キュロス2世
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この再建は難航し、紀元前520年ごろに第二神殿が完成した時にはキュロスはすでに死去していたものの、キュロス以降も継続された宗教寛容政策に彼への尊敬も相まってか、ユダヤ人はアケメネス朝の統治下においては一度も反乱を起こさなかった[5]。キュロスは子のカンビュセス2世にバビロンの統治を命じ、旧バビロニアの統治機構をそのまま利用して統治を進めた。この時期にキュロスは宣撫文書としてキュロスの円筒印章を作らせ、ペルシアの統治の正当性を主張させた。
中央アジア征服

彼はさらに東方辺境に転戦して、バクトリアソグディアナを征服し、サカを従属させて、この地域の総督としてスメルディス王子を置いた。こうしてキュロスは、東はヤクサルテス川古希: ?αξ?ρτη?)から西は小アジアに至る広大なペルシア王国を建設した。
マッサゲタイとの戦いと崩御キュロス2世戦没時のアケメネス朝領土

ヘロドトスは著書『ヒストリアイ』の中で、キュロスは、トミュリス女王率いるマッサゲタイ人との戦いで戦死したという説を伝えている。しかしすでに一部の統治権を譲渡されていたこともあり、皇太子であるカンビュセス2世への政権移譲は滞りなく行われた。カンビュセス2世は紀元前525年に残る大国であるエジプトを征服し、オリエントに広大な統一帝国が誕生することとなった。

キュロスの墓(英語版)は、王都パサルガダエに築かれた。この陵墓は現在でも残っており、2004年にパサルガダエの都市遺跡の一部として世界遺産に登録された。
統治

キュロスの帝国はその当時としては空前絶後の大きさのものであり、それまでのオリエントの4大国であったメディアリュディア新バビロニアエジプトのうち、エジプトを除く3カ国を併呑したうえエラムやフェニキアといった独立勢力や東方の地域までを含むものであった。こうした広大で多様な地域を統治するため、キュロスは王国を20の州に分け、各州ごとにサトラップ(太守)をおいて統治させた。このサトラップ制は、それまでメディア王国において用いられていた制度をそのまま利用したものである。キュロスは宗教に関しては寛容な姿勢を保ち、これはアケメネス朝の統治期を通じ守られた。帝国の公用語はアンシャン時代から引き続きエラム語であり、アケメネス朝一代を通じてそれは変わらなかった。
後世の評価キュロス大王のものと伝えられる墓(パサルガダエ)

ユダヤ人バビロン捕囚から解放したことで、聖書や哲学者クセノポンの著作(『キュロスの教育』)において高く評価され、キュロスは理想的な君主として東西洋問わずイメージ付けされるようになった。近代に入ると、パフラヴィー朝の皇帝モハンマド・レザー・パフラヴィーイラン人の民族意識を高揚させる政策を取り、キュロスはペルシア帝国の建国者として賞揚された。キュロスの円筒印章が「世界史上最古の人権宣言」としてさかんに喧伝された。1971年にはキュロスのアケメネス朝建国2500年を記念するという名目でペルセポリスで盛大なイラン建国二千五百年祭典を開催し、パサルガダエのキュロス大王陵(英語版)にて国王の演説が行われた。またこの時にイラン暦の紀元がキュロス即位時(紀元前559年)に変更されてイラン皇帝暦と名を変え、ヒジュラ暦に代わって国家の公式なとなった。なお、この暦が正式に施行されたのは翌1976年(皇帝暦2535年)であった[6]。しかしわずか3年後の1979年イラン革命が起こり、パフラヴィー朝王政の崩壊に伴ってイラン皇帝暦も廃止された。

近年ではイラン民族主義の高揚に伴い、キュロス大王の人気や知名度がイラン人の間で高まるようになり、キュロスがバビロニア軍を撃ち破って古代オリエントを一統したイラン暦の8月7日(グレゴリオ暦10月29日)をイラン民族主義の記念日(キュロス大王の日)にしょうとする動きが盛んになっている。イスラム神権政治を掲げるイラン当局はこうした動きを警戒している。



考古資料
キュロスの伝記
キュロスの伝記には、
クセノポンによる「キュロスの教育」がある。
タナハ・旧約聖書
タナハ諸書旧約聖書の『ダニエル書』などに登場する。
コーラン
コーランにも登場する(en:Cyrus the Great in the Quran)。
賢人シュンティパスの書
パンチャタントラ」「アラビアンナイト」と並ぶ、西アジアまたはインド起源とされる枠物語『シンドバードの書』の中世ギリシア語訳。枠物語に登場する王の名がキューロスである。1080年東ローマ帝国のアンドレオポーロス(ギリシア語: Μιχα?λ Ανδρε?πουλο? 、英語: Michael Andreopoulos)によってシリア語版からギリシア語に翻訳された。


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