クルーズ客船
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ハパックではバリーンの企画によって1900年には4,500トンクラスのクルーズ専用船「プリッツェリン・ヴィクトリア・ルイーズ」(Prinzessin Victoria Luise)も建造、就航させている。

クルーズ運航は、このように大手海運会社の閑散期経営対策として19世紀から20世紀前半にかけて定着し、また一方では、中・小型の旧式客船をクルーズ向けに改装した客船により、アメリカ東海岸からのカリブ海方面クルーズの普及などで大衆化も進んでいった。

第二次世界大戦後、大西洋横断航路に代表される大型長距離客船が、1950年代に起きた急激な航空機の発達(ジェット旅客機実用化と普及)でその本来の役割を終えると、大手海運会社貨物輸送に経営比重を移す一方で、既存の大型客船を通年にわたりクルーズ船として運航し、新たな収益手段として活用するようになった。その過程では当初、かつて主要航路で運航された有名客船が多く改装・転用される事例が見られたが、大陸間を高速巡航で結ぶ往年のオーシャン・ライナーと、速度を重要としない「浮かぶ豪華ホテル、リゾート」としてのクルーズ船の性格は相違することから、新たに建造されるクルーズ船は速度よりも快適性や収容能力を追求する目的で、オーシャン・ライナーよりも経済性重視の、低速、かつ大型な、古典的客船とは異質な船形に変貌していった(クルーズ船のデザインも参照)。

1965年建造のMarco Polo。

Mardi Gras。1961年建造。1972?1993にカーニバルクルーズライン社で運航。

Song of Norway(1970年建造、ロイヤル・カリビアン・インターナショナル社で運航。)

20世紀末期からは、カーニバル・コーポレーション1972年創立)などを代表とする、大規模資本を投入したクルーズ船専業海運会社が、10万トンを超える巨大クルーズ船を複数建造・運航するようになり、そのバリエーションも多彩なものとなっている。

2020年2019新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、クルーズ客船は軒並み運航停止に追い込まれた。2020年5月時点でアメリカ合衆国領海内で投錨しているのは23隻、港に停泊中のものは24隻、領海内を移動しているものは44隻となっている[2]
区分

クルーズ客船は、そのサービス内容と価格帯により、次の3クラスに区分される。クラス分けは、一つ一つの船についてではなく、「クルーズ会社」について判定される。これは、その会社が運航する船は、どれも同等のサービスを提供することが通常だからである。

しかしながら実際問題として、同じ運航会社でも船毎により差は生じるわけであり、個別船のランク付けについては、ダグラス・ワードによるベルリッツ・クルーズガイドも参考となる。

なお日本で(かつて)クルーズ客船の利用が一般的でなかった時代には、「豪華客船」などと呼ばれ、旅行代金も高額商品の典型のようにイメージされることが多かったが、実際には、日本のリゾートホテルと比べても割安な泊単価設定の船から一泊あたりかなり高価な船まで、サービス内容も比較的簡素な内容の船から、富裕層をターゲットとしたラグジュアリーなサービスの船まで、様々なクルーズ客船が存在する。
マス(Mass)カーニバルクルーズの「カーニバル・パノラマ」

その名の通り、マス(大衆)層を対象とした船。「Casual Class カジュアル・クラス」や「Contemporary Class コンテンポラリー・クラス」とも呼ばれる。

US$100からUS$350/泊。(二人部屋を二人で使用した場合の一人当り単価の目安。以下同様)

船型を大型化することによるスケールメリットで単価を下げている。

また、値段は低いが、その分、船内での飲食の有料部分を多くしたり、カジノのスペースを大きく取り、それらを収益源とするビジネスモデルを採っている。

主な運航会社は以下の通り

MSCクルーズ(9万トン未満の船)

カーニバルクルーズ

コスタ・クルーズ

ロイヤル・カリビアン

スタークルーズ

ノルウェージャン・クルーズライン

ディズニー

プレミアム(Premium)

US$150からUS$400/泊。

付帯するサービス(全食事付き、付帯イベント類)を加味すれば、このクラスの下・中級船室であれば、なお日本のリゾートホテルと同等ないしは割安と考えられる。

主な運航会社は以下の通り

MSCクルーズ(14万トン以上の船)

プリンセス(コンテンポラリープレミアムクラス)

セレブリティ・クルーズ

ホーランド・アメリカ

ラグジュアリー(Luxury)

クルーズ客船の中でも上級なサービスを提供する船。

US$400からUS$1,000/泊。

主な運航会社は以下の通り

MSCクルーズ(MSCヨットクラブ)

リージェント・セブン・シーズ(旧ラディソン)

シルバーシー

シーボーン

クリスタルクルーズ

ウインドスタークルーズ

キュナード(※)

※キュナードはプレミアムに区分されることがある。これは同社が客室により差を付けるサービスをしているため。(下級船室のサービスはラグジュアリーとは言い難い、という判断)
ブティック(Boutique)

ラグジュアリーの中でも、船型を比較的小規模に抑え、乗客に対する乗組員比率を更に高くし、一人一人によりきめ細かいサービスを提供する船をこう呼ぶことがある。

価格帯は US$600/泊以上。

主な運航会社は以下の通り

リージェント・セブンシーズ

シルバーシー

シーボーン

ハパグロイド

船内設備

基本的に備えられているのは宿泊設備、複数のレストラン及びバー、ラウンジプールフィットネスクラブスパ美容室、ショップ、劇場カジノ医務室などで、船の規模や各クルーズ会社のカラーによって設備が異なる。

まずカーニバルやコスタといった大衆向けのクルーズ客船では託児施設が充実していて、料金の安さを補うため大規模なカジノが設置されているが、シルバーシーなどの高級船では託児施設はなく、カジノも小規模である。ただし、日本の領海内では賭博行為を禁じた刑法185条および186条(賭博及び富くじに関する罪)に抵触する為、カジノが許可されている国の船籍であっても日本の領海内での営業は禁止されている。日本船の場合にはカジノに類似して換金や商品交換を伴わないゲームスポットを設けるのみでカジノ収益による価格低減が図れないため運賃単価が高止まりしており[3]、このほか独自の設備として大浴場が設けられている。近年では2014年に日本発着クルーズを開始したダイヤモンド・プリンセスが日本人向けに大浴場や寿司バーなどを新設したほか、ボイジャー・オブ・ザ・シーズも日本料理店を設けるなど、外国船でも日本人向けの施設を整えつつある。

レストランは、メインのダイニングとビュッフェ形式のものの二種が設置されるのが基本であるが、最近はそれとは別に有料のレストランを設ける傾向にある。

また、カーニバルの場合にはファンタジー級からウォータースライダーを装備。ロイヤルカリビアンの場合は煙突ファンネル)周辺にラウンジを設置。HAL の場合は船内の至るところに美術品を飾っているなどの、会社によっては特徴となる設備を設けている。

最近では内側客室にスクリーンを設置し、船外の景色や音を楽しめる「バーチャル・バルコニー客室」や、船内でサーフィンやスカイダイビングを疑似体験できる施設を新設した客船が登場するなど、様々に趣向を凝らして乗客を飽きさせない試みが行われている。[4][5]

子供用プール(フリーダム・オブ・ザ・シーズ

プロムナード(アルーア・オブ・ザ・シーズ


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