新約聖書に記された伝統的なクリスマスの物語「イエスの降誕」は、イエスがメシアの予言に従ってベツレヘムで生まれたとするものである[12]。ヨセフとマリアがこの街に到着したとき、宿屋に部屋がなかったため、馬小屋を提供され、そこですぐにキリストが生まれ、天使がこのニュースを羊飼いに告げ、羊飼いがそのニュースを広めたという[13]。一方ヘロデ大王は、自分の地位をいずれ脅かすであろう者が現れた事を知り、恐れをなしてどの子がイエスなのか特定しようとしたが、出来なかったため、同世代の幼児を皆殺しにした(幼児虐殺の逸話)。
イエスが誕生した月日は不明であるが、4世紀初頭の教会では12月25日と定めていた[14][15][16]。これはローマ暦の冬至に相当する[17]。春分の日でもある3月25日の受胎告知からちょうど9ヶ月後である。多くのキリスト教徒は、世界各国でおおよそ採用されている、グレゴリオ暦の12月25日に祝う。しかし、東方キリスト教会の一部では、クリスマスを旧ユリウス暦の12月25日に祝い、これは現在グレゴリオ暦の1月7日に相当する。キリスト教では、イエスの正確な誕生日を知ることよりも、神が人類の罪を償うために人の姿でこの世に現れたことを信じることが、クリスマスを祝う最大の目的であると考えられている[18][19][20]。
各国でクリスマスに関連する祝いの習慣には、キリスト教以前、キリスト教、世俗的なテーマや起源が混在している[21]。現代の一般的な習慣としては、プレゼントを贈る、アドベントカレンダーやアドベントリースを完成させる、クリスマス音楽やキャロルを演奏する、キリスト降誕劇を見る、クリスマスカードを交換する、教会の礼拝、特別食、クリスマスツリー、クリスマスライト、キリスト降誕シーン、ガーランド、リース、ヤドリギ、ヒイラギなど様々なクリスマスの飾り付けをする、などが挙げられる。さらに、サンタクロース、ファーザー・クリスマス、聖ニコラス、クリストキントなど、クリスマスシーズンに子供たちに贈り物をする人物と密接に関連し、しばしば交換される人物がおり、それぞれ独自の伝統と言い伝えを持っている[22]。プレゼントを贈るという行為や、その他多くのクリスマス行事は、経済活動の活発化を伴うため、小売業者や企業にとって重要なイベントであり、重要な販売期間となっている。過去数世紀にわたり、クリスマスは世界の多くの地域で経済効果を着実に高めてきた。
位置付けおよび『マタイによる福音書』第1章18節 - 第2章18節に記述があるものの、いずれも誕生日を特定する記述は無い。
クリスマスが行なわれる日は、あくまでも「降誕を記念する祭日」と位置付けられているのであって、前述したように聖書にはイエスの誕生日を記述する内容が存在しないことから「イエス・キリストの誕生日」とされているわけではない[23]。イエス・キリストが降誕した日がいつにあたるのかについては、古代からキリスト教内でも様々な説がある(例えば3世紀の初め頃には、アレクサンドリアのクレメンスは5月20日と推測していた)[4]。
また、キリスト教で最も重要な祭と位置づけられるのはこの祭ではなく、復活祭(イースター/パスハ)とされている[24][25][26][27]。 325年5月の第1ニカイア公会議において、キリストの降誕を祝う日について議論された。日付の候補は、おもなものだけでも、1月6日、2月2日、3月25日、3月28日、4月2日、4月19日、4月29日、5月20日、11月8日、11月17日、11月18日、12月25日があった[28][29]。 このうち、古代共和政ローマ時代の「ローマ暦」において冬至の日とされていた12月25日が、「降誕を祝う日」として次第に定着していった[注 2]。12月25日に降誕祭を行う風習は、遅くとも354年[30]には西方教会で始まり、4世紀末には東方教会の多くにも広まった[31]。 古代ローマの宗教のひとつミトラ教では、12月25日は「不滅の太陽が生まれる日」とされ、太陽神ミトラスを祝う冬至の祭であり、これから派生してローマ神話の太陽神ソル・インウィクトゥスの祭ともされていた。これが降誕祭の日付決定に影響したのではないかとも推察されている[注 3]。 12月25日を降誕祭とする風習が定着する以前には、アルメニアやギリシアなどで1月6日説が採用されており[32]、また、「キリストの降誕」の記念と同時に「キリストの洗礼」(ヨルダン川で洗礼者ヨハネから洗礼を受けたこと)の記念を祝っていた[31]。 現在でもアルメニア使徒教会(東方諸教会・非カルケドン派正教会に分類される)においては、教会暦上の1月6日(アルメニア本国などではグレゴリオ暦を使用、エルサレムのアルメニア総主教区においてはユリウス暦を使用するためグレゴリオ暦の1月19日にあたる。
起源
日付の候補と決定
古式を守るアルメニアの降誕祭「リトル・クリスマス」も参照