ゲオルギオス・ゲミストス・プレトン
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『アリストテレスとプラトンの相違について』

プラトンとアリストテレスの神の概念について比較して、プラトンは神を「思惟されるものと個別的実体の様々な種類、つまり全宇宙の創造者」としてより偉大な力を持ち、対してアリストテレスの神は宇宙の動力としてだけである。プラトンの神は存在するものの目的と終極であるが、アリストテレスの神は運動変化の目的であるのみと述べる。プレトンはアリストテレスは重要でない事柄、たとえば貝や胚子などについて議論するが、宇宙の創造する神の信頼を欠いていると嘲った。それは彼は天界は第五の元素で構成されていると信じており、観想(テオーリア)が最大の喜びであるという見解を持っていたからだった。プレトンはそれはエピクロスの見解と同様であると主張し、彼が怠惰であると批評した修道士らの持つ見解と同じものと見なした。後にゲンナディオス2世の『アリストテレスの弁護』に応えて、プレトンはプラトンの神概念のほうがアリストテレスのものよりもキリスト教と一致していると主張した。これはダリアン・デボルトによれば部分的に異端の疑いを避けるためだったとする。
『法律篇』

“私自身がフィレンツェで聞いたことだが、プレトンは『あと数年で全世界が一つの心、一つの知性、一つの教えで一つの宗教を受け入れるであろう』と断言した。そこで私は彼に質問した。『それはキリスト教でしょうか?それともムハンマドの?』彼は答えた。『いや、どちらでもなく、その宗教はかつての異教と変わりのないものだろう』。私はその言葉に衝撃を受け、彼を嫌悪し、毒蛇のように彼を恐れるようになった。それで後には彼に会うことも聞くこともないようになった。そしてプレトンが死の前に『私の死後幾年も経たぬうちに、ムハンマドもキリストも崩壊し、真理が地球上のどこにでも輝くようになるだろう』と語っていたと、ペロポネソス半島から逃れてきた多くのギリシャ人たちから私は聞いた。” ──トレビゾンドのゲオルギオス『法律篇』を焼却してしまったコンスタンティノープル総主教ゲンナディオス2世

彼の死後、『法律篇』(Ν?μοι)が発見され、それはモレアス専制公デメトリオスの妻テオドラの所有となった。テオドラはその写本をスコラリオス、当時コンスタンティノープル総主教ゲンナディオス2世に送った。彼はそれを返却し、破棄することを助言した。モレアスはオスマン帝国メフメト2世の侵略を受けて、テオドラはデメトリオスと共にコンスタンティノープルへ逃れた。テオドラは著名の学者の遺作である唯一の写本を自身で破棄する気にはならず、ゲンナディオス2世に写本を再び渡した。彼は1460年にそれを焼却したが、総主教代理ヨセフへの手紙に本の詳細を述べ、目次と内容の簡単な要約を記した。それはストア派哲学ゾロアスター教的神秘主義の融合のようなもので、占星術、悪魔学、霊魂の行く末について論じている。プレトンは普遍的原理や諸惑星の諸力と見なした古典的なゼウスなどの神々への宗教儀礼や嘆願などを勧めた。神々の類である人間は『善』へと向かわなければならない。プレトンは宇宙には時間的な始まりや終わりもなく、存在は完全なるものとして造られ、何も付け加えるとものはないと信じた。彼は邪悪の短い支配の終焉の後に続く、永遠なる幸福という概念を否定し、人間霊魂は、神々によって神聖な秩序を実現するために連続的に体に生まれ変わり、この聖なる秩序は蜜蜂の組織、蟻の先見性、蜘蛛の器用さ、植物の生長、磁力、水銀と金の結合などを支配していると信じた。プラトニズムの解釈に従って東ローマ帝国の構造と哲学を根本的に改革するために、この『法律篇』において計画を立てた。新しい国家的宗教には、合理主義や論理などを取り入れ、当時流行していたヒューマニズムの考えに基づき、かつての異教の神々のパンテオンが設置されることになっていた。この計画のためにオスマン帝国に対する西ヨーロッパの支持を得るために、西方・東方教会の和解を支持した。より実践的な直ちに行える計画として、1423年にオスマン帝国によって破壊された、コリント地峡の古代の防御壁であるヘクサミリオンの再建を提案した。

全3巻100章からなっており、16章とわずかな断片しか現存していない。性道徳については厳しく、姦通に問われた女性は頭を剃られて売春婦として生きなければならず、強姦・同性愛・獣姦を行った者は罰として特別な場所で焼かれる。犯罪者の墓地は一般とは別に分けられるべきであると主張した。『法律篇』においてピタゴラス、プラトン、クレテス、ゾロアスターの教説を他のものよりも優れているとした[1]
『要約』

プレトン自身による『法律篇』の大要は、彼の学生であったベッサリオンが所持していた写本の中で生き残ることができた。『ゾロアスターとプラトンの教義の要約』と題されたこの書は、不可分割の状態ですべての存在を内包するゼウスを最高主権者とする神々のパンテオンの存在を明確にする。そこではゼウスの母なき長子としてポセイドンは天界を造り、宇宙の秩序を整える。ゼウスの他の子らにはオリンポスやタルタロスの神々など母なき“超天体的”神々の隊列を含んでいる。これらの中でヘーラーは、不滅の物質の創造者にして支配者にして、ゼウスによって天界の神々、半神や諸霊の母であり、ポセイドンに次いで第三の序列に配されている。オリンポスの神々は天界において不滅の生きるものを支配し、タルタロスのもの、死すべきものたち以下は彼らの長クロノスがすべてを支配する。天界の神々で最も年老いたものはヘーリオスで、天の主人であり、地上のすべての生きるものたちの命の源である。神々は善悪問わずにすべての生きるものを神的秩序へと導く。プレトンは宇宙の創造は完全であり、時間の外にあると説明している。それで宇宙は始めも終わりもなく永遠に留まる。人間の霊魂は神々のように不滅であり、本質的に善であり、神々の指示の下、永遠に肉体に生まれ変わる。
脚注[脚注の使い方]^ a b c d e 『ビザンツ 驚くべき中世帝国』ジュディス・ヘリン、白水社、2010年。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4-560-08098-6


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