グライダー
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飛行機に比べ費用・法制度のハードルが低いため大学のクラブでも盛んに利用されている。またパイロットを目指す者が将来へ向けてグライダーから開始することもあるなど、初等練習機としての利用も多い。

事業用操縦士の規定はあるが、乗員は2名までで輸送業務なども許可されないため、現代ではスカイスポーツ (競技)のみに利用されている。
歴史

世界で初めてグライダーを構想、製作した者はジョージ・ケイリーであり、1853年のある日、自分の家の御者を乗せて初飛行を行った。御者の名前は残されていない[1]。日本では1909年12月9日相原四郎が竹製の複葉式グライダーで飛行に成功している。これは自動車で牽引したものであった[2]が、発動機に頼らないものとしては1925年3月21日群馬県佐野村の米穀商、馬場源八郎が手製のグライダーにより、無発動機による飛行を行った[3]

第二次世界大戦では、前線へパラシュート降下の訓練を受けていない兵士や車両、対戦車砲などを輸送するために飛行機で曳航する軍用グライダーが各国で使用された。日本でも 1944年茨城県の男子中等学校(29校)の正課(教科)の一つに「滑空」が位置づけられ[4]搭乗員の養成が行われた。
機体曲技世界選手権でも使われている、あらゆる曲技が可能な複座グライダー(Fox)

軽くて丈夫で製造しやすく、成形しやすい繊維強化プラスチック(FRP)製のモノコック構造のものが主流である。FRP以前は合板を加工して機体を形づくる木製構造や、鋼管羽布張りと呼ばれる鉄パイプの骨格を布で覆うことで機体を形づくる構造が主流であった。第二次世界大戦後でも日本の文部省がグライダーを奨励した時期もあり、日本国産機が国内の主要機だった時代もあるが、1980年代以降は日本国内生産がない。現在[いつ?]生産しているのは主にドイツと東欧である。ドイツでグライダーが盛んになったきっかけは第一次世界大戦後に軍用機に制限が加えられたためという(空軍パイロットの初期訓練によく使われた)。曲技も可能な複座グライダー(Twin III Acro)。訓練にも使われている。群馬県板倉滑空場にて撮影

外見で他の飛行機に対して最も際立った特徴となっているのが細くて長い主翼であり、揚抗比を大きくする形状となっている。アスペクト比(縦横比)は非常に大きく、旅客機が6?7程度であるのに対してグライダーは15?22程度となっている。この大きなアスペクト比によって翼に発生する誘導抵抗が小さくなることにより、最新[いつ?]の旅客機で揚抗比(滑空比)が20程度であるのに対し、日本国内で使用されているグライダーでは28から60程度の滑空比を実現している。これはつまり高度1,000mから飛行を開始し高度0mになるまで無風で28kmから60kmの距離を滑空することができるということである。滑空比は訓練用の2人乗りのもの(ASK 13ASK 21など)で28?38、1人乗りのもので35?50程度、翼幅26mというような高性能機では2人乗りでも60に達する。単座グライダーの計器板例。最上部にコンパス。丸型の二つ横並びは2種の昇降計(バリオメータ)。丸型の三つ横並びは速度計(km/h表示もあるがこれはノット計)、中央が滑空比計算コンピュータと音響表示バリオメータの複合装置、右が高度計。メートル表示もあるがこれはフィート計。その右の四角はGPS経路記録機の表示。左の大きなPDA表示はGPS経路記録機に接続してグラフィックディスプレイとするもの。そのすぐ右の白い枠は時計。最右にあるのはハンドヘルドGPS。操縦桿に隠れてVHF無線機。

フラップにより翼型を変化させ高速性能を上げる機種も多い。ただし翼型の設計の進歩に伴い1990年以降にはフラップのない機体が競技会で活躍したことから、自重が重く低速飛行時のためフラップが安全上必要なエンジン付きの機体以外ではフラップなしの設計も再評価されている。

高性能のグライダーでは翼内に200L程度の水タンクを備え、上昇気流が強い場合に平均飛行速度を速くする機構を装備しているのが一般的である。水は着陸前に放出する。自重は1人乗りで260kg、2人乗りで380kgが代表的なところ。エンジンは数十kgの加算となる。エンジン・プロペラを展開した状態のエンジン格納型グライダー

無尾翼可変翼のグライダーも試作されている。米国では個人製作の機体も一時盛んであった。日本国内でも東北大学のクラブなどで製作されたものがある。計器は速度、高度、コンパスに加えて滑り(機体と気流が相対する方向と、機首の指す方向が一致していないこと。こうなると抵抗が大きくなる)を見るための毛糸をキャノピーに貼るのが基礎である(この毛糸が常に機体の軸線と一致するように操縦すれば滑りがないということになる)。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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