬼太郎』と改題された。また、アニメ化に伴って少年漫画誌のみならず講談社の『ぼくら』や『たのしい幼稚園』などの幼年誌でも鬼太郎は子供たちのヒーローとして活躍する一方、貸本時代からのファンや青年向けの作品にも登場し、1968年(昭和43年)は鬼太郎作品を5誌に亘って連載していた。

月刊漫画ガロ』(青林堂)では「鬼太郎の誕生」の掲載を経て、「鬼太郎夜話」を連載。両作とも貸本時代に描かれた作品を、一部ストーリーやデザインを変更して新たに描き直したものである。そして、『月刊宝石』(光文社)ではベトナム戦争を題材にした「鬼太郎のベトナム戦記」を連載。ベトコンに味方した鬼太郎ら妖怪軍が米軍と戦うというストーリーであるが、原案として参加した佐々木守福田善之が思想的な部分を手伝っている。

1969年(昭和44年)、人気絶頂の最中に『少年マガジン』の連載が終了。翌1970年(昭和45年)の『別冊少年マガジン』7月号では、連載が終了した作品の主人公を描く「その後のまんがスター」という企画があり、南方に渡って最後は平和に暮らす鬼太郎という「その後のゲゲゲの鬼太郎」が掲載された。
長期シリーズ化

連載やアニメの終了後も人気は衰えず、1971年(昭和46年)に再びテレビアニメ化されたことに合わせて、『週刊少年サンデー』(小学館)で新作が描かれた。今シリーズの鬼太郎は、砂かけ婆の経営する妖怪アパートの住人として描かれ、鬼太郎ファミリーのメンバーがこれまでよりも増えている。また、『少年マガジン』でゲスト妖怪として登場していた猫娘と設定は同様であるが、容姿が微妙に違う猫子というキャラクターをレギュラーとして登場させている。なお、当時は小学館の『よいこ』『幼稚園』『小学一年生』などの学習雑誌での連載も加わり、7誌同時にそれぞれ別の鬼太郎作品を発表していた。

『少年サンデー』版の最終話では、鬼太郎がヤカンズルに飲み込まれ7年は出て来られないとして終わっているが、2年後の1973年(昭和48年)には『いんなあとりっぷ』(仏の世界社)で「鬼太郎とねずみ男」の連載が始まる。このシリーズは短期連載で終わるが、風刺色の強い作品でありオールカラーで描かれた。

1974年(昭和49年)には描き下ろし長編『死神大戦記』が学習研究社から「日本の妖異」シリーズとして上・下巻で発行。『往生要集』を下にした作品であり、宮田雪が脚色担当として参加している。今作は「その後のゲゲゲの鬼太郎」の続編として描かれ、水木しげると共に鬼太郎が地獄を舞台にして妖怪と戦うストーリーである。

1976年(昭和51年)には『週刊少年アクション』(双葉社)で「鬼太郎の世界お化け旅行」の連載が始まり、鬼太郎ファミリーが世界の妖怪を相手に活躍する姿が描かれた。なお、今作の鬼太郎は野球帽を被っている設定。また、1976年から1977年(昭和52年)に掛けては「鬼太郎対悪魔くん」、「妖怪ロッキード」などの、単発の読み切り作品も幾つか発表された。

そして、1977年から1978年(昭和53年)に掛けては『週刊実話』(日本ジャーナル出版)での連載が約1年半続く。同誌では3作品が発表され、1作目は「続ゲゲゲの鬼太郎」を連載。高校生になった鬼太郎の話であり、これまでのチャンチャンコをやめて縞模様のセーターを着用している。鬼太郎シリーズの中では特に異色作であり、内容的には青年向けに描かれている。当時の『週刊実話』編集者によると、かつて子供が人気を支えた鬼太郎を青年誌に連載することには不安があったようであるが、「当時の水木ファンたちは今や大学生や社会人になっている。読者もきっと分かってくれるはずだ」という意見もあり、鬼太郎を大人の世界で活躍させることになったという[8][9]。また、当時の水木はこれまでのヒーロー的な鬼太郎からの脱却を試みていた背景もあり、この話にかなり意欲的に取り組んでいる[10]。しかし、後に水木は「鬼太郎にセックスを持ち込んだのは失敗だった」と回想しており[11]、『週刊実話』2作目の「新ゲゲゲの鬼太郎 スポーツ狂時代」では軌道修正を行っている。今作は、超能力を奪われた鬼太郎が相撲界で活躍する「相撲の巻」、墓の下高校の野球部に入部した鬼太郎が妖怪チームで甲子園を目指す「野球狂の巻」の2話で構成された水木独特のスポーツ漫画である。そして、『週刊実話』3作目の「新ゲゲゲの鬼太郎」では再び軌道修正が行われ、かつてのような少年姿の鬼太郎が妖怪と戦う姿が描かれている。また、SFの要素が加わったことで宇宙人との対決が多くなり、青年向けの描写は控えめになっている。なお、1977年は『週刊実話』の連載と同時期に『漫画サンデー』(実業之日本社)で「ゲゲゲの鬼太郎 挑戦シリーズ」の連載も始まっている。今作は「UFOの秘密」、「太古の秘密」、「地上絵(ナスカ)の秘密」の3話構成で、『週刊実話』同様に青年向けの作品となっている。この時期の鬼太郎シリーズは当時の雑誌にて、総じて迷走していたように「何処へ行く鬼太郎」などと特集されてもいた[12]

