キング・コング_(1933年の映画)
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これを受けたクーパーは『Creation』の製作を中止し、同作のスタッフを『キング・コング』の製作に動員した[13]
脚本『キング・コング』のポスター

脚本家にはイギリスのベストセラー作家で、PKOに採用されたばかりのエドガー・ウォーレスが起用された。クーパーはウォーレス作品の商業的な魅力を理解しており、映画を「エドガー・ウォーレスの小説を原作にした映画」として宣伝することを計画した。ウォーレスは1932年1月1日から脚本の執筆を始め、同月5日に初稿『The Beast』を完成させた。クーパーは初稿に多くの追加作業が必要と考えていたが、ウォーレスは脚本修正を始めた直後の2月10日に死去している[8][14]。ウォーレスの初稿は『キング・コング』には最終的に一切採用されなかったが、クーパーは契約時の約束を守り、『キング・コング』にウォーレスの名前をクレジットしている。

クーパーはウォーレスに代わり、『猟奇島』で脚本を手掛けるジェームズ・アシュモア・クリールマン(英語版)を起用し、共同で『The Eighth Wonder』と題した複数の草稿を書き上げた。ウォーレスの初稿には「脱走した囚人を船で運ぶ」というシーンがあり、彼が描いた「猛獣ハンターのダンビー・デナム」は「映画監督カール・デナム(英語版)」に、ヒロインの「シャーリー」は「アン・ダロウ」に、「シャーリーの恋人である囚人ジョン」は「一等航海士ジャック・ドリスコル」にそれぞれ変更された。デナムのキャラクターは、当時アフリカで危険動物を捕獲しヨーロッパで公開して時の人となっていたドイツの動物商カール・ハーゲンベックがモデルとなっている[15]。また、このころに「美女と野獣」というコンセプトが脚本に盛り込まれた。コングが逃亡する場所はマディソン・スクエア・ガーデンを予定していたが、ヤンキー・スタジアムを経て、最終的にブロードウェイ劇場に変更された。ウォーレスの初稿にはコングの愛嬌を強調するシーンが存在したが、クーパーは「コングが硬派でタフな存在であれば、彼が死んだ時により素晴らしく悲劇的なシーンになる」と信じてウォーレスの描いたシーンを削除した[14]

その後、時間的な制約からクリールマンは『The Eighth Wonder』から離れて『猟奇島』の脚本執筆に専念することになった。彼の離脱後、RKOのスタッフライターのホレス・マッコイがクーパーに呼ばれ、「島の先住民」「巨大な壁」「生贄の美女」などの要素を脚本に盛り込んだ。レオン・ゴードンも執筆に参加していたが、2人とも名前はクレジットされていない[16]。クリールマンは作業に復帰した際に「脚本に大げさなコンセプトが多く含まれている」という理由で、マッコイが盛り込んだ「神話的な要素」に拒否感を示したが、クーパーの判断で脚本に残すことになった。一方、セルズニックやRKO幹部は観客を飽きさせないためにコングを映画の早い段階で登場させるように求めたが、クーパーは「サスペンスフルな展開によって、コングの登場に観客を興奮させることができる」と主張して登場を遅らせるように説得した[17]

クリールマンの最終稿を確認したクーパーは、彼の脚本はテンポが遅くて着飾った台詞や長い説明シーンが多く[17]、製作費が膨大な金額になるような内容になっていると感じた。このため、シュードサックの妻ルース・ローズ(英語版)が修正作業のため呼ばれ、彼女は脚本執筆の経験がないにもかかわらず、クーパーの要望を理解して不要なシーンを削除して脚本のスリム化に成功した。削除したシーンには、コングを髑髏島からニューヨークまで運ぶシーン(修正後は輸送シーンの説明がなく、すぐに髑髏島からニューヨークに場面転換する)がある。彼女は脚本修正の際、カール・デナムにクーパー、ジャック・ドリスコルに夫シュードサック、アン・ダロウに自分自身の人格を反映させている[18]。また、台詞の変更も行い、新たにカール・デナムとアン・ダロウがニューヨークで初めて出会うシーンを作り出した。クーパーはローズの修正稿を高く評価し、『Kong』のタイトルを付けて製作を承認した[19]。監督はクーパーとシュードサックが共同で務めることになったが、2人の製作スタイルが正反対(クーパーは時間をかけて丁寧に行い、シュードサックはスピーディーに行うスタイルだった)だったことから、最終的に2人は別々に作業を行うことに決め、クーパーはオブライエンのストップモーション・アニメーションと特撮作業の監督、シュードサックは俳優の会話シーンを監督した[20]
キャスティング.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}フェイ・レイロバート・アームストロングブルース・キャボット

