ギレルモ・デル・トロのピノッキオ
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2012年2月にピノッキオ、ゼペット、クリケット、マンジャフォーコ(英語版)、キツネ、ネコのコンセプトアートが公開され、5月17日にはグリムリーの後任としてデル・トロが共同監督を務めることが発表された[17]。7月30日にシャドーマシーン(英語版)がアニメーション製作を手掛けることが発表された。当初は2013年または2014年公開を目指していたが[18]、企画は開発地獄に陥り、製作は中断した。

2017年1月23日にパトリック・マクヘイル(英語版)がデル・トロと共同で脚本を執筆することが発表され[19]、8月31日には第74回ヴェネツィア国際映画祭に出席したデル・トロが「3500万ドル持っていてメキシコ人を幸せにしたいと思っている人。私はここにいますよ」と発言し、資金調達が難航していることを示唆している[7]。11月8日にデル・トロは製作費を融資するスタジオが現れず、企画が頓挫したことを明かした[20]。一時期、ロビンスはコスト削減のためにジョアン・スファールを起用して2Dアニメーションで製作することを検討していたが、デル・トロの「製作費が高くてグリーンライトが出難いとしても、ストップモーション・アニメーションで製作するべきだ」という反対に遭い断念している[21]。しかし、2018年10月22日にNetflixが権利を取得したことで企画が再始動したが、同時にパテが企画から離脱している[22]。開発期間の大半はグリス・グリムリーと美術監督のカート・エンダーレ、ガイ・デイヴィス(英語版)が手掛けるキャラクターデザインの設計に費やされた。ピノッキオ、ゼペット、セバスチャン・J・クリケット、ヴォルペ伯爵、スパッツァトゥーラの人形製作は、デル・トロが「世界一の工房」と絶賛するイングランドのマッキノン&サンダース・ストップモーション・パペット・ファームが手掛けている[14]
脚本私としては、生身の人間にならなければ本当の人間にはなれないという考えには疑問がありました。人間になるために必要なことは、人間らしく振る舞うことではないかと。愛情を手に入れるために変身が必要とは信じられなかったのです。映画の根本的な考えについて語るギレルモ・デル・トロ[16]

デル・トロはカルロ・コッローディの『ピノッキオの冒険』とメアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』との間に共通するテーマ(善悪の判断や道徳、倫理、愛情、生命といった人間らしさを形作る要素を自らの力で見つけ出すことを望む父親によって生み出された「子供」が現実世界に放り出される)を感じており、『フランケンシュタイン』の影響を受けて『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』はゴシック調に演出されている。一方、映画はファミリー層向けに製作されており、デル・トロは親子が世代を超えて繋がり、子供たちが「思いやりの心」を理解することを期待していると語っている[16]

物語の舞台はベニート・ムッソリーニが支配するファシズム時代のイタリア(英語版)に設定されており、「市民が従順な操り人形として生きる世界」にピノッキオが生まれるが、ピノッキオは大人たちとは異なり自由奔放に振る舞おうとする。これは、『ピノッキオの冒険』の根底には大人に従う「良い子」であることを美徳とする価値観があると感じていたデル・トロが、映画におけるピノッキオの美徳を「逆らうこと」として、自己を見つけ出し、命令や言いつけに従うかを自分自身で判断することにフォーカスを当てたためである[16]。グスタフソンも、ムッソリーニや死の精霊といった相手に対しても規則や権威に服従しないピノッキオのキャラクター性に魅力を感じたという[14]。ゼペットとピノッキオの心情的な対立も、行儀の良かった息子カルロの代わりを求めるゼペットと自由奔放なピノッキオという構造で描かれており[16]、『デビルズ・バックボーン』『パンズ・ラビリンス』『シェイプ・オブ・ウォーター』など歴代のデル・トロ監督作品に共通する「異形の者の人間性の探求」というテーマが描かれている[14]
キャラクター造形メキシコ国立映画センターで開催された「メキシコの木でできたピノッキオ展」のオブジェ

ピノッキオはゼペットの息子カルロの墓の側の木から生まれた人形で、「もう一度父親になりたい」と願うゼペットの求めに応じる形で誕生する。しかし、大人しくて行儀の良かったカルロと異なり、ピノッキオは乱暴者で自由奔放な性格をしている。セバスチャン・J・クリケットは博識な性格でピノッキオの良心になろうと奮闘するが、そのためにピノッキオを迷わせる存在として描かれる。デル・トロは、彼のキャラクターについて「クリケットは何度も踏み潰されてしまうが、それは彼自身が愛と謙虚さを見つけるための旅となっているのです」と語っている[16]。また、デル・トロはピノッキオ、クリケット、妖精以外の原作にあるファンタジー要素を取り除き、「極力、現実世界に近付けようとした」とも語っており、原作のキツネとマンジャフォーコの役割を集約したキャラクターとしてヴォルペ伯爵を作り出した[16]。ヴォルペ伯爵は宮廷で権勢を振るっていた大貴族だが、落ちぶれて人形劇一座の座長をしており、ピノッキオを利用して失った地位を回復しようと企むキャラクターになっている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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