クーペ
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動力性能やスタイリングを重視したスポーティモデルにしても、大衆車たるセダンやハッチバックをベースに高性能化した車種(スポーツセダン、ホットハッチ)が増加し、クーペである必要性が希薄化してしまった。

その結果、クーペは少ない販売台数で採算を取るために高価格帯に偏るようになり、近年になって新型車として導入されるクーペはCセグメント以上のクラスが主流となっている。また、かつて「クーペのみを製造する」ことをアイデンティティとしていたスポーツカーメーカーも、ラインナップにクロスオーバーSUVなどを導入する例が増えており、2015年現在のポルシェのクーペの売上は2割に過ぎなくなった[3]。このように、クーペはブランドのスポーツイメージ向上や自動車文化の振興につながっても、収益のメインにはなり得ないことから、クーペの販売から撤退する自動車メーカーも珍しくなくなった。

このような現状を踏まえ、メーカー側では同業他社との共同開発やプラットフォームの共有(トヨタ・86/スバル・BRZBMW・Z4/トヨタ・スープラなど)によってコストを削減し、クーペの存続を図っている。また、トヨタ・C-HRBMW・X6ルノー・アルカナなど、クロスオーバーSUVに対してクーペのスタイリングを取り入れる例もみられる。
アメリカ合衆国

アメリカでは1960 - 1970年代に各メーカーからスポーツクーペが多数登場し、一躍人気を博した。また、同時期のアメリカで流行したマッスルカーは、大排気量・高出力のエンジンを2ドアクーペタイプのボディに搭載することが基本であった。

またアメリカでは女性の社会進出が早く、そのような女性たちの通勤の足として「セクレタリーカー」というジャンルが形成された。このジャンルでは小型クーペが人気を博し、特に日本車のトヨタ・カローラGTSホンダ・CR-X日産・シルビアなどが人気車種となった。またホンダ・アコードクーペシビッククーペトヨタ・セプターなど、アメリカで現地開発された日本メーカー製のクーペも登場し、一部は日本にも輸出された。

2000年代以降は世界的な環境意識の高まりや、車高の低い構造がセキュリティ上敬遠されるようになり、クーペはセダンやステーションワゴンとともに小型のクロスオーバーSUVに取って代わられるようになった。
日本

日本車におけるクーペは、1937年昭和12年)に登場したダットサン16型が最初といわれる[4]。戦後はマツダから発売されたR360がクーペを名乗っていたが、これらは後年のようなスタイリングや性能に特徴を持たせたものではなかった。

日本車でスタイリングを重視した本格的なクーペが登場したのは1965年(昭和40年)の日産・シルビアが最初で、いすゞ・117クーペマツダ・ルーチェロータリークーペといった高級モデルがこれに追従した。1970年(昭和45年)に発売されたトヨタ・セリカは、その価格の安さと「フルチョイスシステム」[注 7]によって好みの内装が選択できる先進性で大ヒットを記録し、他社からも同種のスペシャルティカーを発売させる大ブームへとつながった。

1980年代後半から1990年代初頭にかけてのバブル景気と相まって、若者たちのデートカーとしてクーペが好まれるようになった。こうした中で、日産・シルビア、トヨタ・セリカ、ホンダ・プレリュードホンダ・インテグラなどの2ドアクーペがヒットを記録している。

1991年バブル崩壊以降は、ミニバントールワゴンスポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)などの実用性に長けたRV系車種がヒットし、セダンよりさらにスタイリング重視で実用性と居住性に乏しいクーペ系車種は、既存の小型セダンやハッチバックをベースとした低価格帯の小型クーペ(サブコンパクトカー)を投入[5]することで生き残りを図った。

しかし、2000年代に入ると原油価格の高騰を受けて経済的な軽自動車コンパクトカーの売上が高まり[6]、クーペそのものが急速に敬遠され、軽自動車やCセグメントクラス以下の大衆車なども含めてクーペ系車種は順次廃止される運びとなった。
各メーカーの動向

トヨタ自動車ではSUBARU(旧・富士重工業)との資本提携の一環としてクーペタイプのスポーツカーを共同開発することになり、2012年にトヨタ・86(→GR86)/スバル・BRZとして発売された。トヨタではMR-S(2007年販売終了)以来、SUBARUではアルシオーネSVX(1996年販売終了)以来のクーペモデルの復活となる。さらに2014年にはレクサスブランドからRCLC、2019年にはBMWとの共同開発でGRスープラを発表するなど、クーペの新車種を市場に投入している。

日産自動車マツダは2000年代以降も一貫してクーペ車種をラインナップし続けており、2024年現在も日産ではフェアレディZGT-R、マツダではロードスターの生産・販売を継続している。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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