中枢神経系においてグリシンはGABAに次いで重要な抑制性神経伝達物質である。今のところグリシンの受容体として知られているものは全てイオンチャネル型であり、グリシンが結合すると内蔵しているCl−チャネルの透過性が増えてCl−が細胞内に流れ込み抑制性シナプス後電位(IPSP)を発生させる。痙攣誘発剤であるストリキニンはグリシン受容体に対する特異的な阻害薬である。一方で、興奮性神経伝達物質としての役割も知られている。グリシンはNMDA受容体に存在するグリシン結合部位に作用し、チャネルの開口を補助する。グリシン受容体に対しては約100uM, NMDA受容体に対しては約100nM?1uMのED50を示すとされている。
葉酸の触媒過程の全容において、平衡がテトラヒドロ葉酸側に偏っており、テトラヒドロ葉酸から5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸を供給するグリシン開裂系は葉酸系の代謝過程で重要な役割を果たしている。 高グリシン血症は、脳や肝臓に存在するグリシン開裂系の酵素の遺伝的な欠損により、体液中や脳にグリシンが大量に蓄積することにより発症する先天性アミノ酸代謝異常症の一つである。グリシンは中枢神経系で神経伝達物質として働くため、グリシン蓄積が重篤な神経障害をもたらす[10]。 工業的な製造方法では、ホルムアルデヒドとシアン化水素とアンモニアからアミノアセトニトリル(グリシノニトリル)を合成し、これを水酸化ナトリウム等で加水分解してグリシンの金属塩を製造した後、硫酸等の酸で中和するストレッカー法、ホルムアルデヒドとシアン化水素からグリコロニトリルを合成し、これとアンモニアと二酸化炭素とを水の存在下にて反応させることによりヒダントインを製造した後、加水分解により製造するヒダントイン法が知られている[11]。静菌作用があり、日持ち向上剤に使われるほか[12]、ブロイラーの生産性向上を目的とした飼料添加物[13]、グリシンを主成分として睡眠の改善効果を謳った機能性表示食品も市販されている[14]。 グリシンは、肝臓に含まれる転移酵素のグリシン-N-メチルトランスフェラーゼ (GNMT) によってS-アデノシル-L-メチオニン (SAM) を分解する。
高グリシン血症
工業的な製造と利用
メチオニン削減・長寿効果
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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