クジラ
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ノルウェーなど北欧でも鯨が魚を追い込んで豊漁をもたらすとの伝承があり、これもイワシクジラにSei(サイ)という魚が付き、それを集めるとされている[11]。なお、北欧の事例については後にはキリスト教と結びつけられて、神が漁獲の助けとしてクジラをもたらしてくれているとの説明が教会関係者によってされたこともあったようである。ある教会関係者は、漁民が争いごとを起すと、神の不興を招いてクジラが助けてくれなくなるとの説明をしているが、一般的理解であったかどうかは不明である。
ベトナム
ベトナムではクジラのことを ca ong (カー・オン)と呼んで古くから信仰対象としてきた。ca は「魚」の意。修飾語の ong は漢字「翁」に由来し「おじいさん」の意味だが、年長男性一般への敬称としても汎用される言葉。全体として「おやっさん魚」または“Sir fish”(魚卿)とでも言うべき意味になるが、いずれにしても敬意と親愛の情がこめられた呼び名である。
アボリジニ
オーストラリアの北海岸やその周辺の島々に住むアボリジニバンドウイルカトーテムとして神格化し、シャーマンと交信して豊漁をもたらすとされる[12]
日本

アイヌ民族は寄り鯨をもたらすとしてハクジラ(歯鯨)類のシャチを沖の神としており、同様の例として捕鯨地であった石川県の宇出津(うしつ)でも、捕鯨対象の鯨を追い込んでくれるシャチを「神主」と呼んでいた。

日本では鯨は捕獲の対象であると同時に信仰の対象であった。
恵比寿との同一視
恵比寿日本では、鯛と釣竿を持つ姿で知られ漁業でもある「恵比寿」との同一視がなされた。由来については諸説あるが、現在でも漁師が、鯨にカツオがつく様子を「鯨付き」と呼ぶように、魚群の水先案内として鯨類を目印としていて、その魚群を見つけ出す力を神聖視していたためといわれる。東北近畿九州の各地方をはじめ日本各地で、鯨類[注釈 2]を「エビス」と呼んでいて、恵比寿の化身や仮の姿と捉えて「神格化」していた。これらはニタリクジラカツオが付いたり、イルカキハダマグロがつくように、鯨類に同じ餌(鰯などの群集性小魚類)を食べる魚が付く生態から生まれた伝承であると考えられ、水産庁の加藤秀弘はニタリクジラとカツオの共生関係および、えびす信仰との共通点を指摘している。
漂着神
日本において「寄り鯨」・「流れ鯨」[注釈 3]と呼ばれた漂着鯨[注釈 4]もエビスと呼んで、後述のような資源利用が盛んであり、「寄り神信仰」の起源ともいわれている。特に三浦半島能登半島佐渡島などに顕著に残り、伝承されている。寄り鯨の到来は、七浦が潤うともいわれ、恵比寿が身を挺して住民に恵みをもたらしてくれたものという理解もされていた。もっとも土地によって逆の解釈もあり、恵比寿である寄り鯨を食べると不漁になるという伝承も存在した。
水神
海浜地域において海上の安全や大漁祈願などの「漁業の神」として祀っているが、幾つかの地域では内陸部においても河川水源の近くにある岩や石を鯨と見立てて、鯨石や鯨岩と呼び、治水や水源の「水の神」として祭っているところもある。
捕鯨詳細は「捕鯨」、「捕鯨文化」、および「捕鯨問題」を参照

太地町 - 和歌山県。日本における捕鯨発祥の地であると言われている。

えびす海豚参詣

鯨塚/鯨墓

水産庁/日本鯨類研究所

反捕鯨団体(グリーンピースシーシェパード

鯨の利用
鯨骨詳細は「鯨骨」を参照クジラの骨格標本

鯨骨(クジラの骨)は先史時代から世界各地で狩猟具として加工利用されてきたことが、貝塚の発掘から判明している。

日本においては縄文時代弥生時代の貝塚から狩猟具だけでなく、工業製品を加工する作業台や、宗教儀式で使われたと推察される装飾刀剣が発見され、色々な形でクジラの骨の利用がなされてきた。

江戸時代には鯨細工として根付をはじめさまざまな工芸品を生み出し日本の伝統文化として受け継がれている。近代において、マッコウクジラの歯は、象牙などと同様に彫り物などの工芸品に加工されることがある。パイプ印材などに用いられた例がある。

古来からイヌイットは木の育たない環境で生きてきたため、住居の骨組みにクジラの骨を使っている。また近年ではカナダアメリカの先住民であるイヌイットや、ニュージーランドの先住民であるマオリが、歴史的にクジラを利用してきた経緯から、クジラの歯や骨を加工した工芸品を作製している。

イッカクの牙は、中近世では薬として用いられた(ただし、一角獣の角とされ、鯨の歯であることが知られずに使われることも多かった)。
鯨肉詳細は「鯨肉」を参照

古くからクジラから採取した肉や皮を食べる習慣がある国や地域が存在する。日本インドネシアフィリピンノルウェーアイスランドグリーンランドフェロー諸島アラスカカナダなどであり、民族的・文化的な伝統の食材として、調理法も多岐に渡っている。日本でも多様で高度に洗練された調理法が存在し、和食文化の重要な一部分を占めている。食用部位も赤身の肉のみならず、脂皮や内臓、軟骨など国や地域によって多様である。


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