フェイ・レイは『四枚の羽根』に出演したことでクーパー、シュードサックと面識を得ており、彼女は『猟奇島』でもヒロイン役に起用されている[21]。『キング・コング』の製作が承認されると、クーパーはコングの黒い毛との対比を意識してヒロイン役にはブロンドの髪の女優を求め、ドロシー・ジョーダン(英語版)、ジーン・ハーロウジンジャー・ロジャースなどを候補に考えたが、最終的にフェイ・レイを起用し、彼女にブロンドのカツラを被せて演技させた。フェイ・レイは脚本の内容よりも、クーパーの熱意に押されて出演を決めたという。また、自伝『On the Other Hand』によると、クーパーからは「ハリウッドで最も背が高く、色が黒い主演俳優」との共演を伝えられた。彼女はクラーク・ゲーブルのことだと思っていたが、直後にエンパイア・ステート・ビルディングに登るコングの写真を見せられたという[21]

ロバート・アームストロングもフェイ・レイと同じく『猟奇島』に出演しており、撮影中にクーパーとシュードサックの側近の地位を手に入れ、『キング・コング』ではカール・デナム役に起用された[21]。1933年代初頭のアニマル映画の興行成績が不振だったことから、『キング・コング』ではジャングルや動物といった要素よりも恋愛要素が強調され、デナムの腕の中にいるアンの宣伝画像に「Their Hearts Stood Still...For There Stood Kong! A Love Story of Today That Spans the Ages!」というキャッチコピーが添付された。映画ではアン(フェイ・レイ)とドリスコル(ブルース・キャボット)の恋愛が描かれたが、宣伝では無名のキャボットではなくスター俳優の地位を確立していたアームストロングの存在が強調されていた[22]。一方のブルース・キャボットはセルズニックに才能を見出されて俳優デビューし、『猟奇島』のオーディションでクーパーと出会った。彼はそのまま『キング・コング』のオーディションに参加したが、「ジョエル・マクリーのスタントマン」のオーディションと勘違いして辞退しようとした(当初、ドリスコル役にはマクリーが検討されていた)。クーパーの説明で誤解が解けたキャボットはオーディションを受け、ドリスコル役に起用された[23]。キャボットはデビューして間もなかったため演技が未熟で、『キング・コング』への出演については「正しい場所に立ち、言われた通りのことをやってギャラをもらった」と語っている[24]

ベンチャー号の船員役にはジェームズ・ダイム(英語版)などスタントマンや端役俳優が多く起用され[25]、二等航海士ブリッグス役にはジェームズ・フレイヴィン(英語版)が起用された。この他にコングに襲われた先住民の子供の母親役をエッタ・マクダニエル(英語版)、ニューヨークのホテルでコングに殺される女性役をサンドラ・ショー(英語版)が演じている[26]。クーパーとシュードサックはそれぞれ飛行機のパイロット役、射撃手役として出演しているが、クレジットはされていない[27]
コングの造形キングコングとフェイ・レイブロントサウルスのアーマチュア

RKOが試作版製作を承認後、マーセル・デルガド(英語版)はクーパーとオブライエンの指示とデザインに基づき、身長18フィートのコング(当時の名称はジャイアント・テラー・ゴリラ)を1フィート=1インチの縮尺でアーマチュアを製作した[28]


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