キングコング対ゴジラ
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日米両雄の対決は、1958年に開催された力道山ルー・テーズにちなむものであり、本作品以降、怪獣映画は単独キャラクターものから対決路線へと転換していった[40]。内容や製作体制において、本作品が昭和ゴジラシリーズの礎を築いたとされる[52]

タイトルクレジットのバックの密林、キングコングがゴジラの口に木を突っ込むシーンや女性をさらって国会議事堂によじ登るシーン[注釈 4]など、本家『キング・コング』へのオマージュ的シーンが多い[出典 14][注釈 5]。公開時の宣伝スチールでは、本家のキングコングの写真がゴジラと合成されて多数使われていた[53]

主要襲撃地点は那須、東京、富士山麓、熱海。ミニチュアで作られた熱海城は、ゴジラとキングコングに破壊される。ファロ島では、本物と模型を使い分けた大ダコも登場する。

序盤のストーリーはテレビ業界が中心となっており、テレビの普及率が高まっていた公開当時の世相を反映している[出典 15]。監督の本多猪四郎は、当時のテレビ業界のイメージに対する皮肉を込めたといい[57]、公開当時よりもテレビが普及した後の時代の方が、本作品での視聴率競争への問題意識が理解できるかもしれないとの旨を、後年のインタビューにて述べている[56]

昭和ゴジラシリーズでは、公開前後に何らかの媒体で漫画化されるのが恒例であったが、本作品は漫画化されていない[58]。また、一時期キングコングの写真使用に制限があったため、関連書籍は少ない[59]
ストーリー映画のワンシーン

自社提供のテレビ番組「世界驚異シリーズ」の聴取率不振に頭を痛めるパシフィック製薬宣伝部長の多湖は、南太平洋メラネシアに属するソロモン諸島の南部に位置するファロ島に伝わる「巨大なる魔神」が目覚めたという噂を仕入れ、これを聴取率アップの決定打にしようと企む。提携先のテレビ局のカメラマン・社会教育部員の桜井と古江はたった2人の探検隊として仕立てられ、ファロ島へ派遣される。乗り気でない桜井に対し、時を同じくして妹のふみ子のフィアンセ・藤田は、新開発の特殊繊維のテストをするため、しばらく日本を離れるという。

一方、北極海では海水の温度上昇が始まり、調査のために原潜シーホーク号が国連派遣の科学者を乗せて現地へ向かう。海上には青白く発光する氷山があったが、実はそれこそが大阪市アンギラスとの戦いを終え、神子島で氷漬けにされたまま行方不明となっていたゴジラが眠る氷塊だった。まもなく氷が解けたことで目覚めたゴジラは原潜を沈め、某国基地を破壊して移動する。生物学の権威である重沢博士は、ゴジラは帰巣本能によって日本へ戻ると予測し、国内ではゴジラの話題で持ち切りになる。その影響で「巨大なる魔神」は話題にならず、多胡にとってゴジラはいら立ちの種でしかなかった。

ファロ島に上陸した桜井と古江は、島民たちの間に根強い魔神信仰があり、かつ「巨大なる魔神」が実在することを知る。その夜、海から現れた大ダコに島は大混乱となるが、そこへ山奥から巨大なる魔神=キングコングが出現し、大ダコを追い払う。キングコングは島民たちの用意したファロラクトンを飲み干し、彼らが踊りと共に捧げる祈りの歌を聴くと、たちまち深い眠りに就いてしまった。キングコングを日本へ連れて帰ろうという桜井の発案は、日本で一大旋風を巻き起こす。ホクホク顔の多湖だったが、部下の「キングコングとゴジラ、どちらが強いか?」という一言から次なる宣伝アイデアを思い付く。

そのころ、藤田を乗せた第二新盛丸が北海道沖でゴジラの潜航波によって遭難するという事件が発生し、慌てたふみ子はすぐさま現地へ向かう。だが、藤田は一足先に根室港で下船したため、命拾いしていた。ゴジラは松島湾から上陸して本土を南下する途上にあり、ふみ子を乗せた急行つがるも運転を中止してゴジラに破壊されてしまう。逃げ惑う人々の波から1人はぐれてしまったふみ子を救ったのは、事情を知って追ってきた藤田だった。

