クロード・モネ
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絵具をパレットで混ぜずに、素早い筆さばきでキャンバスに乗せていくことで、明るく、臨場感のある画面を作り出すことに成功した。その後の連作の時代には、光の当たったモチーフよりも、光そのものが主役の位置を占めるようになり、物の明確な形態は光と色彩の中に溶融していった(→時代背景、画風)。鋭敏な観察力と感受性をもって絶え間なく変わり続ける風景を表現したモネは、印象派を代表する画家と言われる(→評価と影響)。作品は、モネ存命中の1890年代から徐々に美術市場での評価が高まっていったが、20世紀を通じてオークションで次々記録を塗り替える高額落札が生まれ、数十億円で落札されるに至っている(→市場での高騰)。

ジヴェルニーの家に造成した庭園は、それ自体がモネの芸術作品と言われる。死後は一時荒れていたが、修復工事を経て、1980年以降、一般に公開されている(→庭園)。
生涯
ル・アーヴル(少年時代)

1840年11月14日、パリ9区のラフィット街(英語版)で、父アドルフと母ルイーズとの間の二男として生まれた。父親の職業ははっきり分かっていない[4][注釈 1]。出生時のフルネームは、オスカル=クロード・モネ(Oscar-Claude Monet)であったが、のちに本人はクロード・モネと名乗っている。

1845年ごろ、一家でノルマンディー地方のセーヌ河口の街ル・アーヴルに移住した。ここでは、父の義兄ジャック・ルカードルが富裕な雑貨卸業を営んでいた。モネは、少年時代の大半をル・アーヴルで過ごすことになる[5]。これ以降も、モネは生涯のほとんどをセーヌ川沿いの町で過ごすことになり、のちに自ら「セーヌ。私は生涯この川を描き続けた。あらゆる時刻に、あらゆる季節に、パリから海辺まで、アルジャントゥイユポワシーヴェトゥイユジヴェルニールーアン、ル・アーヴル……」と回想している[6]

1851年4月1日、ル・アーヴルの公立中学校に入学した[4]。モネは、学校を抜け出して外で遊び回るのが好きな少年であった。彼はのちに、次のように回想している[7]。私は生まれた時からきかん坊であった。誰も、私をどのような規律にも従わせることはできなかった。私が学んだわずかなことは、みな独りで学んだのだ。……外には親しげに太陽が輝き、美しい海が広がっていて、澄んだ空気の中で海辺を走り回ったり、水の中に飛び込んだりできるというのに、4時間もじっと座っていることなど、とても私にはできなかった。

モネは少年のころから絵画に巧みで、10代後半のころには自分の描いた人物のカリカチュア(戯画)を地元の文具店の店先に置いてもらっていた。カリカチュアの注文を頼む者も現れ、最初は10フラン、のちに20フランで引き受けた[8]。デッサン教師ジャック=フランソワ・オシャールの授業も受けている[4]1857年1月28日、母親が死去した。モネは、同じころ学業を放棄したが[注釈 2]、叔母のマリー=ジャンヌ・ルカードルが彼をアトリエに入れ、デッサンの勉強を続けさせた[9]

1858年ごろ、モネの描いていたカリカチュアが、ル・アーヴルで活動していた風景画ウジェーヌ・ブーダンの目にとまり、2人は知り合った[10]。ブーダンは、それまでアトリエで制作するのが当たり前だったキャンバスを戸外に持ち出し、陽光の下で海や空の風景を描いていた画家であった[11]。ブーダンから、カリカチュアばかり描くのをやめ、油絵を勉強しようと誘われたことから、モネは油絵に取り組み始め、画家としての一歩を踏み出した[12]。ブーダンとともにル・アーヴル北東のルエル(フランス語版)に赴いて制作し、油絵『ルエルの眺め』をル・アーヴル市展覧会に出品した[9]

戯画、1855 - 56年ごろ。61.2 × 45.2 cm。シカゴ美術館

『ルエルの眺め』1858年。油彩、キャンバス。46 × 65 cm。丸沼芸術の森コレクション[13]

パリ(1860年代)
画塾時代

モネは、パリで絵の勉強をしたいと考えるようになったが、父は強く反対した。しかし、モネがカリカチュアで稼いだ貯金2,000フランでパリに行きたいと伝えると、父はこれに驚いてやむを得ず許可し、1859年4月、パリに出ることとなった[14]。当初、ブーダンの師であったコンスタン・トロワイヨンのもとを訪れ、ルーヴル美術館で模写をしてデッサンを学ぶこと、トマ・クチュールのアトリエに入ることを勧められた[15]。しかしモネは、そうしたアカデミックな勉強を拒否し、1860年に、より自由なアカデミー・シュイスに入学した。ここでカミーユ・ピサロらと知り合った[16]

1861年、徴兵を受け、アフリカ方面の連隊に入隊し、秋からアルジェリア兵役を務めたが、1862年、病気(チフス)のため6か月の休暇を得て、フランスに帰国した[17]


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