その後は『週刊少年マガジン』での読み切り作品「海坊主先生」を挟み、1980年(昭和55年)に『月刊DONDON』(日本ジャーナル出版)の短編漫画「大ボラ鬼太郎」を短期連載する。そして同年、『月刊少年ポピー』(少年画報社)で「雪姫ちゃんとゲゲゲの鬼太郎」の連載が始まり、再び少年誌で鬼太郎が描かれる。今作は鬼太郎の妹・雪姫をメインにした作品であり、雪姫が登場する唯一の作品である。不思議な力で鬼太郎のピンチを救うなど徐々に成長する雪姫だったが、掲載誌の廃刊により連載は終わってしまう。
その後の動向新レギュラーとして登場した「シーサー」/ 画像は水木しげるロードに設置されている小さな青銅オブジェ

1980年(昭和55年)以降も、総じて1980年代前半は低迷気味であったものの、1971年(昭和46年)に放送されていたアニメ第2シリーズが地方でも夕方に再放送を繰り返し、また、夏休みや冬休みにも午前中にアニメ第2シリーズの再放送が定番化されるなど、完全に人気が衰えることもなく、当時の子供たちの間でも鬼太郎の存在は認知されていた。そう言った状況を経た80年代半ばの1985年(昭和60年)夏に、フジテレビの「月曜ドラマランド」で実写版『ゲゲゲの鬼太郎』が放映され、同年の10月からはアニメ第3シリーズが開始することとなった。玩具メーカーや出版社とのタイアップ、原作の現代風アレンジなどで、本シリーズは大人気を博し、鬼太郎の作品としての知名度は1960年代1970年代以上に一気に上昇した。漫画作品はアニメ化に合わせて『コミックボンボン』(講談社)で「最新版ゲゲゲの鬼太郎」の連載が開始。妖怪の総大将ぬらりひょんと鬼太郎ファミリーとの対決色を前面に出した作品であるが、今作は水木自身の筆ではなく水木プロによる作画作品である。なお、単行本は第20話までを収録した第4巻まで発行されたが、21話以降を残し発行は中断。現在(2020年時点)、単行本は絶版し復刻などもされていない。

その後、『週刊少年マガジン』で「新編ゲゲゲの鬼太郎」の連載も始まる(タイトルの『新編』は単行本化の際に付けられた。)。一時期迷走していた鬼太郎シリーズであるが、鬼太郎が毎回新たな妖怪と対決する従来の路線に戻したシリーズであり、アニメ同様に仲間の妖怪たちの活躍が増えたシリーズでもある。また、このころには新レギュラーとしてシーサーが登場する。アニメ版が長期化したことから、掲載されたばかりの新作も逐一アニメ化されていき、シーサーもアニメレギュラーキャラクターとして取り上げられた。そして、約1年後には掲載誌を『月刊少年マガジン』(講談社)へ移し、「ゲゲゲの鬼太郎 鬼太郎地獄編」が連載された。鬼太郎たちが地獄へと旅する物語であり、鬼太郎の母や、ねずみ男の一族も登場する。

アニメ終了後も以前第3シリーズの再放送が繰り返されて人気は衰えず、1990年平成2年)からは『コミックボンボン』で「鬼太郎国盗り物語」の連載が始まり、1992年(平成4年)からは『デラックスボンボン』(講談社)へ掲載誌を移行。地上侵略を狙う地下帝国ムーとの戦いを描いており、勧善懲悪のわかりやすいストーリーながら、当時のバブル時代の社会風刺を上手くからめた作品となった。これを機にボンボン版を元にした前第3シリーズの続編としての4度目のアニメ化の話が持ち上がり『テレビマガジン』(講談社)でも特集や絵物語の連載が始まったが、諸般の事情によりアニメ化は流れた。

1996年(平成8年)、子供たちの間に学校の怪談ブームが起こったことを機に、再び原点回帰にアレンジされた4度目のアニメ化が実現した。


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