自衛隊によってゴジラ対策が急がれる一方、洋上ではキングコングが眠りから覚め、本土へ向けて北上を開始する。千葉東海岸から上陸したキングコングは、あたかも本能に導かれるように南下するゴジラを目指して進み出す。そして、ついに那須高原で初対決するが、緒戦はゴジラの放射能火炎に分があり、悠々と構えるゴジラを前に対抗できないキングコングは引き下がらざるを得なかった。

しかし、自衛隊による100万ボルト作戦が闘いの行方を想定外の方向へ導く。電流を苦手とするゴジラの首都圏侵攻は食い止められたものの、キングコングは高圧線に触れたことにより、ゴジラへの強力な対抗手段である帯電体質を得ていた。東京へ侵入したキングコングは、後楽園駅付近にて丸ノ内線電車をつかみ上げて1人の女性を攫うが、それは避難の最中にまたも藤田とはぐれてしまったふみ子だった。ふみ子に満悦のキングコングは警戒網が張られた都内を進行し、彼女を攫ったまま国会議事堂へよじ登る。うかつに攻撃できない自衛隊や、駆けつけた桜井と藤田をよそに、キングコングはふみ子を手にしたまま悠然と休む。全身にキングコングへの怒りを表して罵倒する藤田の姿に、桜井はファロ島で原住民の踊りとドラムの音、そしてファロラクトンでキングコングが眠り込んだことを思い出し、キングコングを麻酔弾で眠らせる作戦を思い立つ。作戦は成功してキングコングが再び眠りに就き、ふみ子は無事に救出される。

キングコングは藤田の開発した特殊繊維のワイヤーとヘリウムガスの風船で吊るされ、富士山麓を進行中のゴジラのもとへ空輸されることが決まる。「両雄並び立たず、双方共倒れ」として、両者を共倒れさせる作戦によって再び合いまみえたゴジラとキングコングは激戦を展開する。ゴジラの放射能火炎とキングコングの放電が激突した末、両者はもみ合ったまま巨大な波しぶきをあげて熱海の海中へ落下する。やがて、沖合で浮上したキングコングはそのままファロ島を目指して南方へ逃れ、多湖は宣伝を断念する。一方、ゴジラは浮上しないまま行方不明となる。人々に未知なる自然の脅威と教訓を残しつつ、二大怪獣の死闘は終わりを告げた。
登場人物
桜井 修(さくらい おさむ)
[60]
本作品の主人公。民放テレビ局・TTVのカメラマン[出典 16]。「世界驚異シリーズ」の視聴率向上のため、「巨大なる魔神」の取材班員としてファロ島へ派遣される[61][60]。妹のふみ子と公営団地に二人住まい。ドラムが得意な[63]元ミュージシャンで、欠員補助として自らCMに出演することもある[62]。表面上は常識人然と振る舞っているが、一度決めるとことんまで突っ走ってしまう言動が多く、ふみ子曰く「呑気なくせに向こう見ず」。

桜井がファロ島の酋長に対して片言で喋りかけるのは演じる高島忠夫のアドリブであり、監督の本多猪四郎は高島の持ち味が面白く出たと評している[56]

劇中で披露するドラムは、島の特技を活かしたものである[64]

藤田 一雄(ふじた かずお)[65]
繊維メーカー・東京製綱の技術者[出典 17]。「鋼より強く絹糸よりしなやか」と称する特殊繊維の開発に携わっている[66][65]。桜井兄妹と同じ団地に住んでおり、ふみ子とは恋人同士である[出典 17]。修に対しては敬語を使っていたが、後にため口になる[63]。特殊繊維の船具用試作品テストのために乗船していた大型貨物船がゴジラの潜航波によって東北太平洋沖で遭難し、新聞で安否不明者の1人として報じられたが、実際は根室に寄港した際に下船していた。キングコングの東京襲撃の際も避難中にふみ子とはぐれて電車に乗り損ねたため、二度も難を逃れた強運の持ち主。その後、特殊繊維はキングコング輸送作戦に用いられる[出典 18]

脚本決定稿までは、藤田とふみ子の結婚式がラストシーンとなっていた[67]

古江 金三郎(ふるえ きんざぶろう)[68]
TTVの演出部員[出典 19]。桜井とともにファロ島へ赴く[68][62]


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