クモ
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糸で網を張るクモも網を作らないクモもおおむね巨大な脳を持っていて、網を張る・張らないで目立った差はない[4]
消化系

消化管は大きくは前腸(fore-gut)、中腸(mid-gut)、後腸(hind-gut)からなる。前腸と後腸は外胚葉性で、中腸は内胚葉性である。
前腸部

頭胸部に収まる部分である。口に続いて咽頭(pharynx)、食道(oesophagus)、吸胃(sucking stomach)からなる。この部分では消化は行われない。

クモ類はあらかじめ体外消化するため、口からは液体のみが取り込まれる。咽頭や食道は二枚の、吸胃は三枚のキチン板を備え、特殊な筋肉とつながっているそれらを動かして食物を吸い込む働きを持つ。なお、これらのキチン板は脱皮の際には完全に外れる。
中腸部

これは頭胸部と腹部にまたがる部分である。吸胃から後方に続く部分は、頭胸部の後半部から左右に突出し、それぞれ前に向かって胸部前方に至り、群によってはその先端部で融合する。この部分を前出分腸(thoracenteron)と言い、ここからは付属肢の基部に向かって嚢状に突き出ている。この部分を分腸枝(lateral ceaca)という。この部分では消化が行われていると考えられている。

腹柄を通り抜けるとそれに続く中腸は大きく膨らんで腹部背面近くを通る。この部分では数対の分枝が出ており、これを腺様中腸(glandular mid-gut)と言い、さらに細かく分枝して腹部の心臓の両側に大きな固まりとなる。ここでは消化と吸収が行われると考えられている。クモが餌を取るとすぐにこの部分に送られ、腹部が膨大する。
後腸部

中腸末端に左右一対のマルピーギ管がつながっており、さらに膨らんで糞嚢 (stercoral pocket) となっている。最後の部分は直腸(rectum)で、そのまま肛門に続く。
呼吸器系

クモ類の呼吸器としては、書肺気管がある。特に前者は付属肢由来であると考えられる。
書肺

書肺(book lung)は、クモ類とその近縁の独特の呼吸器官である、肺葉片が偏平で、それが並んでいる様子が書物の頁のようであることから、その名がある。
気管

書肺を2対を持つ群と、ユウレイグモ科などでは気管(trachea)を欠くが、それ以外のものでは腹部の腹面に気管気門が開き、そこから体内に細長い気管が伸び、分枝して緒器官の間を通る。その先は頭胸部にまで伸びるものもある。気管気門は書肺と糸疣の間にある。
循環系

他の節足動物と同様に開放血管系であり、動脈の先端から血液は細胞間(血体腔)へ直接流れ出て血リンパとなり、再び心門から循環系へ取り入れられる。心臓は腹部背面にあり、腹部と頭胸部へは動脈が走る。
心臓

心臓は細長く、腹部背面にあって、前の端からは前行動脈(aorta)、両側には側腹動脈(lateral abdominal artery)、後ろへは尾行動脈(caudal artery)が出る。心臓は囲心嚢(pericardium)に包まれており、心臓との間の空間を囲心腔(pericardial cavity)という。側面には心門(cardiac ostia)があり、ここから体腔を流れる血液が取り入れられる。心門の数はハラフシグモ類では五対あり、派生的な群では少なくなる傾向があり、例えば普通のクモの多くは三対である。心臓の周囲には対をなす心靭帯(cardiac ligament)があり、これが心臓の動きに関係していると考えられている。
血管

前行動脈は腸管の背面にあり、腹柄を通って頭胸部に入り、吸胃の上で左右の小動脈に分かれ、さらに細かく分かれて付属肢などに入り込む。側腹動脈、尾行動脈はそれぞれ枝分かれして腹部の諸器官の間に広がる。

なお、腹部に流れ出た血液のうち、書肺を通ったものはそこから心臓へ向かう血洞を通って囲心腔へ入る。この血洞を肺静脈(pulmonary vein, dorsal lacunae)と言い、クモ類の体内では唯一の静脈である。これは酸素を多く含んだ血液を優先的に心臓へ送り、全身へ送り出す仕組みである。
排出器官

排出器官としては、マルピーギ管と脚基腺がある。
マルピーギ管

マルピーギ管(Malpighian tube)は、腹部後半の中腸の背面部に分枝しながら伸び、中腸の後部に口を開く。体腔液中から不純物をくみ出す働きがあるとされるが、詳細は不明である。なお、昆虫に見られる本来のマルピーギ氏管が外胚葉起源であるのに対して、クモ類のそれは内胚葉である中腸より分化したものであるから、生物学的に相似ではあるが相同ではない。
脚基腺

脚基腺(Coxal gland)は、歩脚の基節の間にあり、腎管の一種と考えられる。原始的なクモ類では、この器官はよく発達しており、排出小嚢となって第一脚、第三脚の後方に口を開き、ここから排出物を出す。しかし多くの普通のクモ類では退化傾向が著しい。
生態

基本的に陸上性の動物で、多くの種類が砂漠高山森林草原湿地海岸などあらゆる陸上環境に分布している。これほど多彩な環境に分布があるというのは、現在多くのニッチを昆虫類に取って代わられた鋏角類の中でクモとダニだけである。ただし淡水にせよ海水にせよ、水際までは結構種類がいるが、水中生活と言えるものは、ミズグモただ1種だけと言ってよい。海ではヤマトウシオグモなどが潮間帯まで進出しているが、満潮時には巣内に隠れて過ごすものである。その点、ミズダニなど水中生活の多くの種を含むダニ類の方がより多くのニッチに適応している。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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