クワイエット・プレイス
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そんな世界を逞しく生き延びていたのが若いアボット一家の5人[4]、両親(夫のリー、妻のイヴリン)と3人の子(長女リーガン、長男マーカス、次男ボー)である。一家は適応力がとても高く[4]、音をたてないことに徹して生き延びている[4]。長女リーガンに聴覚障害があったおかげで家族は手話に慣れており、手話で意思疎通を図る、靴を履かずいつも裸足でそっと歩くことで音をたてず移動する、洗面は水音をたてないようにタオルに水をそっと滲みこませて顔をぬぐう、子供の玩具も音がしないものだけを選び、双六の駒も布類で手作りして音をたてずに遊ぶ、などといった方法を駆使して生き延びてきたのである。

一家は孤立して生きており[4]、アメリカの広い農場にポツンと建つ一軒家に住んでいる。世界各地の人類はすでにほぼ滅んでしまっているであろうことをこの一家は知っている。怪物襲来から最初の数十日間、世界の主要都市が次々と壊滅状態になったことが新聞で伝えられていたがそれも途絶え、リーが毎日のように世界各地のラジオ局から情報を得ていたが、もともと数百局は受信できていたのもあと数局しか残っていないことから分かるのである。またリーは日没後に屋上にのぼって火を焚いてその明かりで見える範囲の農家と互いの生存を確認しあっていたが、次第に灯る火の数も減ってしまい、この地域の人々もほとんど殺されてしまったようだと分かるのである。

ある日、一家がいつもどおり用心深く音をたてないように移動して廃墟と化した街の商店に行き物資を補充した帰り道、幼いボーがこっそり持ち帰った電池を玩具に入れてしまい、これが動いて音を出したせいで怪物に見つかり、家族の目の前で一瞬で殺されてしまった。家族全員の心に深い傷が残り、子供たちは一層怯えるようになった。

その悲しい出来事から1年後、アボット一家はひきつづき音を立てない生活を心がけていたが、家の周囲の農場にも怪物は徘徊しており常に恐怖がつきまとっている。リーガンは、ボーが死んだあの日、自分がもう少し違う行動を選んでいれば幼い弟は死なずに済んだはずだと思い、自分を責めて苦しんでいる。リーはリーガンに「ボーが死んだのはお前のせいじゃない」と手話で言い聞かせているが、リーガンは納得できずにいる。リーとリーガンの関係は徐々に険悪なものになってしまい、リーガンは一家の中で孤立していると感じるようになった。リーガンの目には、弟マーカスが自分以上に両親に愛されていると映っており、それが一層疎外感を強めるのだった。またリーガンにとっては、耳に付けている人工内耳の体外装置[5]の不調による雑音も大きな憂鬱の原因になっていた。

ある日、リーは将来を見据えて、サバイバルに必要な食糧調達技術のひとつである釣りをマーカスに教えるために、怯えて外出したがらないマーカスを説得して川に行くことにした。それを知ったリーガンは同行を願ったが、妊娠中のイヴリンの家事仕事を手伝うように言われ、やはり疎外されているのだと思い込み傷つく。リーとマーカスは渓流の釣り場に行き、その近くに滝があったおかげで二人は数ヶ月ぶりに声を出して話をすることができた。滝のように常に爆音を出し続ける環境下であれば、人の声でもその音にかき消されて怪物に気づかれずに済むのである。二人はボーの死とリーガンが抱えているであろう家族への不信感について話し合った。リーはマーカスから「リーガンを愛しているなら、はっきりそう伝えないとダメじゃないか」と言われハッとする。

帰宅する途中、二人は老人に遭遇する。老人の前には怪物に腹を食われた妻の遺体が横たわっており、悲しい眼をした老人は口をわずかにうごかしており、声を出そうとしているようである。どうやら絶望して正気も失い、大声をあげることで怪物に食われて自分も死んでしまおうとしているようだと感じ取ったリーは、唇の前に指を立てることで「声を出さないで」と頼んだ。だが老人はついに堪えきれなくなったのか、叫び声を上げてしまい、怪物に殺されてしまった。二人は巻き添えを食らわないよう全力疾走で逃げ、なんとか命拾いする。

二人がそんな恐ろしい体験をしていたころ、リーガンはふてくされて無断外出しボーの墓参りに行ってしまう。イヴリンは家で独り家事をしていたが、まだ予定日でもないのに破水し産気付いてきた。すでに3人産んだ経験があるイブリンは慣れたもので、落ち着きを保ち、安全に出産するために準備を整えてあった地下室に移動することにした。だが途中誤って階段で釘を踏み抜いてしまい音をたててしまう。怪物たちはそれを聞き逃さず、一匹が家の中に入ってきた。一家はとうとう自宅で怪物と死闘を繰り広げなければならない状況に陥った...
キャスト

※括弧内は日本語吹替[6]

リー・アボット(父親かつ夫) - ジョン・クラシンスキー星野貴紀

イヴリン・アボット(母親かつ妻) - エミリー・ブラント園崎未恵

リーガン・アボット(娘で姉) - ミリセント・シモンズ(英語版)

マーカス・アボット(息子で弟) - ノア・ジュープ宇山玲加

ボー・アボット(末っ子) - ケイド・ウッドワード

老人 - レオン・ラッサム

亡くなった老人の妻 - ローダ・ペル(クレジット無し)



製作

ジョン・クラシンスキーはスコット・ベック及びブライアン・ウッズと共に本作の脚本を執筆した。ベックとウッズはアイオワ州の出身で、大学在学中に数え切れないほどのサイレント映画を鑑賞したのだという。2013年の段階で、2人は本作の原案の執筆に取りかかっていた。穀物を貯蔵するサイロをホラー演出に使うというアイデアは、2人が農場の近くで暮らしてきた経験に基づくものであった。やがて、2人は15ページの覚書を書き上げた[7]

2016年1月、ベックとウッズは覚書を元に長編映画の脚本を書き始めた[8]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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