グリニッジ標準時
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1921年にこの変更に関して、変更前と同様に G.M.T.(グリニッジ平均時)と呼ばれると混同する事があり不都合であるとして、トリニティ・カレッジ教授ヘンリー・プラマーなどは正子から数える時を G.C.T.(グリニッジ常用時、Greenwich Civil Time)または G.S.T.(グリニッジ標準時、Greenwich Standard Time)と記すべきであると主張した。これに対して、グリニッジ天文台長のダイソンは、既に一般社会では G.M.T. が正子から始まる時刻として定着しており、航空省気象電報を発するときに用いる G.M.T. も正子に始まる時刻であるし、またイギリス陸軍が24時間制を採用[18]して以来午前と午後の代わりに呼ぶ時刻はグリニッジ平均時であるとして一蹴した。パリ天文台ギヨーム・ビゴルダンは、「天文学者が誤解のおそれがあるときは G.M.T. (Civil) と書くことができるし、一般市民が正子から始まると信じているのに天文学者が、それは正午に始まると規定したのだと力んでもしかたがない。単に衒学的だと失笑されるだけだ。G.C.T. や G.S.T. などはよくない(G.S.T. は夏時間と間違う)」などと反論していた[2]

その後、1922年5月にローマで開かれた第1回国際天文学連合 (IAU) の決議によって、プトレマイオス以来、千数百年間にわたって慣用されてきた天文時を1925年1月から万国一斉に廃止し、12時間繰り上げて正子に始まる常用時を天文学でも用いるようになった[19]

ただし、ユリウス日については、1925年以降もその始まりを正午とし続けていることに注意が必要である。
世界時の成立詳細は「世界時#歴史」を参照

1925年国際天文学連合 (IAU) 第2回会議で、従来までの正午からの G.M.T.(グリニッジ平均時)と区別して、正子から始める時に別の名称をつける提案が議題となり賛否の意見が闘わされる。しかし、会議では呼称については未定で、ユリウス日 (JD) は正子から始めずに正午から始めることになった[20]。その後、1928年の国際天文学連合 (IAU) 第3回総会で、「用語 グリニッジ常用時(: Greenwich Civil Time (G.C.T.))、および世界時は正子より計るグリニッジ時を明確に示す」ことが決議された。天文学者はどちらの意味でも G.M.T. の語を使用しないことが勧告され、特にグリニッジ正午より計った時を用いることを望む場合は、グリニッジ平均天文時(: Greenwich Mean Astronomical Time (G.M.A.T.))とすることなる[21][22]。さらに1935年の国際天文学連合 (IAU) 第5回総会で、正子から数えるグリニッジ平均時 (G.M.T.) に、「世界時」を国際的に使用することを採択し、将来はグリニッジ常用時 (G.C.T.) という用語を使用しないことが決議された[23][24]。そして、1948年の国際天文学連合 (IAU) 第7回総会では、第4委員会(天文暦部)は、天文学者がグリニッジ正子より起算した平均太陽時を示す際に、名称「世界時」だけを使用することを勧告する[25][7]。こうして、天文学者が使用する用語はグリニッジ平均時から世界時に移行したが、一般市民は常用時としてグリニッジ平均時の語を引き続き使用する。
協定世界時との関係

1970年に英国ブライトンで開催された国際天文学連合 (IAU) 第14回総会において、第31委員会(時)の決議で採択された勧告6.2で、用語“G.M.T.”および“Z”は、航法通信の分野で協定世界時 (UTC) と一般的に同義語として認められる[3][4]

1972年1月1日からは、一般市民が使用する常用時としてのグリニッジ平均時 (GMT) は協定世界時 (UTC) として定義されており、閏秒の挿入または減算による現行の調整方法が採用されている。

なお、1976年グルノーブルで開催された国際天文学連合 (IAU) 第16回総会において、第4委員会(暦)及び第31委員会(時)の共同決議第1号で、グリニッジ平均時 (GMT) と世界時 (UT) の使用に関する明確化の望ましさを考慮し、GMT と UT は時刻の最大精度整数秒である法令、通信、常用その他の目的では UTC の意味で使用されること、また、GMT と UT は天測航法及び測量におけるの独立引数としては世界時の UT1 の意味で引き続き使用されることを指摘した。これらを踏まえて、UT0、UT1、UT2 および UTC の区別が必要ない場合には、それらの代わりに UT が使用され得ることを認める一方で、GMT は適切な名称に置き換えられることが強調される[5][6]
イギリスの標準時ヨーロッパの時刻帯:青 - GMT または西ヨーロッパ時間、赤 - 中央ヨーロッパ時間、黄 - 東ヨーロッパ時間、緑 - モスクワ時間

標準時の考え方、すなわち地方全体で共通の基準時刻(基準地点の平均太陽時)を用いる仕組みは、イギリスで鉄道敷設の発展とともに、「鉄道時間」として生まれた。ロンドンの時刻であるグリニッジ平均時がこれに用いられた。

現在、イギリスの標準時は、UTCそのもの(UTC+0)を採用しているが、現在でも伝統を守ってグリニッジ平均時(Greenwich Mean Time)と呼ばれている[注釈 3]。また西ヨーロッパ時間 (Western European Time、WET)とも呼ばれる。

Wikipediaの夏時間のページ冒頭の地図で濃い青色に塗られている国では、夏季には時間を1時間進めるサマータイムというものを行なっている。イギリスではこの時期の時間を英国夏時間(British Summer Time、BST)、アイルランドではIrish Summer Time(IST)と呼ぶ。薄い青色で塗られている国(アイスランド)では一年中 UTC/GMT/WET を用いる。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 日本ではグリニッジ標準時と不正確に訳されることが多い。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}最近は見かけないが[独自研究?]、大正から昭和初期の頃まで緑威平均時、緑威平時などとも表記された[1][2]
^ 基準となる本初子午線IERS基準子午線へ変更されている。
^ イギリスの標準時は、1968年2月18日1時(UTC)から1971年10月31日2時(UTC)までの全期間は、1時間早いUTC+1を用いていて、これを英国標準時(British Standard Time、BST)と呼んでいた。

出典^ 海軍省水路部『航海年表』水路部、東京、1928年5月。全国書誌番号:.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}20977090、NDLJP:1900107。


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