普通のクモ類(クモ下目)の中の分類では、上位分類のための形質として、さらに以下のような特徴が重視される。
出糸突起の前に篩板を持つものを篩板類として大きくまとめるのが従来の分類法であった。現在の日本で出版されている図鑑等はこれに基づいているものが多い。ただし、この特徴に基づく分類は後に誤りではないかとされ、現在分類体系の見直しが行われている。
もう一つの上位の分類として、単性域類と完性域類の区分がある。これは外性器の構造に関するもので、前者ではそれが単純であるのに対し、後者でははるかに複雑になっている。これは現在でも重要な区分と考えられる。
さらに、完性域類の中では歩脚の爪が2つの二爪類と3つの三爪類が大きな系統をなすとされる。この内の前者は徘徊性、後者は主として造網性の系統である。
以下に古典的な分類体系として八木沼(1986)の体系を示す[20]。
古蛛亜目 Liphistiomorphae(ハラフシグモ類)
キムラグモ上科(キムラグモ科)
原蛛亜目 Mygalomorphae(トタテグモ類)
トタテグモ上科(トタテグモ科、カネコトタテグモ科)
ジョウゴグモ上科(ジグモ科、ジョウゴグモ科)
新蛛亜目 Araneomorphae(クモ類、フツウクモ類)
篩板類 Cribellatae
ウズグモ上科(ウズグモ科、ガケジグモ科、ハグモ科、チリグモ科)
スオウグモ上科(スオウグモ科)
カヤシマグモ上科(カヤシマグモ科)
無篩板類 Ecribellatae
単性域類 Haplogynae
イノシシグモ上科(エンマグモ科、イノシシグモ科、タマゴグモ科)
ヤマシログモ上科(マシラグモ科、イトグモ科、ユウレイグモ科他)
完性域類 Entelegynae
三爪類 Trionycha
コガネグモ上科(ヒメグモ科、サラグモ科、コガネグモ科、アシナガグモ科他)
ナガイボグモ上科(ヒラタグモ科、ナガイボグモ科、ホウシグモ科)
二爪類 Dinonycha
フクログモ上科(フクログモ科、シボグモ科、アシダカグモ科他)
ワシグモ上科(ワシグモ科、イヨグモ科、ヒトエグモ科)
カニグモ上科(カニグモ科、エビグモ科)
ハエトリグモ上科(ハエトリグモ科)
しかし近年これを否定する考えが大きな支持を受け、分子系統学の発展もあって、分類体系に大きな変更の動きが続いている[22]。特に、篩板を持つ群の扱いが大きく変化した。それによると、クモ類の主な部分を占める系統はかつて篩疣を持っていたのだが、そのうちのいくつかの系統で篩疣が消失し、しかも篩疣を失った系統が大発展を遂げたため、篩疣を持つものが比較的まとまって見えるだけで、実際には側系統群なのだという。このような新たな考え方に基づく分類体系は、科の配置を始めとして従来の分類体系と大きく異なり、中にはそれまで篩板類と無篩板類に分かれていたものが同一の科に含まれるようになるものすらある。これは一部では分子系統学にも支持されているが、すべてがこの考えに合致しているわけでもない。また、篩板の有無はやはりそれなりに重視されるべきとの考えもあり、統一見解はない。今後の研究の進展が待たれる。 小野(2009)は上記のように篩板の有無が系統を反映するとの判断を元にした分類体系を示した。小野・緒方(2018)ではさらにこれを改めて世界標準の分類体系を採用している。以下にこれを示す。 なお、下記のうち日本から記録のあるクモの科は64であり、これは全部のクモの科の数(117)の半分ほどでしかない。
近年の分類体系
Order Araneae クモ目
Suborder Mesothelae ハラフシグモ亜目
Liphistiidae ハラフシグモ科
Suborder Opistothelae クモ亜目
Infraorder Mygalomorphae トタテグモ下目
Atypoidea ジグモ上科
Atypidae ジグモ科
Antrodiartidae カネコトタテグモ科
Avicularioidea オオツチグモ上科
Dipluridae ホンジョウゴグモ科
Hexathelidae ミナミジョウゴグモ科
Porrhothelidae ニュージーランドジョウゴグモ科
Actinopodidae ヤノテグモ科
Euctenizidae シントタテグモ科
Cyrtaucheniidae モサトタテグモ科
Barychelidae ヒラアゴツチグモ科
Theraphosidae オオツチグモ科
Nemesiidae イボブトグモ科
Migidae アゴマルトタテグモ科
Paratropididae ヘリタカジグモ科
Ctenizidae モノトタテグモ科
Halonoproctidae トタテグモ科
Idiopidae カワリトタテグモ科
Mecicobothriidae イボナガジョウゴグモ科
Microstigmatidae ビキモンジョウゴグモ科
Infraorder Araneomorpha クモ下目
Haplogynae 単性域類
Hypochilidae エボシグモ科
Filistatidae カヤシマグモ科
Trogloraptoridae ホラアナカリウドグモ科
Caponiidae カガチグモ科
Dysderoidea イノシシグモ上科
Segestriidae エンマグモ科
Oonopidae タマゴグモ科
Orsolobidae フタヅメイノシシグモ科
Dysderidae イノシシグモ科
Scytodoidea ヤマシログモ上科
Sicariidae イトグモ科
Drymusidae アヤグモ科
Periegopidae トゲヌキエンマグモ科
Ochyroceratidae エンコウグモ科
Telemidae ヤギヌマグモ科
Scytodidae ヤマシログモ科
Tetrablemmatidea ジャバラグモ上科
Tetrablemmatidae ジャバラグモ科
Plectreuridae クチコグモ科
Diguetidae コトグモ科
Pavuliidae パクラグモ科
Pholcidae ユウレイグモ科
(群名不詳)
Gradungulidae ハガクレグモ科
Cithaeronidae イダテングモ科
Leptonetidae マシラグモ科
Austrochilidae ムカシボロアミグモ科
Entelegynae 完性域類
Plpimanoidea エグチグモ上科
Mecysmaucheniidae パタゴニアアゴダチグモ科
Huttoniidae ハットングモ科
Stenochilidae カレイトグモ科
Archaeidae アゴダチグモ科
Nicodamoidea アカクログモ上科