2008年6月20日、東京地検は「グリーンピース・ジャパン」から業務上横領容疑で告発されていた「日新丸」乗組員12人全員を不起訴処分(嫌疑なし)とした(同日には窃盗容疑でグリーンピース・ジャパンメンバー2名が逮捕され、本部が家宅捜索されている(下記参照))。これに対してグリーンピース側は上記不起訴処分を不服として検察審査会を申し立てていたが、2010年4月22日に東京第一検察審査会が「不起訴は相当」とする議決を下した[60]。 捕鯨関係者を告発するあたってグリーンピース・ジャパンが提示した証拠のクジラ肉は上掲の「告発レポート[61]」やYouTube投稿映像[62]にあるとおり、「日新丸」乗組員が送った個人の荷物のひとつを、グリーンピース・ジャパン関係者が宅配便運送会社の西濃運輸の配送所から盗み出したものである。 グリーンピース・ジャパンは、この調査方法を認めた上で「重大な横領行為の証拠を入手するためであり、違法性は無い」と正当性を主張している。しかし、グリーンピース・ジャパンは国家公認の捜査機関ではなく、国法に基づく正式な令状をも持ち得ないため、独自判断で物品を押収する事は合理性を欠く盗取となる。そして、一般市民の立場のまま西濃運輸の車両を追跡し、伝票を確認した上で「計画的に」倉庫に侵入し窃盗を行った事から、「不法領得の意思」があるとはいえ、グリーンピース・ジャパンに正当性および違法性阻却事由は皆無と言える。 法曹関係者の間では本件について西濃運輸青森支店への不法侵入・荷物の窃盗・西濃運輸に対する業務妨害などの犯罪に問われる可能性もあることが指摘され、2008年5月15日に放送された『スーパーモーニング』に出演した弁護士は「窃盗に当たる」と断言した。番組では、アメリカ合衆国において人工中絶に反対する団体が人工中絶を実施しているクリニックを襲撃している事例を引き合いに、窃盗という違法行為を正当化するグリーンピースの悪質な姿勢を「非常に危険である」とした。 2008年5月16日に西濃運輸は青森県警に対して被害届を提出した[63]。これを受けて青森県警は窃盗容疑で捜査を開始した[64]。調査捕鯨船運航会社の共同船舶も、早ければ5月19日にも窃盗容疑でグリーンピース・ジャパンを告発することを検討していると報じられた[65]。これらの動きに対して、同日にグリーンピース・ジャパンは記者会見を開いて、西濃運輸に対しては「迷惑を掛けたならお詫びしたい」と謝罪した[59]。 2008年6月20日、青森県警と警視庁公安部はグリーンピース・ジャパンが組織的に計画し肉を盗み出したとみて、実行に関与した東京都と神奈川県に住む同団体幹部2人[注 9]を窃盗および建造物侵入の容疑にて逮捕し、東京の事務所など関係先数カ所の家宅捜索を行った。なお同日にはグリーンピース・ジャパンが捕鯨関係者を業務上横領で告発したことに対して東京地検から不起訴処分が下されている。 2008年7月11日、青森地検が同年6月20日に逮捕されたグリーンピース・ジャパンの幹部ら2人を窃盗と建造物侵入の罪で青森地裁に起訴した。 同年7月15日にグリーンピース・ジャパンは保証保釈金400万円を払い両被告は保釈された。 2010年9月6日、青森地裁は窃盗などの罪で、2名のグリーンピースメンバーの被告に対して、懲役1年、執行猶予3年(求刑・懲役1年6ヶ月)の有罪判決を言い渡した[66]。これに対して被告側は仙台高裁に控訴したが2011年7月12日に棄却されたため最高裁への上告は断念し、2011年7月27日に被告2名の懲役1年・執行猶予3年の有罪判決が確定した。
グリーンピース・ジャパンメンバーの逮捕・起訴と有罪判決
脚注[脚注の使い方]
注釈^ なお、同年11月のグリーンピース・インターナショナルの会議に参加したのは、カナダ・アメリカ・フランス・ドイツ・デンマーク・イギリス・オーストラリア・ニュージーランド・オランダの9カ国のグループの代表だったとされる。
^ なお、グリーンピース・ジャパンによると、グドムンドソン氏は米国のクー・クラックス・クランなど極右勢力との繋がりが取りざたされる人物であり、裁判の結果彼はノルウェーでは名誉毀損でグリーンピースへ賠償金支払いを命じられ、ドイツ、ニュージーランドでは彼のドキュメントフィルムはオンエア禁止になっているとの事である。小学館「SAPIO」1995年5月24日号「「黒い献金」「やらせキャンペーン」・・・・・・なぜグリーンピースに疑惑が噴出するのか」
^ 当時のレート、1ドル=103円で計算