キング・コング_(1933年の映画)
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RKOが試作版製作を承認後、マーセル・デルガド(英語版)はクーパーとオブライエンの指示とデザインに基づき、身長18フィートのコング(当時の名称はジャイアント・テラー・ゴリラ)を1フィート=1インチの縮尺でアーマチュアを製作した[28]。模型はアルミニウム、発砲ゴム、ラテックス、ラビットファー(英語版)を素材にした18インチの模型が2体、ニューヨークのシーンで使用する同素材で作られた24インチのアーマチュアが1体、エンパイア・ステート・ビルディングのシーンで使用する鉛と毛皮で作られた小型アーマチュアが1体作られている。この4体のうち2体(1体はテスト撮影用)が現存しており、それぞれピーター・ジャクソンとボブ・バーンズ3世(英語版)が所有している[29]。2009年にはロンドンクリスティーズで12万1000ポンド(20万ドル)でアーマチュアが落札された[30]

コングの体形は、実際のゴリラの腹部と尻が突出したコミカルな体型を解消するため、スリム化されている。唇、眉毛、鼻はゴム製、目はガラス製で、アルミ製の頭蓋骨に開けられた穴に通した細いワイヤーで表情を動かしている。コングのゴム製の皮膚は撮影の際の照明で乾燥してしまうため、皮膚を何度も交換して顔の造形を作り直していた[31]。頭部、首、上胸部から成る上半身のアーマチュアは木、布、ゴム、熊皮から作られ、デルガド、E・B・ギブソン、フレッド・リースが手掛けた[32]。模型の内部では3人の男性スタッフが金属製のレバーや蝶番、エアコンプレッサーを使用して表情を動かしていた。牙の長さは10インチ、目玉は12インチの大きさで作られている。この巨大アーマチュアは台車で撮影セット間を移動していた。完全なコングの模型を作った場合、大きさは30-40フィートになると推定される[33]。右手と右腕のアーマチュアはスチール、スポンジゴム、ゴム、熊皮で作られた[34]。洞窟でコングがドリスコルを掴むシーンでは、コングの片方の腕はクレーンに取り付けられ、グリップ操作しており、もう一方の腕は指の関節が動くようになっており、アンを掴むシーンで使用されたコングの足も腕と同素材で作られ、クレーンに取り付けて人間を踏み潰すシーンで使用された[34]

謎の島の恐竜はコングと同じ手法でデルガドが作成し、アメリカ自然史博物館にあるチャールズ・R・ナイト(英語版)の壁画を参考にしている。アーマチュアはRKOのマシンショップで製造され、綿、発砲ゴム、ラテックスシート、液体ラテックスが使用されている。恐竜の模型は1フィート=1インチの縮尺で18インチから3インチの模型が作られた。いくつかの模型は『Creation』のために作られたものを流用しており、同じ恐竜の模型を2個から3個作ることもあった。ラテックス製の皮膚は長時間照明に当てると損傷するため、ジョン・チェラゾーリは模型を木で複製し、テスト撮影の際に使用していた。彼はアンやドリスコルなど人間の模型も木材で製作しており、この他にベンチャー号や列車、飛行機の模型も作られた[35]
特殊効果キングコングとティラノサウルスブロードウェイ劇場のキングコング

『キング・コング』はストップモーション・アニメーション、マットペイント、リア・プロジェクション・エフェクト(英語版)、ミニチュア撮影などデジタル時代以前の特殊効果が数多く使用された画期的な映画として知られている[36]。謎の島に登場する有史以前の生物は、ウィリス・オブライエンと彼の助手バズ・ギブソンがストップモーション・アニメーションで作成している[37]。ベンチャー号が到着した時の謎の島の背景はマットペインターのヘンリー・ヒリンク、マリオ・ラリナガ、バイロン・C・クラッベがガラスに描いており、このシーンでは様々な種類の鳥が合成され、船と俳優の背後にリア・プロジェクションされている。ミニチュアセットを用いたジャングルの背景はガラスを複数枚重ねて描くことで、木々が深く生い茂っている印象を観客に与える効果を生んだ[38]

