キログラム
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の原子を蓄積し、それを中性化するのに必要な電流によって定義する。

国際キログラム原器(IPK)の質量の不確かさ

キログラムの定義が変更されたことにより、国際キログラム原器(IPK)の質量には10 μgの不確かさがあることとなった[39]。また、各国に配布されているキログラム原器の質量には、BIPMによるキャリブレーション証明書(2019年5月20日以前に発行されたもの)に記載されている不確かさの数値に10 μgを加えた不確かさがあることとされた[40]

その後、2020年12月に上記の見積り値は見直されており、2021年2月1日からは国際キログラム原器の質量は、1 kg?2 μg であり、その標準不確かさは 20 μg とすることが質量標準供給の国際基準値「合意値(Consensus value)」となった[41]。すなわち、

IPKの質量 = 0.999999998(20) kg

である。
グラムとキログラム

グラム(英語: gram, 仏語: gramme, 記号: g)は質量の単位であり、SIにおいては「キログラムの1000分の1 (10?3 kg) 」と定義されている。「キログラム」は、明らかにグラムにSI接頭語キロ (kilo-) を付けたものである。しかし、SIにおいては、グラムではなくキログラムが基本単位となっており、グラムはその分量単位の一つとされている。

グラムではなくキログラムがSI基本単位とされたのは、以下のような経緯があるからである。

フランスにおいて1789年の革命が勃発した後、国王ルイ16世は新しい時代の度量衡単位の策定を、アントワーヌ・ラヴォアジエニコラ・ド・コンドルセピエール=シモン・ラプラスジャン=シャルル・ド・ボルダアドリアン=マリ・ルジャンドルなど主に科学者達で構成された委員会に委嘱した[42]。その委員会において、質量単位のモデルとして1メートルの10分の1(= 10 cm)で構成された立方体の升に入った水の質量、すなわち1リットルの大気圧下で氷の溶けつつある温度(0度)における水について、grave(グラーブ、記号G)と名称が与えられた質量単位を標準とすることが提案された[43]。その語源は gravity(重力)から由来したものである。

当初は、この grave(グラーブ、グラーヴ)を質量の基本単位とした原器が作られる予定であった。またこれを元として、1 grave の1000分の1を別の質量単位名で、仏語 gramme(グラム)ないし gravet(グラベト、グラヴェト)、また1 grave の1000倍を別の質量単位名を用いて tonne(トン)ないし bar(バー)と称するように名称が考案されたりもした。そしてやがて来るフランス革命の波に襲われ、科学者達の研究は途中で中断するが、その後、新しい革命政府が樹立されると再びメートル法が注目されるようになった。しかしそのフランス革命の後、質量の単位は大きな転機を迎えることとなる。

1795年の(暫定)メートル法制定当初、革命後の共和政府が当初の質量の基本単位を grave から、その1000分の1を表す gramme へと変更したのである。理由は諸説あるが、有力な説の一つとして、1 grave という大きさの質量が当時、メートル法以前の昔から使われてきたいくつかの質量の旧単位と比較しても、大きな単位であるということがある。そのためフランスの科学者達は、グラーブは日常的に使う質量単位としては大きすぎるであろうと危惧し、フランス共和政府と共に、質量の基本単位は1グラーブの1000分の1である「1グラムを質量の基本単位とすべき」と決定したという説があるが、真相は定かではない。

しかし、質量の基本単位を1グラムとすると非常に使い勝手が悪く、とりわけ1グラムを定義した、(1円硬貨ほどの大きさを持つ)原器を作るにはあまりにも小さすぎた。そこで共和政府は基本単位とした1グラムの1000倍、すなわち当初の予定通り1 graveの質量原器を作ることを決めたわけであるが、その名称が使われることはなく、グラムの1000倍を表すために接頭語のキロ (k) を付けた名称、"キログラム (kg)"の名前を冠した原器を作ることと決めた。これはあくまでも質量の基本単位をグラムにしたことに起因する。こうして当初の質量単位 grave(グラーブ)の名称は姿を消したのである。

