クジラ類は全て水生であって主に海に生息するが、カワイルカ類など一部のものは川や汽水域に生息する[17]。現生動物としては体長や体重が最大のグループを含み、特にシロナガスクジラは動物として史上最大の質量(体重約130t)を誇る。一方で、クジラ目の中で最も小さいのはコガシラネズミイルカであり、体長は約1.5m、体重は50kg程度に過ぎない。魚類やイカ類などの頭足類を食べるハクジラ類と、オキアミなどのプランクトンや群集性小魚類を食べるヒゲクジラ類では食性が異なるが、全て広い意味での肉食性である。ハクジラ類は海の生態系の最上位のほか、高位の多くを占め、ヒゲクジラ類も低位消費者の最大種を含む一大グループとして多様な進化に成功したものである。
クジラ類の耳には耳殻は無く、単なる直径2mm程度の穴であり、耳垢がつまっている。ヒゲクジラでは耳垢の層を数えることにより、ある程度の年齢を推測することができる[18]。これに対し、ハクジラの年齢推測には歯が用いられる[19]。脂肪を蓄え、それによって水分を作ってすごす。汗腺は無い。頭部の背側に呼吸のための噴気孔を有す。噴気孔はヒゲクジラでは2個、ハクジラでは1個である。噴気孔は開閉が可能であり、頭部を水面上に出して噴気孔を開けて空気を吸い、それ以外の潜水する時などは噴気孔を閉じて水の浸入を防ぐ[20]。いびきをかくこともある。糞は固形分が少なく液状に近い。哺乳類であるので恒温動物であり、体温は35-36℃で一定に保たれ[21]臍(へそ)もある。乳首は2つあり、風邪もひく。泳ぐ速度は時速 3kmから50km程度。これまで知られている最高年齢としては、ナガスクジラで114歳、シロナガスクジラで110歳となっており、小型種になるにつれて最高年齢は低くなる傾向にある[22]。 鯨類は、古鯨類(ムカシクジラ類)、ハクジラ類、ヒゲクジラ類の3つの分類群に大別されるが、古鯨類に属する種は全て絶滅しており、現生はヒゲクジラ小目とハクジラ小目の2小目である。ハクジラ類とヒゲクジラ類は一時単系統性が疑われたこともあるが、単系統ということで決着が着いた。「ハクジラ類・ヒゲクジラ類以外の全て」という形の古鯨類は単系統ではないため[23]、廃したり、いくつかの科を除外したりすることも多い。 ハクジラ類は古鯨類と同様に獲物を捕えるための歯を持っている。また、ハクジラ類は、自分の出した音の反射を利用して獲物や障害物を探る反響定位(エコーロケーション)のための器官、すなわち、上眼窩突起、顔の筋肉、鼻の反響定位器官を発達させていることを特徴とする。イルカ、シャチ、イッカクなどもハクジラ類に属する。一方、ヒゲクジラ類は、口内にプランクトンやオキアミなどをこし取るための櫛(くし)状の髭(ひげ)板を持つのが特徴で、歯は消失している[24]。鯨類の代表的な種 鯨類を無肉歯類とともに亜目として類鯨目Ceteに置き、ハクジラ類とヒゲクジラ類を小目として正鯨下目Autocetaにまとめることもあったが、のちに分子系統推定によって鯨類と偶蹄類の類縁関係が認められるようになり、無肉歯類との類縁性は否定されている[25]。 かつてはカワイルカを総括するカワイルカ上科 Platanistoidea を置くことがあったが、側系統であることが判明し、分割された。
分類と系統
(1.3.6.7.はヒゲクジラ、2.4.5.8.はハクジラ)
1. ホッキョククジラ
2. シャチ
3. セミクジラ
4. マッコウクジラ
5. イッカク
6. シロナガスクジラ
7. ナガスクジラ
8. シロイルカ
分類
†古鯨類 Archaeoceti
†パキケトゥス科 Pakicetidae
†アンブロケトゥス科 Ambulocetidae