クラリネット
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しかし、現在はほとんどが金属製で、主に洋白が用いられており、表面にメッキあるいはニッケルメッキを施されているのが一般的である。金属の配合比率やメッキの質・厚さなどは、メーカーによって異なっている。キーは素手で簡単に曲げられる程度の強度なので、楽器の組み立て・分解の際に変形させないよう注意する必要がある。変形するとキーバランスが崩れ、音質・音程に影響する。

キーのうち、音孔を指で直接塞ぐ部分以外には、タンポ(次項)が接着されている。また、キーを操作したとき、管体や他のキーと触れる部分にはコルクなどが貼られており、この厚みもキーバランスに影響する。
材質と構造
タンポ

タンポ(タンポンとも)は音孔のうち指では直接開閉できない部分をカバーするためにキーに取り付けられた、円盤型で柔軟性を有する部品で、通常はシェラックと呼ばれる天然素材の接着剤でキーに固定されている。

タンポの素材としては、フェルトをフィッシュスキンで包んだものが一般的である。実際は羊などの腸皮であることが多い。ブラダーとも呼ばれる。革を用いたものもあり、アルト・クラリネット以下の低音楽器は全て革タンポが一般的である。レジスターキーにはコルクが用いられることが多い。また、近年では合成皮革やハイテク素材、廉価版にはスチロールを用いたものもある。屋外で使用されることが多いプラスチック製の楽器や初心者向けのものでは、耐久性や価格の面から合成素材が多く用いられる。
マウスピース

ベック、唄口、歌口ともいい、硬質ゴム製が最も一般的であるが、もともとは木製であった。現在でも木製の歌口を好む奏者も多い。クリスタル・マウスピースというガラス製のものや、セラミックスを用いたものなどもある。音色に大きな影響を与えることから、管体の選定以上に気を使う奏者も少なくない。

硬質ゴムの中では長らくエボナイトが使用されてきたが、硫黄分を多く含んでおり、硫化によってキーのメッキが変色したり、人体への影響が懸念されるなどで、近年ではアクリル樹脂ABS樹脂を用いたものが増えてきている。
リード

ダンチク製がもっとも一般的で[5]、収穫後数年間乾燥させてからリードの形状に加工され、厚さ・コシの強さなどによって分別される。表示は1(Soft)から5(Medium)など、メーカーによってさまざまである。ただし、個々のメーカーが定めた独自基準で標準化はされておらず、同じ表示でもメーカーによって硬さが異なることがある[6]

リードは、使用するマウスピースやリガチャー、奏者の好みに応じて適切なものを選ぶ。マウスピースメーカーによっては、推奨される範囲の固さを示している場合もある。奏者の大半はメーカー製のリードを購入する。しかし、その多くがリードの調整を行っており、また一部ではリードを自作する奏者もいる[7]。リードの調整は、目の細かい紙ヤスリや特殊なナイフを用いる。

プラスチック製のリードや、木材を溶かし込んだ特殊な繊維を圧縮して作られたリードもある。天然素材でない分、気温や湿度の影響を受けにくく、長持ちするといわれる。しかし、音色の点で敬遠する奏者も多い。
リガチャー

リードをマウスピースに固定する部品で、古くは紐が使われていた。現在は、ベルト状のまたは人造皮革にねじを付けたものと、金属製のリガチャーが一般的である。皮の代わりに合成ゴムを使用したものや、リードやマウスピースに接触する部分が極力減るよう金属棒で作られた骨組みのようなものもある。リガチャーはクラリネットの音源となるリードの振動を受け止めるものであるから、音色にも影響する。

皮などを用いたリガチャーはリードの振動を吸収し、柔らかい音色になる。これは、リードの振動エネルギーをリガチャーに逃がしてしまうということでもあるので、金属製のリガチャーに比べ同じ音量を得るのにより強い息が必要になる。しかし、音の暴れは金属製に比べて少ないとされる。

金属製のリガチャーはリードの振動を吸収しにくいので、より弱い息でも楽に音量を出せる。特に高次倍音(俗に音色の芯などと呼ばれる)が吸収されにくいので、よく通る音を楽に出せるとされている。

マウスピース、リード、リガチャーは密接な関係にあり、ひとつを変えても吹奏感や音色が大きく変わることがある。
バレル

樽、ビルネ、ネックともいい、マウスピースと管体とを接続する部品である。しかし、音色や吹奏感に大きく影響する。したがって、近年では楽器のメーカーが管体と同じ材質以外にも、さまざまな素材、さまざまな形状の互換バレルを作っている。バレルの長さが楽器全体のピッチを変化させるので、各メーカーとも、長さの異なる純正バレルを何種類か用意していることが多い。
管体

木製が一般的で、グラナディラという黒檀に似た黒くて硬い木が最もよく用いられている。近年は良質なグラナディラの入手が困難になってきていることから、グラナディラの粉末とグラスファイバーなどを混合して成形した合成素材のものもある。この他にローズウッドココボロなども用いられている。

廉価モデルではABS樹脂合成樹脂の一種)製のものもあり、軽く取り扱いが容易な上、天然木につきものの「割れ」を心配する必要もないため、教育現場などで多用され、野外での使用にも適している。

メタル・クラリネットという、真鍮や銀などの金属管で作られたものもある。特にコントラバスクラリネットなど、大型のクラリネットでは、材木の入手困難性や耐久性の問題などから、金属管のものも少なくない。
ベル

マウスピースの反対側に位置する部品で、閉管楽器のクラリネットといえども、この部分だけは円錐形である。材質はバレルと同様である。ベルには音孔もキーもないのが一般的である。しかし、中にはベルにも音孔とキーが取り付けられたものもあり、また音質・音程への配慮から穴が開けられているモデルもある。クラリネットの各パーツ。上から、マウスピース、バレル、管体(上管、下管)、ベル。

メタル・クラリネット

取り外したクラリネットのキー。円盤状のタンポが取り付けてある。

マウスピース

リード(左から B♭、E♭、A♭用)

リガチャー

マウスピースにリードを取り付けた状態

特殊奏法

クラリネットには様々な特殊奏法があり、主にジャズ現代音楽などに用いられている。


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