グローバリゼーション
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これ以後、反グローバリゼーション派は重要国際会議に押しかけては反対行動を繰り返すようになった[10]

2015年ごろには、「反グローバリゼーション」なかんずく「グローバル資本主義への嫌厭」を掲げる党派が世界で躍進している。「グローバリゼーション」と「無規制資本主義」の総本山であるアメリカ合衆国で、「社会主義者」を自称するバーニー・サンダースがアメリカ大統領予備選で指名争いを演じ(2016年冬 - 初夏)、保護主義を掲げるドナルド・トランプがアメリカ大統領選挙で勝利したこと(2016年11月8日)が、その象徴的な出来事である。アメリカ以外でも、ジェレミー・コービン(イギリス労働党党首、2015年9月就任)やジャン=リュック・メランション(フランス)などが、反グローバリゼーションを掲げて躍進している。こうした反グローバリゼーションの動きは、しばしば対立軸としてのナショナリズムの隆盛をもたらした[11]。これは、グローバリゼーションによって社会の急激な変動や不安定化、格差の拡大などで被害を受けた人々が自国の文化にすがって他の文化に敵意を向ける、いわゆる排他的ナショナリズムにもつながっている[12]

2020年新型コロナウイルスの感染拡大を止めることができず、パンデミックに至ったことで、世界各国で入国制限が開始されることとなり、世界経済の前提にあったグローバリゼーションが破壊されてしまった。このパンデミックを契機として世界中でナショナリズムが発露し、無制限なグローバリゼーションの問題点が人類全体で意識されるようになった[13]
徴候

グローバリゼーションの傾向が認められる現象は多くあるが、現代の「グローバリゼーション」では、
第二次世界大戦後に地球規模化した現象

世界恐慌最中の1930年代前半に失われたが、現在に復活している現象

米ソ冷戦終結後の1990年代に地球規模化した現象

の3つの流れがある。これらの現象には、ヒト・モノ・カネと情報の国際的な流動化が含まれる。また科学技術、組織、法体系、インフラストラクチャーの発展がこの流動化を促すのに貢献した。一方で、さまざまな社会問題が国家の枠を超越し、一国では解決できなくなりつつある。「自由貿易#自由貿易の問題」および「アジア通貨危機」も参照
経済的グローバリゼーション

経済的グローバリゼーションとは、物資、サービス、技術、資本の国境を越えた移動が急激に増加することによって、世界中の国民経済が経済的に相互依存することである[14]。経済的グローバリゼーションは、世界貿易を抑制する関税や税金、貿易規制などの障害を減少させる一方で、国家間の経済統合を増加させ、グローバル市場または単一の世界市場を出現させることとなる[15]。論者の視点に応じて、経済のグローバリゼーションは肯定的にも否定的にも見ることができる。経済的グローバリゼーションにはさまざまな要素が含まれる。生産のグローバル化は、コストと品質の違いから利益を得るために、世界中のさまざまな場所にある供給元から商品やサービスを取得することを意味する。同様に、市場のグローバル化はさまざまな別々の市場を巨大なグローバル市場に統合することと定義される。

現在のグローバリゼーションは、外国直接投資を含む資本の国際的流動の増加、貿易障壁の低下、その他の経済改革、そして多くの場合は移民によって、先進国が発展途上国と統合しつつあることがおもな原因となっている。グローバリゼーションが深化する前は、アメリカ合衆国は世界の輸出において不可欠なまでの経済力を保持した覇権国家だった。しかし、グローバリゼーションの到来後、ドイツ、日本、韓国、中国はアメリカの立場に挑戦する重要な競争相手となった[16]。日本では2010年代に入る前後から、かつてコスト削減や利益を増やすために中国企業に積極的にノウハウを教えた日本の企業が、逆に中国企業に買収される動きも出ている[17]

グローバリゼーションの深化には、情報通信技術の発達が大きな役割を果たしている。すでに航空海運、それに道路鉄道の改良や海上コンテナの導入によって物流の効率化が進み物流ネットワークの発達が始まっていたが、1980年代後半以降事務の電算化や通信衛星の利用が始まり[18]、1990年代後半のインターネットの発達によって情報の迅速な交換が可能となり、遠隔地間の情報伝達コストが大幅に下落した[19]。このため世界で最適な調達・販売を行うサプライチェーン・マネジメントが発達を遂げ、これと国際資金移動および国内金融市場の規制緩和によって資金移動が容易になったことが、多国籍企業の成長と世界経済の支配割合の高まりをもたらした。
文化的グローバリゼーション

社会的・経済的交流の増加に伴い、異文化間の文化の交流も増加した。これに伴い、各国では他国文化の流入が起きて多様性が増大し、さらに在来の文化と異文化との融合によって新たな文化が生まれる一方で、流入する異文化とはだいたいにおいて有力な文化、特にアメリカを中心とした文化であり、アメリカナイゼーションをはじめとする文化の画一化による文化差異の減少も顕著となっている。食文化においては、世界各地で気候風土や現地文化に即した独自性の高い文化が世界各地で育まれていたが、1990年代以降流通や情報技術の発達によって食品系企業の世界展開が起きて急速に標準化が進みつつあり、全体として差異は縮小する傾向にある[20]
政治的グローバリゼーション

政治的グローバリゼーションはまず、これまで国際政治の主役だった国家のほかにもさまざまな組織が台頭してきたことで説明される。


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