これが後の1799年に作成された「確定キログラム原器」となった。こうしてメートル法制定当初、長さの単位を m(metre; メートル)、質量の単位を g(gramme; グラム)とした基本単位ができ上がった。しかし、メートルとグラムとではその規模が異なる。すなわち、「数グラムの質量を持つものは、数センチメートル台の大きさ」であることが多く、逆に「メートルで測られる大きさを持つものは、キログラム台の質量を持つ」ことが多い。そのため、メートルの代わりにセンチメートルを採用し、センチメートル(英語:centimeter; 仏語: centimetre)・グラム(英語: gram; 仏語: gramme)・秒(英語: second; 仏語: seconde)を基本単位とする単位系が構築されるようになった。これがCGS単位系である。

しかし、電磁気学の発展に伴い、CGS単位系では不都合が生じるようになった。CGS単位系を元に電磁気学の単位を作ると、値が大きくなってしまう。これは、電磁気学の現象を記述するには、センチメートル・グラムでは小さすぎるということである。そのため、科学で使われる単位系の主流はメートル・キログラム・秒を基本単位とするMKS単位系へと移行した。また上記に記された1889年のキログラムの新定義により、それ以降のメートル法において質量の基本単位としての礎を築いた。MKS単位系を更に発展させた国際単位系(SI)においても、キログラムが基本単位として引き継がれている。

キログラムの分量・倍量単位のSI接頭語は、キログラムではなくグラムを基準にして付けられる。これは、SIでは二重にSI接頭語を付けることを禁じているためである。そこで、キログラムを基準としてSI接頭語が付けられるように、キログラムに代わる新たな単位名称を付けようという提案が何度かなされている。quilo(記号:q)や kilon(記号:k)といったものが提案されている[44]が、正式に議論にかけられたものは、現時点ではない。
重量との関係「重さ#質量と重さ 」も参照

いわゆる「1キログラムの重量(重さ)」は、1 kgの質量をもつ物体に重力が働くことによって生じるであり、これを表すには重量キログラム(kgf, kgw, キログラム重)という、質量のキログラムとは異なる単位がある。定義された重量キログラムは地球表面(の特定の場所)において1 kgの質量を持つ物体に働く約9.80665 N(力のSI単位)の重力である。980.665 cm/s2(この値が定義されたときはCGS単位系が主として使われていた)という重力加速度の値は、グラム重を定義するために第3回国際度量衡総会(CGPM)で定められた協定値であるということに注意する必要がある。重力加速度は緯度や高度、場所によって微妙に異なるため、この値が定められるまではグラム重という単位は値が不明確な単位であった。

力学の単位の3つのアプローチ[45][46].mw-parser-output .hlist ul,.mw-parser-output .hlist ol{padding-left:0}.mw-parser-output .hlist li,.mw-parser-output .hlist dd,.mw-parser-output .hlist dt{margin-right:0;display:inline-block;white-space:nowrap}.mw-parser-output .hlist dt:after,.mw-parser-output .hlist dd:after,.mw-parser-output .hlist li:after{white-space:normal}.mw-parser-output .hlist li:after,.mw-parser-output .hlist dd:after{content:" ・\a0 ";font-weight:bold}.mw-parser-output .hlist dt:after{content:": "}.mw-parser-output .hlist-pipe dd:after,.mw-parser-output .hlist-pipe li:after{content:" |\a0 ";font-weight:normal}.mw-parser-output .hlist-hyphen dd:after,.mw-parser-output .hlist-hyphen li:after{content:" -\a0 ";font-weight:normal}.mw-parser-output .hlist-comma dd:after,.mw-parser-output .hlist-comma li:after{content:"、";font-weight:normal}.mw-parser-output .hlist-slash dd:after,.mw-parser-output .hlist-slash li:after{content:" /\a0 ";font-weight:normal}.mw-parser-output .hlist dd:last-child:after,.mw-parser-output .hlist dt:last-child:after,.mw-parser-output .hlist li:last-child:after{content:none}.mw-parser-output .hlist dd dd:first-child:before,.mw-parser-output .hlist dd dt:first-child:before,.mw-parser-output .hlist dd li:first-child:before,.mw-parser-output .hlist dt dd:first-child:before,.mw-parser-output .hlist dt dt:first-child:before,.mw-parser-output .hlist dt li:first-child:before,.mw-parser-output .hlist li dd:first-child:before,.mw-parser-output .hlist li dt:first-child:before,.mw-parser-output .hlist li li:first-child:before{content:" (";font-weight:normal}.mw-parser-output .hlist dd dd:last-child:after,.mw-parser-output .hlist dd dt:last-child:after,.mw-parser-output .hlist dd li:last-child:after,.mw-parser-output .hlist dt dd:last-child:after,.mw-parser-output .hlist dt dt:last-child:after,.mw-parser-output .hlist dt li:last-child:after,.mw-parser-output .hlist li dd:last-child:after,.mw-parser-output .hlist li dt:last-child:after,.mw-parser-output .hlist li li:last-child:after{content:")\a0 ";font-weight:normal}.mw-parser-output .hlist ol{counter-reset:listitem}.mw-parser-output .hlist ol>li{counter-increment:listitem}.mw-parser-output .hlist ol>li:before{content:" "counter(listitem)" ";white-space:nowrap}.mw-parser-output .hlist dd ol>li:first-child:before,.mw-parser-output .hlist dt ol>li:first-child:before,.mw-parser-output .hlist li ol>li:first-child:before{content:" ("counter(listitem)" "}.mw-parser-output .navbar{display:inline;font-size:75%;font-weight:normal}.mw-parser-output .navbar-collapse{float:left;text-align:left}.mw-parser-output .navbar-boxtext{word-spacing:0}.mw-parser-output .navbar ul{display:inline-block;white-space:nowrap;line-height:inherit}.mw-parser-output .navbar-brackets::before{margin-right:-0.125em;content:"[ "}.mw-parser-output .navbar-brackets::after{margin-left:-0.125em;content:" ]"}.mw-parser-output .navbar li{word-spacing:-0.125em}.mw-parser-output .navbar-mini abbr{font-variant:small-caps;border-bottom:none;text-decoration:none;cursor:inherit}.mw-parser-output .navbar-ct-full{font-size:114%;margin:0 7em}.mw-parser-output .navbar-ct-mini{font-size:114%;margin:0 4em}.mw-parser-output .infobox .navbar{font-size:88%}.mw-parser-output .navbox .navbar{display:block;font-size:88%}.mw-parser-output .navbox-title .navbar{float:left;text-align:left;margin-right:0.5em}








基本単位力・長さ・時間重さ・長さ・時間質量・長さ・時間
(F)F = m⋅a = w⋅.mw-parser-output .sfrac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .sfrac.tion,.mw-parser-output .sfrac .tion{display:inline-block;vertical-align:-0.5em;font-size:85%;text-align:center}.mw-parser-output .sfrac .num,.mw-parser-output .sfrac .den{display:block;line-height:1em;margin:0 0.1em}.mw-parser-output .sfrac .den{border-top:1px solid}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}a/gF = m⋅a/gc = w⋅a/gF = m⋅a = w⋅a/g
重さ (w)w = m⋅gw = m⋅g/gc ? mw = m⋅g
単位系BGGMEEMAECGSMTSSI(MKS)
加速度 (a)ft/s2m/s2ft/s2m/s2ft/s2Galm/s2m/s2
質量 (m)slugsluglbmkglbgtkg
力 (F)lbkgflbFkgfpdldynsnN
圧力 (p)lb/in2atPSIatmpdl/ft2BapzPa

分量・倍量単位

グラム (g) の倍量・分量単位分量倍量
値記号名称値記号名称
10?1 gdgデシグラム101 gdagデカグラム
10?2 gcgセンチグラム102 ghgヘクトグラム
10?3 gmg
ミリグラム103 gkgキログラム
10?6 gμgマイクログラム106 gMgメガグラム(トン
10?9 gngナノグラム109 gGgギガグラム
10?12 gpgピコグラム1012 gTgテラグラム
10?15 gfgフェムトグラム1015 gPgペタグラム
10?18 gagアトグラム1018 gEgエクサグラム
10?21 gzgゼプトグラム1021 gZgゼタグラム
10?24 gygヨクトグラム1024 gYgヨタグラム
10?27 grgロントグラム1027 gRgロナグラム
10?30 gqgクエクトグラム1030 gQgクエタグラム
よく使われる単位を太字で示す

SI接頭語は歴史的な理由(上記#グラムとキログラム参照)により、キログラムではなくグラムに対して付けられる。例えば1キログラムの100万分の1の質量は、1「マイクロキログラム」ではなく1ミリグラム(1000分の1グラム)となる。マイクログラムもよく用いられ、「μg」または「mcg」と表記するが、webコンテンツなどでは「μ」に代え「u」と代用表記される、すなわち「ug」となる場合もある[47]。実用されている分量・倍量単位は次の通り。

キログラム (kg) -- 103 g (1 kg)

グラム (g) -- 100 g (10?3 kg)

ミリグラム (mg) -- 10?3 g (10?6 kg)

1立方ミリメートルの水の質量は1ミリグラムである。

砂粒はだいたい1ミリグラム程度である。

飲食物の栄養成分表示でよく「?mg」という表示が見られる。


マイクログラム (μg) (mcg)-- 10?6 g (10?9 kg)

一部の飲食物の栄養成分表示で、時に「?μg」という表示が見られる。


ナノグラム (ng) -- 10?9 g (10?12 kg)

ピコグラム (pg) -- 10?12 g (10?15 kg)

フェムトグラム (fg) -- 10?15 g (10?18 kg)

アトグラム (ag) -- 10?18 g (10?21 kg)

ゼプトグラム (zg) -- 10?21 g (10?24 kg)

ヨクトグラム (yg) -- 10?24 g (10?27 kg)

核子原子分子の質量はヨクトグラムのオーダーである。

1原子質量単位は 1.660 54 yg

陽子の質量は 1.672 6 yg

中性子の質量は 1.674 9 yg


ロントグラム (rg) -- 10?27 g (10?30 kg)

クエクトグラム (qg) -- 10?30 g (10?33 kg)

電子の質量は 911 qg

次のようにグラムにメガ以上のSI接頭語を付けることも考えられるが、キログラムの1000倍の質量に対して、1メガグラム (Mg) という名前が用いられることは一般にはなく、トンが使われる。さらにはトンの倍量単位に対し、トンにSI接頭語が付されることも多い(とくにキロトン (kt) やメガトン (Mt))。

クエタグラム (Qg) -- 1030 g (1027 kg, 1024 t (1 Yt))

ロナグラム (Rg) -- 1027 g (1024 kg, 1021 t (1 Zt))

ヨタグラム (Yg) -- 1024 g (1021 kg, 1018 t (1 Et))

例: ウンブリエル(天王星の衛星)、ディオネ(土星の衛星)、ケレス(準惑星)


ゼタグラム (Zg) -- 1021 g (1018 kg, 1015 t (1 Pt))

エクサグラム (Eg) -- 1018 g (1015 kg, 1012 t (1 Tt))

ペタグラム (Pg) -- 1015 g (1012 kg, 109 t (1 Gt))

テラグラム (Tg) -- 1012 g (109 kg, 106 t (1 Mt))

ギガグラム (Gg) -- 109 g (106 kg, 103 t (1 kt))

メガグラム (Mg) -- 106 g (103 kg, 1 t)

SI接頭語はグラムに対して付けられるため、100倍・10倍・1/10および1/100を表すSI接頭語を付けた次のような単位も一応考えられ、後述のようにこれらを表す漢字(和製漢字国字)も作られているが、現実には用いられず、理論上の単位の域を出ない。またかつては1万倍を表す「ミリア」というSI接頭語も存在したが、これもあまり用いられることなく、現在では廃止されている。

ミリアグラム -- 104 g (101 kg)

ヘクトグラム (hg) -- 102 g (10?1 kg)

デカグラム (dag) -- 101 g (10?2 kg)

デシグラム (dg) -- 10?1 g (10?4 kg)

センチグラム (cg) -- 10?2 g (10?5 kg)

表記

漢字ではグラムが「瓦蘭姆」と音訳され、ここから「瓦」一字だけでグラムの意味を表すようになった。日本では明治時代、中央気象台(現気象庁)が「瓦」をその中に含む以下のような倍量・分量単位の漢字を作り、1891年から各気象台で気象観測の月報などに使用して、一般にも広まった。中国では、「瓦」はワットを表し、グラムには「克」の字を当てているため、それに合わせて「?」(キログラム)、「?」(ミリグラム)といった漢字が作られており、またキログラムは中国語では伝統的な単位であると関連付けて「公斤」とも訳された。

これらの漢字表記は、計量法上は使用することはできない。

マイクログラム (μg) -- {瓦少} ()

ミリグラム (mg) -- 瓱

センチグラム (cg) -- 甅

デシグラム (dg) -- 瓰

デカグラム (dag) -- 瓧

ヘクトグラム (hg) -- 瓸

キログラム (kg) -- 瓩(中国では、日本と独立にキロワットの意味の文字として作られている)


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