キュウリ
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果実の表面にはイボがついているが、品種によってはイボがないものもある[12]の酸素要求量が大きく、過湿により土壌の気相が小さい等、悪条件下では根が土壌上部に集中する。
歴史
起源

キュウリは古くから食用の野菜として栽培されている。果実成分の95%程度が水分とされ、歯応えのある食感とすっきりとした味わいがある。水分を多く含むことから暑い季節・地域では水分補給用として重用されてきた。

インド西北部のヒマラヤ山脈の南の山麓地帯が原産で[9]紀元前10世紀ごろには西アジアに定着したとみられている[6]。紀元前4000年前にメソポタミアで盛んに栽培されており、インド古代ギリシア古代エジプトなどでも栽培された。その後、6世紀に中国、9世紀にフランス、14世紀にイングランド、16世紀にドイツと伝播していき、16世紀ごろのヨーロッパで栽培が盛んになった[6]アメリカ大陸には15世紀末、クリストファー・コロンブスハイチに持ち込んだのを端緒に普及していった。キュウリを好物とした歴史上の有名人としてローマ皇帝ティベリウスがいる。

原産地から東方への伝播は2ルートあり[9]、かつて中国では、東南アジアからビルマ経由で華南に伝来した水分の少ない南伝種が普及し、シルクロード経由で華北に伝わった瑞々しい北伝種が伝来するまでの間、この南伝種を完熟させてから食べるのが一般的であった。のちに南伝種は漬物酢の物に、北伝種は生食に使い分けられることになる[13]
日本での普及

日本には6世紀に南伝種が中国から伝わり、明治期に北伝種が入ってきたといわれるが[9]、本格的に栽培が盛んになったのは昭和初期からである[12]。仏教文化とともに遣唐使によってもたらされたとみられているが、当初は薬用に使われたと考えられていて[6]空海が元祖といわれる「きゅうり加持」(きゅうり封じ)にも使われてきた。南伝種の伝来後、日本でも江戸時代までは主に完熟させてから食べていたため、「黄瓜」と呼ばれるようになった[14]。完熟した後のキュウリは苦味が強くなり、徳川光圀は「毒多くして能無し。植えるべからず。食べるべからず」、貝原益軒は「これ瓜類の下品なり。味良からず、かつ小毒あり」と、はっきり不味いと書いているように、江戸時代末期まで人気がある野菜ではなかった[14]。これには、戦国期の医学者曲直瀬道三の『宣禁本草』などに書かれたキュウリの有毒性に関する記述の影響があると見られている。安土桃山時代以前にはキュウリに禁忌は存在せず、平安後期の往来物新猿楽記』に登場する美食趣味の婦人「七の御許」が列挙した好物の一つに「胡瓜黄」が入っている。イエズス会宣教師ルイス・フロイスは著書『日欧文化比較』(1585)で「日本人はすべての果物は未熟のまま食べ、胡瓜だけはすっかり黄色になった、熟したものを食べる」と分析している[15]

重要野菜として定着したのは江戸時代末期で、キュウリの産地だった砂村(現在の江東区)で、キュウリの品種改良が行われ、成長が速く、歯応えや味が良いキュウリが出来て、一気に人気となった[16]明治末期には、栽培面積でナスの3分の1強ほどあった[6]昭和初期には栽培面積が急増し[14]、第二次世界大戦(太平洋戦争)後は温室栽培でさらに盛んになり、特に漬物に加えてサラダの需要が増えてから、生食用野菜として重要視されてからはトマトと果菜類の収穫量の首位を競うほどになっている[6][17]。終戦前までは関東では「落合」、関西では「馬込反白」系が主流であったが、1965年(昭和40年)ごろになると日本各地でキュウリの産地が増えるとともに品種の特徴が競われるようになり、従来の黒イボ系に対し、肉質が締まった白イボ系品種の人気が高まるようになった[17]。1983年(昭和58年)に表面に白い粉を吹かないブルームレスキュウリの台木が育成され、全国的に普及した[17]。2001年(平成13年)には新タイプのキュウリとして、イボなしの「フリーダム」が発売された[17]
栽培

キュウリは温度や水分には敏感な作物で[18]、夏場に次々と実をつけて大きくなっていくので、水切れしないように管理して育てていく[19]。ツルを支柱にしっかり固定し這わせる方法と、地面を這わせる栽培法がある[20]。栽培時期は、北半球で一般に春から秋(4 - 9月)のシーズン中に行われ、春に苗を植えて初夏から収穫する「春きゅうり」と、初夏に種を蒔いて夏の終わりに収穫する「夏きゅうり」、盛夏に種を蒔いて収穫する「秋きゅうり」がある。栽培適温は25 - 28度とされ[20]、夜温は15度以上が望ましい[21]。キュウリは、ウリ科の植物どうしの連作にも弱く、2 - 3年ほどウリ科の野菜を育てていない畑で作付けする[20]。根の酸素要求量は野菜の中でも最も大きいので、土壌の孔隙量が多いほど良く育つ[18]。また肥料を好む性質のため、追肥をして肥料切れを起こさないよう育てると良い作物ができやすい[19]。雌花が咲いたら、朝のうちに雄花をつんで雌花に人工授粉を行うことにより、より確実に着果させることができる[19]

親づるに実がつく節成り系のキュウリは支柱栽培に向き、子・孫づるに実がつく枝成り系のキュウリは地を這わせる栽培に向く[22]。支柱栽培法は、キュウリの茎葉組織がもろく風に当たって折れやすいため、支柱立てや誘引を入念に行う[18]。地面に這わせる栽培法では、ワラを敷いておくと巻きひげがワラに絡まりながら生長していく[22]

春まきはポットで育苗して定植、夏まき・秋まきは、直播きになる[23]。苗をつくるときは、育苗ポットに3粒ほど種をまき、本葉が出たら1本だけ残して切り取り、本葉4 - 5枚の苗に仕上げる[21]。キュウリは浅根性であるため、は元肥を浅く入れてよく耕して混合し、幅90 cmほどのをつくる[21]。土壌の保温や保湿を図るためマルチングをしてもよい[21]。苗の定植は、畑にあらかじめ灌水し、根を傷めないように丁寧に植え付けて再び灌水する[24]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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