ギター
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スティール弦の芯線には、弾性を備えた鋼鉄線(ピアノ線)が使用される[20][21]。高音側の細い弦は芯線のみの1本の針金状であるが、低音側の弦は芯線に金属線を巻き付けたもの(巻き弦)を使用する[22]。巻き付ける金属線(巻き線)にはニッケルステンレスブロンズフォスファーブロンズなどが用いられる。

一般的には、スティール弦アコースティックギター用の弦セットでは3弦から6弦が巻き弦に、エレクトリック・ギター用の弦セットでは4弦から6弦が巻き弦になる。

弦は太いほど音も太く迫力があるものになるが、押弦に必要な力も大きくなり、チョーキングの難度も上がる。一般的にスティール弦アコースティックギターではライトゲージやミディアムゲージを使うプレイヤーが多い。エレクトリック・ギターではライトゲージ・スーパーライトゲージ・エキストラライトゲージが一般に多く使われる。しかし、音の迫力を求めてより太い弦を使用するプレイヤーも多い。
コーティング弦

スティール弦の弦表面にエナメルやテフロンなどの薄い膜をコーティングした弦で、錆や腐食に強く、通常の弦よりも丈夫で長持ちする。手に汗をかきやすい演奏者や、頻繁に弦交換をしたくない演奏者に好まれる。価格は通常の弦よりも高額である[23]
チューニング(調律)

ギターの調律はピアノなどとは異なり多くは演奏者自身で行われる。曲目に合わせて演奏中に行われることもある。弦を保持するフレームが木材であるため調律は狂いやすく、演奏前に調律されることが多い。プロの演奏家の場合はピアノと同様に「テクニシャン」と呼ばれる専門家が行う場合もある。
一般的なチューニング

各弦のチューニングも様々なものが使われている。通常は低音側(6弦)の弦から「E-A-D-G-B-E」(82.41Hz-110Hz-146.83Hz-195.99Hz-246.94Hz-329.63Hz)[注釈 1]とする「スタンダード・チューニング」が一般的である。このチューニング方法は「レギュラー・チューニング」とも呼ばれる[24]

これは多くの曲に対応できて、数多くのコード音階などを弾く場合のチューニングとして定着している。
特殊なチューニング

以下に挙げるような特殊なチューニングは、「変則チューニング」と呼ばれることが多い。
オープンチューニング系

全ての弦を開放弦で弾いたとき、あるコードの音が出るチューニングを「オープン・チューニング」と呼ぶ。例えば「オープンGチューニング」とは、全ての弦を開放弦で弾くとGのコードとなるチューニングである[25]。いずれもロックブルースフォーク系で使われることが多い。特に、スライドギターでは使用例が多い。
D-A-D-F♯-A-D
オープンDチューニング。
E-B-E-G♯-B-E
オープンEチューニング。
D-G-D-G-B-D
オープンGチューニング。ローリング・ストーンズキース・リチャーズは、このチューニングから6弦を外して5本弦でプレイし、多くの曲を生み出した。
ダウンチューニング系

全ての弦を通常のチューニングと同じ音程間隔で音を下げていくチューニングを「ダウンチューニング」と呼ぶ。通常よりも低音で構成されるため、音色に「重厚感」や「虚脱感」などを表現しやすい。
E♭-A♭-D♭-G♭-B♭-E♭
ハーフステップダウン・チューニング。
ロックでは頻繁に用いられる、全ての弦を半音下げたチューニング。シャープやフラットが5個以上の調の曲で使われる場合が多い。
D-G-C-F-A-D
ホールステップダウン・チューニング。ヘヴィメタルとそのサブジャンルで頻繁に用いられる、全ての弦を一音下げたチューニング。