特殊効果チームが最も苦労した部分は、実写部分とアニメーション部分を連動させ、人間と生物が違和感なく同一シーンに共存させることだった。シンプルな部分ではフレームの一部を露光させ、同じフィルムを再びカメラに通した後、フレームの他の部分を別の画像で露光することで違和感を取り除いた。複雑な部分の撮影ではダニング・プロセス(英語版)とウィリアムズ・プロセス(英語版)という2つの技法を用いて、トラベリング・マットという効果を生み出している[39]。ダニング・プロセスは撮影監督のキャロル・H・ダニングが考案したもので、青色や黄色の光を使いフィルターをかけ、そのフィルターをモノクロフィルムに写す技法であり、この効果を得るためにカメラを二重パッキングして使用している。これにより、特殊効果チームは異なる2本のフィルムを組み合わせて合成ショットを作り出せるようになった[40]。この技法は飛行機が墜落するシーンやコングの足元で先住民が逃げ回るシーンで使用された。一方、ウィリアムズ・プロセスは撮影監督のフランク・D・ウィリアムズ(英語版)が考案したもので、カラーライトのシステムを使用せず、ワイドショットにも対応できる。この技法はコングが丸太から人間を振り落とすシーンや、コングが城門を開けるシーンで使用された。このプロセスではプロジェクターとカメラを同期させた初めての装置であるオプチカル・プリンターを採用しており、これにより複数のフィルムを組み合わせて1枚の合成画像を作れるようになった。オプチカル・プリンターを使用することで前景、ストップモーション・アニメーション、実写映像、背景を一つの映像にまとめることが可能となった[41]

リア・プロジェクションは俳優とストップモーション・アニメーションを組み合わせる際に使用された。これは俳優の背後には半透明のスクリーンが置かれ、プロジェクターがスクリーンの裏面に映像を映し出す方法で撮影される[38]。この半透明のスクリーンはシドニー・サンダースとフレッド・ジャックマン(英語版)が発明している。この技法は木の上にいるアンの目の前でコングとティラノサウルスが戦うシーンで使用され、最初にストップモーション・アニメーションを撮影し、そのシーンをスクリーンに映し出す中で木の上にいるアンの実写シーンが撮影された。また、船員たちがステゴサウルスに襲われるシーンも同じ技法で撮影されている。また、オブライエンと彼のチームはミニチュアセットでリア・プロジェクションを使用する方法を考案し、セットの中に小さなスクリーンを組み込み、そこに実写映像を映し出した[38]。撮影中はセット内のスクリーンが燃えないように扇風機が設置され、この技法でコングがドリスコルを掴もうとするシーンが撮影された。

長年にわたり「コングはスーツアクターが演じていた」と一部で報道されていたが[42][43]、映画史家の間では「コングの登場シーンは全てアニメーションで作られた」という認識が定説となっている[44][45]
実写シーンの撮影

1932年5月から6月にかけて『猟奇島』のジャングルセットで初めてコングのシーンが撮影され、この時撮影したシーンの一部はRKO取締役会に提出するテストフィルムに使用された。ジャングルのシーン撮影時には脚本が完成しておらず、台詞の大半がアドリブだった。ジャングルの撮影セットは『猟奇島』完成後に取り壊す予定だったため、クーパーはジャングルのシーンをこの時に全て撮影している。7月にシュードサックはニューヨーク港でエスタブリッシング・ショットの撮影を始め、その間に先住民の村の撮影準備が進められ、ロングアイランドの海軍飛行場では飛行機の離陸・飛行シーンが撮影された。ニューヨークの風景はエンパイア・ステート・ビルディングから撮影したものを使用しており、またビルの所有者から係留用マストの図面を入手し、ハリウッドのサウンドステージに実物大の模型を作り撮影した[46]

8月に島の上陸シーンとガス爆弾のシーンがカリフォルニア州サンペドロで撮影された。先住民の村のシーンはカルバーシティにあるカルバー・スタジオ(英語版)で撮影され、先住民の集落は『南海の劫火』の撮影セットが流用されている。また、島の壁のセットは『キング・オブ・キングス』の撮影セットに巨大な門や銅鑼、原始的な彫刻などを施して使用した。アンが生贄の祭壇に連れて行かれるシーンは数百人のエキストラと350個の照明を使い夜に撮影され、連れて行かれるアンを追うためにクレーンにカメラを取り付けて撮影が行われた。撮影中はエキストラの持つ松明から火災が発生することを危惧したカルバー消防局の隊員たちが周辺に待機していた。撮影終了後、城門や壁のセットは『風と共に去りぬ』で再利用され、アトランタ炎上シーンの撮影で破壊された。ニューヨークでホテルの女性がコングに投げ落とされるシーンは、サウンドステージでコングの多関節ハンドを使用して撮影した。同時にホテルの部屋にいたポーカープレイヤーの男性がコングの顔を見て驚くシーンもコングの上半身模型を使い撮影されたが、このシーンは最終的にカットされている[26]


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