グラファイトが剥がれて厚さが原子1個分しかない単一層となったものはグラフェンと呼ばれ、金属と半導体の両方の性質を持つ。
素材としては、地中鉱物として得られる天然グラファイトと、コークスにタールやピッチを加えて練和・成形・焼成・超高温結晶化処理して得られる人造グラファイトに分けられる。
天然グラファイトの採掘は、中国、スリランカのサバラガムワ、メキシコのソノラ、カナダのオンタリオ州、北朝鮮、マダガスカル、アメリカのニューヨーク州などで商業的に行われている。日本でも、かつて富山県で千野谷黒鉛鉱山が稼働していた[3]。 硬筆(鉛筆やシャープペンシルの芯)に使われることから石墨(せきぼく)の和名を持ち、鉱物名として使われることが多い。 構造上、α黒鉛とβ黒鉛が存在し、両者の違いは黒鉛層構造の重なり具合の違いである。通常見られる黒鉛は、ほとんどがα黒鉛である。 同素体にダイヤモンド、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンがある。 常温、常圧ではダイヤモンドより、このグラファイトの方が安定な相 (Phase) である。しかしながら、ダイヤモンドとの間には、乗り越えるべきエネルギー差が非常に大きいため、普通の状態ではダイヤモンドからグラファイトになる(構造相転移)ことはない。 グラファイトの特性として、耐熱性、自己潤滑性、導電性、熱伝導性、耐酸性、耐アルカリ性に優れている上に、アルミニュームより比重が小さく熱膨張率が小さい。これらの特性を要する多種多用な用途・製品に用いられている。 歴史的な産業利用は16世紀前半にイギリスの湖水地方で発見された石墨鉱床が最初で、長い間鉛筆を製造したが、その他にも耐火物質として、製鉄やイギリスがスペイン無敵艦隊を撃破した16世紀後半には、砲弾の鋳型に使われた。また、粘土などと混合させたうえで鉛筆の芯としても利用される。またガスケットとして、耐熱性が求められる場合や、軸受など潤滑と気密の役割を同時に持たせる場合に用いられる。
別名
元素分析以前には鉛を含むと思われており、ラテン語で鉛を意味する plumbum に由来する plumbago と呼ばれていた。このため、英語で black lead 、日本語でもこれを直訳して黒鉛(こくえん)とも呼ぶ。ただし、実際には鉛はまったく含まれていない。グラファイトという名は、それが判明したのち、plumbago という名が不適切とされたことで提案されたものである。
構造
用途
原子核物理学分野
軽水には劣るが中性子を減速でき、中性子の吸収も少ないので、世界最初の原子炉「シカゴ・パイル1号」では減速材として使用された。現在でも黒鉛炉の減速材として使用されている。
工業分野
潤滑剤
黒鉛粉末は油分を含まないながらも潤滑性と導電性を有するため、埃が溜まりやすいゆえに多量の油分の使用が望ましくない箇所の潤滑に単独で用いられることもある。身近な例では、室内向けキーシリンダーの潤滑材に指定されている場合があり、電子機器のコネクタの接点復活剤や電子基板のパターンを補修する用途に用いられる場合もある。特に比較的高荷重な部位に用いるオイルやグリースなどへ固体潤滑剤として黒鉛粉末が添加される場合もあり、似た特性を持つ二硫化モリブデンと併用して添加されることも多い。
Size:31 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef