グライダー
[Wikipedia|▼Menu]
水は着陸前に放出する。自重は1人乗りで260kg、2人乗りで380kgが代表的なところ。エンジンは数十kgの加算となる。エンジン・プロペラを展開した状態のエンジン格納型グライダー

無尾翼可変翼のグライダーも試作されている。米国では個人製作の機体も一時盛んであった。日本国内でも東北大学のクラブなどで製作されたものがある。計器は速度、高度、コンパスに加えて滑り(機体と気流が相対する方向と、機首の指す方向が一致していないこと。こうなると抵抗が大きくなる)を見るための毛糸をキャノピーに貼るのが基礎である(この毛糸が常に機体の軸線と一致するように操縦すれば滑りがないということになる)。これに加えて周辺大気の上下動を知るために飛行機のものよりも複雑な昇降計が装備される。また初期訓練機以外は記録飛行や競技のためにグライダー専用のGPS表示・経路記録装置と滑空距離計算コンピューターを装備している場合が多い。無線機としては従来は短波のグライダー周波数無線機が用いられてきたが、現在[いつ?]は航空用VHF無線機が殆どとなった。3,000m以上の高高度の飛行のためトランスポンダーや、酸素供給装置を装備した機体も増えてきて[いつ?]いる。

滑空機はかつてゴムによるカタパルト打ち出し式の初級滑空機(プライマリー)、ウィンチ使用の中級滑空機(セカンダリー)、ウィンチに加えて飛行機曳航のできる上級滑空機(ソアラー)に分けられた時代もあったが、日本国内では1980年代以降初級・中級機の日常的運航は行われなくなり、21世紀の日本では法規上は滑空機の機体検査(耐空証明)について曲技A、実用Uの区別があるのみである。動力滑空機(曳航装置ありとなしの2種)についても曲技A、実用Uがある。

グライダーは一般的に飛行機より強度が高く、1人乗りで荷重倍数+5G、-2.5G程度が典型的である。グライダーをトレーラーから出して翼を胴体に取り付けているところ(板倉滑空場)グライダーを入れたトレーラーを自動車で移動

曲技用の機体は+7G?+10G程度の強度があり曲技飛行機に比べて同等以上の高強度である。専用機では超過禁止速度が300km/h程度と一般的な機体の250?280km/hよりも速くなっている。日本国内では日本飛行機/Pilatus B4金属機が(本来は距離飛行用であるが)普及している。

ヨーロッパでは草地に格納庫を建ててグライダーを組み立てた状態で保管している場合が多いが、米国や日本では翼を抜いてライトトレーラーに格納している場合が多い。純滑空機は毎日組み立て・分解が可能な設計となっているものが殆どである。1人乗りでは2人で15分程度で作業ができる。距離飛行で野外に着陸した際に、その場所から飛行機曳航での離陸ができない場合はトレーラーを引いた車で回収する。
操縦

グライダーには飛行機と同様一般に補助翼方向舵昇降舵の3舵があり、操縦桿とペダルの操作により姿勢を変える。操縦桿を前後に動かすことで昇降舵により機首の上げ下げ(ピッチング)を、左右に動かすことで補助翼により機体の左右の傾き(ローリング)を、2つのペダルの踏み分けることで方向舵により機首の左右の振り(ヨーイング)をコントロールする。速度はピッチによって決まる。着陸の際は一定の速度を保ちつつ着陸点を狙う必要があるため、ダイブブレーキ(またはスポイラー、エアーブレーキ)を使用して着陸点への降下角を調整する。

上昇気流を捉えることができないと1回の飛行時間はウィンチ曳航で数分間、飛行機曳航で15分間ほどである。初期の練習では学習効果等を考慮して、1時間を超えるような長時間飛行は行われないこともあるが、初単独飛行以後は、上昇気流をとらえる技術を磨きながら長時間滞空するようになってくる。一定の技量の目安としてのFAI技能賞銀章は滞空5時間、高度獲得1,000m、クロスカントリー飛行(距離飛行)直線50kmが基準である。
離陸ウインチ曳航による発航
長野市滑空場)ウインチ曳航中のグライダー
(長野市滑空場)飛行機曳航による発航(群馬県板倉滑空場)グライダーへの飛行機曳航索取り付け曳航機への飛行機曳航索取り付け

純グライダーは動力がなく自力では離陸できないため、ウインチ曳航、飛行機曳航により離陸する。日本国内でも以前[いつ?]は自動車曳航も行われていた。

ウインチ曳航は、グライダーに800?1,500mほど延ばした金属または化学繊維製のワイヤーロープを取り付け、これをエンジンまたは電動モーターにより動かされるウインチを使用して高速で巻き取る。それによりグライダーは急激に加速、上昇していく。最高高度(300?600mほど)に達したらグライダー側でフックを操作しロープをはずす。

飛行機曳航は、グライダーにロープを取り付け、これを飛行機により牽引することで、飛行機の上昇とともにグライダーも上昇していく。一定高度(600?900mほど)になった時点で、グライダー側でフックを操作しロープをはずす。
着陸

グライダーにおいて着陸は、その他の航空機と同様に最も危険な時である。全事故の80%が着陸時に起っている。ただし重大な事故は低空での失速によるものが主である。着陸には都合の良い位置と高度に適正な速度で戻ってこなければならないため、操縦上は降下角、軸線、速度を合わせるという操作が必要になる。高度が30m程度より低くなると地面との摩擦で風が弱くなるため失速に注意する必要があり、さらに低くなって翼幅くらいの高さになると翼の地面効果により空気抵抗が減って滑空比が大きくなる。接地する際には失速ぎりぎりの所で接地すると跳ね上がったり着陸滑走が長くなったりしないが、タイミングを誤ると数メートルの高さから落着することになる。
競技日本滑空選手権の発航前風景

スカイスポーツとして欧米では6月を中心にグライダー競技会が盛んに開かれる。200?1,000km程度の指定コースの平均速度を主に競う2年に1度の世界選手権には日本人も出場しているが成績上位者は英仏独に多い。国際競技会は FAIの規則が原則適用される。競技カテゴリーは参加者により一般、女子のみ、ジュニアと分かれ(国によりシニアもあり)、機体別に翼幅無制限(オープン)クラス、18mクラス、15mクラス、スタンダードクラス(15mクラスでかつフラップのないもの)、ワールドクラス(認定はPW-5の一機種のみ)、クラブクラス(15mクラスの機種で古いもの)に分かれている。日本選手権も開催されており120?280km程度のコースで実施される。

高性能機種はまず競技のための最新機として販売されるため規則の変更と共に生産される機体が変わってゆく。距離・速度競技とは別に、曲技飛行のカテゴリーとしてのグライダー曲技世界選手権もある。日本国内ではグライダー、飛行機とも定期的な曲技日本選手権は開催されていないが、イベントなどで時折披露される。

同立戦七大戦でもグライダー競技が行われている。
飛行場所「場外離着陸場」および「農道離着陸場」も参照

日本の滑空場は四国と沖縄を除き全国にある。広い平坦な用地を必要とするため河川敷を利用している場合が多く、利根川水系には目立って多い。飛行場自衛隊基地を利用している場合もある。日本の飛行団体は大学系と一般に分かれて各所にある。他国でも滑空場は空港とは別にあることが多い。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:69 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef