クーペ
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ボンネットキャビントランクルームの3つの箱からなる3ボックススタイル。一般的なノッチバックセダンと同様に落ち着いた印象を与え、高級やフォーマルといったキャラクター付けのために用いられる[注 6]。実用面では、後席のヘッドクリアランスやトランクリッドの開口面積を確保しやすい。

ファストバックの中にはトランクリッドではなく、さらに開口部の大きなバックドアを持つ「ハッチバック」スタイルとなったものも多い。
ファストバッククーペ「ファストバック」も参照ポルシェ911 2.4
ファストバッククーペの代表格とも見なされることがあり、30年以上に渡り同じフォルムを守り通した。

リアウィンドウが比較的寝かされ、リアデッキとの間に明確なノッチを持たないスタイル。独立したトランクリッドを持つものと、開口部の大きなバックドアをもつハッチバックとがある。ハッチの開き方には、跳ね上げ式と横開き式があり、日本車では跳ね上げ式が主流である。
カムテール詳細は「カムテール」を参照コーダ・トロンカ(カムテール)の例。アルファロメオ・TZ2

ファストバックの類型で、屋根からのラインが下がりきる前にボディ後端をすっぱりと切り落とした形状のものを、特に「カムテール」(: Kammtail)、「カムバック」(: Kammback)、「コーダ・トロンカ」(: Coda tronca)などと呼ぶ。

1930年代ドイツ人のヴニバルト・カム(英語版)[2]が提唱した「流体の中を進むもっとも効率の良い形とされる魚類のような流線型(涙滴/水滴型)の物体の場合、その後端を切り落としても抵抗はほとんど増加しない」という理論に基づくデザインである。「カム」は博士の名に由来し、「コーダ・トロンカ」は切断された(トロンカ)コーダ)を意味する[2]

全長の短縮による軽量化と運動性の向上が期待できることから、まずレーシングカーに採用され、1960年代以降はスポーツ風な印象や空力性能の良さを形で訴える意味もあり、カムテールを取り入れる市販車が相次いで現れた。
その他の呼称
フィクスドヘッドクーペ(Fixed Head Coupe,FHC)
フィクスドヘッドクーペ
ジャガー・Eタイプ Sr-1 FHCもともとオープンカーとして開発されたクーペに、固定式の屋根(ハードトップ)を設けた車両を指す。イギリス発祥の用語。
ドロップヘッドクーペ(Drop Head Coupe,DHC)
ドロップヘッドクーペ
ジャガー・XK120 SE DHC(ソフトトップ)を持つオープンカーで、幌を閉じることでクーペと同等の居住空間を得ることができる車両を指す。イギリス発祥の用語。
4ドアクーペ
4ドアクーペ
アウディ・A74ドアセダンから派生したボディ形式。ドアの枚数はそのままに、車高を低めにしてAピラーを強く寝かせた車種。通常ならば「5ドアハッチバック」と呼ばれるものだが、メーカーによりこのように呼称される場合がある。厳密な定義はなく、本来の「クーペ」という言葉の用法からは外れるものの、3ボックス型4ドアセダンとクーペの折衷型として2000年代以降、主に欧州系を中心とした各自動車メーカーから登場している。同クラスの4ドアセダンと比べて車室は狭く、実用性よりもデザインを優先したクーペ風の4ドア車である。1980年代 - 1990年代の日本車で流行した「4ドアハードトップ」の類型にあたり、デザイン性重視の観点からサッシュレスドアを採用しているものが多い。メーカーが「4ドアクーペ」と定義している事例としては、ブームの火付け役となったメルセデス・ベンツ・CLSクラスを筆頭に、BMW・6シリーズ グランクーペフォルクスワーゲン・アルテオンなどがある。アウディ・A7は大型のリアゲートを持つ5ドアハッチバックだが、これも同様にメーカーは「4ドアクーペ」と定義している。一方、アストンマーティン・ラピードポルシェ・パナメーラも同様のスタイルを持つが、これらは「4ドアクーペ」の呼称をメーカーは採用していない。
ハッチバッククーペ
ハッチバック」も参照ハッチバッククーペ
トヨタ・GRヤリス3ドアハッチバックから派生したボディ形式。ドアの枚数はそのままに、車高を低めにしてAピラーをさらに強く寝かせた車種。通常ならば「3ドアハッチバック」と呼ばれるものだが、メーカーによりこのように呼称される場合がある。厳密な定義はなく、本来の「クーペ」という言葉の用法からは外れるものの、2ボックス型3ドアハッチバックとクーペの折衷型として1970年代以降、主に欧州系を中心とした各自動車メーカーから登場している。同クラスの3ドアハッチバックと比べて車室は狭く、実用性よりもデザインやスポーティ性を優先したクーペ風の3ドア車である。
高級車におけるクーペの存在メルセデス・ベンツ・CLクラス

後席用のドアを持たないクーペは実用性に欠けるため、ビジネス用途からは一般的に避けられる。しかし逆に、高級車の歴史においては、その実用性を廃した点が「特別感」「パーソナル感」を強調し、さらには「贅沢の象徴」とされ、一定の存在価値を持っている。フェラーリランボルギーニといった、いわゆるスーパーカーだけではなく、快適な乗り心地と豪華な装備を持つ大型高級乗用車にもクーペは存在し、多くの高級車メーカー(ブランド)において、イメージリーダーとして重要な役割を担ってきた。4ドアセダンはビジネスにもプライベートにも使えるが、2ドアクーペはプライベートにしか使えない。だから贅沢だという価値観である。

トヨタ・クラウン日産・セドリックホンダ・レジェンドといった日本メーカーの高級車には、4ドアセダン以外にもかつては2ドアのハードトップやクーペモデルが存在し、パーソナル感を重視するオーナードライバー達に選択されてきた。トヨタは高性能と豪華装備を兼ね備えた2ドアクーペのスーパーカーであるレクサス・LFAを限定生産したほか、その後もLCをラインナップしている。日産では同じくクーペボディを持つGT-Rが、ホンダではNSXをラインナップしており、共に両社のフラグシップを担っている。

メルセデス・ベンツBMWにおいては、クーペモデルはセダンより一段上位のものと常に位置づけられおり、それはロールス・ロイスにおいてさらに顕著である。かつて販売された2ドアクーペのカマルグは、販売当時ファントムVIを除くと同社ラインナップ内で最も高価格のトップモデルであり、なおかつデビュー当時は世界で最も高価な市販乗用車でもあった。ファントムVIはあくまで特別生産車であり、カマルグは「ショールームで買うことのできる世界一高額な車」とされた。近年も、ファントムのクーペモデルおよびドロップヘッドクーペは、サルーン(セダン)より高価格であった。また、2009年からはファントムより一回り小さなセダンとしてゴーストがラインナップされているが、このクーペ版として2013年からレイスも登場しており、ベースとなったゴーストと比べ高価格である。

BMW・M6

ロールス・ロイス・カマルグ

ロールス・ロイス・レイス

近年の動向

1950年代までの乗用車は、剛性確保や生産性の都合から2ドアが当たり前であったため、2ドアであることに疑問を抱くユーザーは少なかった。1960年代のファミリーカーブームで4ドア車も普及し始めるが、「豪華版」とも呼べる存在であった4ドア車に比べて廉価でスポーティな車種も多かったクーペは、若者や自動車愛好家を中心にもてはやされた。しかし、4ドア車が大衆化して製造コストが下がるようになると、徐々にクーペの販売はかげりを見せ始めた。

自動車の普及とともに、自動車に対して趣味的な価値を見出す者も減少し、大衆には地球環境への配慮や相次ぐ不況への不安が芽生えていたため、とりわけ2000年代以降はコンパクトカーミニバンのような経済性・実用性に優れた自動車が台頭するようになった。動力性能やスタイリングを重視したスポーティモデルにしても、大衆車たるセダンやハッチバックをベースに高性能化した車種(スポーツセダン、ホットハッチ)が増加し、クーペである必要性が希薄化してしまった。


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