これらの他にも、全弦一音半下げ、二音下げ、二音半下げ……と続く[注釈 2]
ドロップチューニング系
D-A-D-G-B-E
ドロップDチューニング。
フォークでよく使われる。1?5弦はスタンダードチューニングで、6弦(最低音弦)のみ、1音下げてDとなっている[24]。クラシックギターにおいてはニ長調やニ短調の曲などでよく用いられ、このチューニングを前提とした作・編曲は枚挙に暇がないほど多い。その意味では「第2のレギュラー・チューニング」と呼んでも良いと思われるほどである。このチューニングは最低音を下げることによる低音の厚みや低音側の3弦でのパワーコードの押弦が容易になるなどの理由でハードロック、ヘヴィメタルでも用いられる。またこのチューニングを行った上での全弦半音下げ、全音下げ、一音半下げなどのチューニング法もある。
D-A-D-G-B-D
ダブルドロップDチューニング。
D-G-D-G-B-E
ドロップD&Gチューニング。クラシックギターのレパートリーでの曲数は多いとは言えないものの、このチューニングを前提とした作・編曲として、タレガ「タンゴ」、バリオス「郷愁のショーロ」、およびアルベニス「セビリア」やグラナドス「ゴヤの美女」のギター編曲版などがある。意外とポピュラーなチューニングである。
その他のチューニング
D-A-D-G-A-D
レギュラーチューニングの6弦、2弦、1弦を一音ずつ下げたもの。その弦の音程から「ダドガド(ダドガッド)・チューニング
」と呼ばれる。長調とも短調とも区別できない特殊なチューニングながら、幅広く応用が利くため、一部では多用され愛好されている。特にアイリッシュ音楽などの民族系の楽曲に用いられることが多い。レッド・ツェッペリンの「カシミール」は、このチューニングの代表的な楽曲である。
E-A-D-G-B-E
ナッシュビル・チューニング。3弦から6弦がレギュラーチューニングより1オクターブ上にチューニングされている(12弦ギターの複弦のうち、高音側の弦のみを張った状態に相当する)。日本では石川鷹彦22才の別れかぐや姫)のバッキングに使用してその名が知られるようになった。近年はナッシュビル・チューニング用の弦セットも販売されている。

その他、各コードに合わせたチューニングやそれらを組み合わせたバリエーションもあり、独自のチューニングを用いて演奏するミュージシャンも少なくない。スラックキーギターでは、ミュージシャンごとにチューニングが違うと言われるほどである。またスティール・ギターでは、長和音ではないAm、EmやC6などのオープン・チューニングも多い。
その他のギターのチューニング

レキントギター(英語版)、は本来スペイン語のquintoから造語されたもの。つまり5度の意味で普通のギターより完全五度上のB-E-A-D-F#-Bに調弦される。ただし日本に伝わったころこのギターに張る弦がなく、太い弦では切れやすいため、完全四度上のA-D-G-C-E-Aに調弦された。主な演奏者はロス・インディオス・タバハラス、トリオ・ロス・パンチョスのアルフレード・ヒルである。

ギタレレは普通のギターの完全四度上のA-D-G-C-E-Aで調弦される。

テナーギターと呼ばれるものもあり、これは一般にC-G-D-Aで調弦される四弦のギターで、多様な変則チューニングに対応できることから1960年代のフォーク・シーンで愛用された。

一五一会・音来(ニライ)はG-D-G-Dが基本だが、和楽器の要素も持つためF-C-F-Cなど弦どうしの度数(一度・五度・オクターブ上の一度・その上の五度、が基本)さえ守られていれば多様なチューニングが可能。4度高いチューニングが基本となる奏生(かない)も同様。

19世紀末に考案され、コントラバスのチューニングと同一のキタローネ(同名の古楽器とは全くの別物)が、1920年代マンドリンオーケストラで活躍したものの、音量の少なさ、楽器の調達難、奏者の確保難などの理由により、やがてコントラバスで代用されてゆく。

アルチキタルラは、マンドローネと同じくA-D-G-Cに調弦され、これもマンドリンオーケストラ用に開発された楽器だが現在では奏者がほとんど見つからない。

鏡の国のギター[26]は大阪芸術大学准教授の中野圭によって発明されたギターで2015年11月にモスクワのDOM Culture Centerで世界初演された。完全五度を基本としたE-B-G-D-A-Eに調弦される。左利きギタリストの為に右利き用の通常のギターを活用してもらえるような発明で通常と左右逆向きに構えて演奏される。特許「弦楽器[27]
その他

制作における技術上・構造上の問題から、各音程について理想とするものから周波数がずれる場合があり、厳密な意味では最適なチューニングは難しい。通常は開放弦の音でチューニングされるが、弦を押さえることで弦に張力(テンション)がかかるためである。エレクトリック・ギターでは各弦の長さ、高さを容易に調整できるため、一般的に、アコースティックギターよりは若干細かいチューニングが可能である。フレットの項目も参照。なお、張力による音程の変化を逆手に取る演奏技術もある。詳しくは後述。
構え方や奏法
基本の構え方

まず演奏時の基本姿勢やギターの保持の方法は、音楽のジャンルやギターの種類などにより異なる。


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