キーウ
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「Kyiv」はウクライナ独立後の1995年に公式のラテン文字表記として定められた比較的新しい綴り方である[15]。2006年10月19日、アメリカ地名委員会がウクライナの首都の公式表記をKyivに変更する決定を発表[16]したが、一方で、文脈上の必然性によってはKiev表記を排除しないとする公式見解を示した[17]

2014年のウクライナ紛争以降、英語圏では旧ソ連時代を想起させる「Kiev」表記が避けられるようになった。2018年10月にウクライナ外務省は「KyivNotKiev」キャンペーンを開始[18]し、2019年6月11日、米内務省アメリカ地名委員会がKyiv表記の標準化を決定した[19]。同委員会は米国連邦政府の作成文書内で使用される地名を統一するために設立されたものだが[19][20]、同委員会が運営する地名のデータベースは国際航空運送協会(IATA)など民間団体も利用しており[注 4]、IATA加盟航空会社の運航先表記にも影響を及ぼすため、この決定は米連邦政府内文書や米国内だけにとどまらず国際的な波及をもたらすこととなった[21]。また文脈によって「キエフ」と記する必要がある場合は、「キエフ」表記を禁止するわけではないことも米国務省から後日言及された[20]。2022年現在は「Kyiv」表記が定着している[22][23][24]

日本ではロシア語に由来するキエフ表記が浸透していた[25]。2009年3月1日、かねてよりウクライナ言語・文化研究会の論文でキーウ表記を用いていた言語学者中澤英彦[26]が同日出版の著書で普及を提唱[27]。2018年9月頃よりウクライナの国営通信社ウクルインフォルムが日本語版においてキーウ表記または「キーウ(キエフ)」とした併記を始めた[28][29]

2019年7月17日に駐日ウクライナ大使館公開書簡によって日本語表記についての問題提起がなされ、その時点では同大使館は翻字・字訳方式に基づく「クィイヴ」の片仮名表記を提唱していた[30]。同年9月に開かれた岡部芳彦を座長とする「ウクライナの地名のカタカナ表記に関する有識者会議」では「ウクライナの地名のカタカナ表記に関してはできる限りウクライナ語に近づけることを目指す[31]」との結論が示されたものの、「Ки?в」においてはクィとヴは義務教育では使用しないため表記の際には避けるのが好ましいという一般の意見や、日本人が実際に発音した時のこと、ウクライナ長期滞在邦人がウクライナ語の固有名詞長音なしで発音することが多いことを考慮して、発音表記・音声表記のクィーイウからキーイウ、キーイウを日本人が発音した場合にはキーウとなるという結論に至った[31]。また、キーウ以外にもキイフ、キエフの3例の併用を可とすることも全会一致で合意した[31]

同年11月頃よりBBCニュースが日本語版において「キーウ(キエフ)」とした併記を始めた[32]。以降は歴史・地理を扱う新書等の一般的な刊行物において、ウクライナ語に基づく独自表記とした上でキーウに言及する例が散見されるようになった[33]。しかし「キーウ」表記が一般に広まることはなく、日本政府による表記も変更されなかった。

2022年、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、英語圏と同様の理由で日本国内の報道機関や国会の与野党議員も積極的に「キエフ」表記を「キーウ」に改める動きを見せるようになり[34][35]、同年3月31日には日本政府も日本語表記を「キーウ」へ変更することを正式発表した[36][37]。これに倣い、マスメディアもキーウ表記への変更を行った[37]。他にキイフ、キーフ、キーイフとも表記される[31][38][39]
地理キーウ市の航空写真。街の中心をドニプロ川が流れ、西岸には旧市街が、東岸には新市街が広がる。

キーウはウクライナの北部に位置し、ドニプロ川(ドニプエル川)を挟んで広がっているが、旧市街はドニプロ川右岸の小高い丘の上にある。それに対し低地である東岸側は高層建築物の目立つ新市街となっている。川の中州にはかつてドイツ軍に破壊された村の跡に娯楽施設ヒドロパールク(ウクライナ語版、英語版)がつくられている[40]

市西部にはコチュビンスケというキーウ州ブチャ地区飛び地が存在する。ウクライナ鉄道南西鉄道(ウクライナ語版)キエフ=コーベリ線はこの飛び地をまたいでいる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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