キッド級ミサイル駆逐艦
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C4ISR改修後のマスト。
AN/SPG-60が後檣に移設され、空いたスペースにAN/SPS-49が追加されている。また、AN/SPS-48の設置場所も高くなっている。

上記の通り、本級は海軍戦術情報システム(NTDS)の戦術情報処理装置を搭載しており、リンク4A、11、14での戦術データ・リンクに対応する[3]。電子計算機としてはスプルーアンス級と同様にAN/UYK-7を採用した。なお本級では、NTDSの主計算機として4ベイのAN/UYK-7を搭載するとともに、武器管制システム(WDS Mk.13 mod.0)用の電子計算機として1ベイのAN/UYK-7も併載していたが、このようにWDS用の電子計算機を分離するのは他に類のない構成であった。NTU(New Threat Upgrade)改修の際に主計算機はAN/UYK-43に更新され、ソフトウェアも、従来のNTDSのソフトウェアを元にAN/UYK-43で実行できるように書き直したRNTDS(restructured NTDS)に更新された。またこの際に、WDSもMk.14 mod.5に更新された[8]。なおRNTDSはACDSブロック0とも称されており、後には更にACDSブロック1レベル1に更新された[9]

対空センサーとして、後檣にAN/SPS-48C 3次元レーダーを搭載した。ここはスプルーアンス級では2次元式のAN/SPS-40が設置されていたが、設計段階から、DXGとして設計変更した場合にはSPS-48を搭載できるように所定の強度が確保されており、当初計画通りの装備変更となった。また後のNTU改修の際に、これをSPS-48Eに更新するとともに、前檣に2次元式のAN/SPS-49(V)2を追加した。これらの情報を統合するAN/SYS-2統合自動探知追尾システムも搭載された[1]

ソナーAN/SQS-53Aをバウ・ドームに収容して搭載した。長距離探知が可能な戦術曳航ソナーの後日装備も検討されていたが[1]、実現しなかった[3]

電子戦装置としては、当初は電子戦支援用のAN/SLQ-32(V)2電波探知装置を備えていたが、後にサイドキック改修を受けて(V)5にバージョンアップした[3]
武器システム船体後部のMk.26発射機と5インチ砲

防空艦としての本級の主兵装となるのがターター・システムである。本級の搭載システムは、カリフォルニア級原子力ミサイル巡洋艦で装備化されたものと同系統の、デジタル化されたターター-Dであり、NTDSおよびWDSと連接されている。それぞれAN/SPG-51D火器管制レーダーを1基ずつ備えたMk.74 ミサイル射撃指揮装置(NTU改修によりmod.15にバージョンアップ)を2基搭載しているほか、艦砲のためのMk.86 砲射撃指揮装置のAN/SPG-60火器管制レーダーもミサイルの誘導に使用できることから、同時に3個の目標と交戦できる[3]

ミサイル発射機としては、バージニア級で採用された新しい連装のMk.26が搭載された。その搭載位置は、スプルーアンス級でアスロック用のMk.16 GMLSが搭載されていた艦橋前の前甲板とシースパロー用のMk.29 GMLSが搭載されていた艦尾側の2か所である。なお、前甲板のものは24発装填可能なMod.3、後部のものは44発装填可能なMod.4であり、また後部のMod.4についてはアスロックの運用に対応した。これらから運用される艦隊防空ミサイルとしては、当初はスタンダードSM-1MRが搭載されていた[1]

その後1988年より、NTU(New Threat Upgrade)改修が開始された。これによって電子機器は上記の通りに更新され、ミサイルもスタンダードSM-2MRの運用に対応した[1]。これに伴い、SYR-3393中間誘導装置4基も搭載されている[9]。なおNTU改修艦については「貧者のイージス艦」と通称されているが、特にSPS-48Eのアンテナが旋回式で即応性に劣ることから、シースキマーへの応答時間はAN/SPY-1Dレーダー搭載艦の4倍程度かかるものと見積もられていた[10]

なお艦砲はスプルーアンス級の構成が踏襲され、54口径127mm単装砲(Mk.45 5インチ砲)を船首楼甲板と船尾甲板に1門ずつ搭載した。対艦兵器も同様で、ハープーン艦対艦ミサイルの4連装発射筒2基を艦中部に搭載した。対潜兵器は、アスロック対潜ミサイルと324mm3連装短魚雷発射管Mk.32 mod.5)という基本構成は同様だが、本級ではアスロックの専用発射機は搭載されず、艦対空ミサイル用のMk.26発射装置で兼用するかたちとなっている[1][3][9]
航空機

艦載ヘリコプターとしては、SH-2シー・スプライトLAMPS Mk.Iを搭載し格納庫は2機分が用意されていた。

台湾海軍では、SH-60B シーホークLAMPS Mk.IIIを基にしたS-70C(M)サンダーホークへ変更された。
同型艦
一覧表

全艦インガルス造船所で建造された。アメリカ海軍での艦名は、いずれも太平洋戦争中に戦死した少将の名にちなんでいる。

 アメリカ海軍 中華民国海軍
艦番号艦名起工進水就役退役艦番号艦名再就役
DDG-993キッド
USS Kidd1978年
6月26日1979年
8月11日1981年
3月24日1998年
3月12日DDG-1803左営
Tso Ying2006年
11月
DDG-994キャラハン
USS Callaghan1978年
10月23日1979年
12月1日1981年
8月29日1998年
3月31日DDG-1802蘇澳
Su Ao2005年
12月
DDG-995スコット
USS Scott1979年
2月12日1980年
3月1日1981年
10月24日1998年
12月11日DDG-1801基隆
Kee Lung2005年
12月
DDG-996チャンドラー
USS Chandler1979年
5月7日1980年
6月28日1982年
3月13日1999年
9月23日DDG-1805馬公
Ma Kong2006年
11月

運用史中華民国海軍に引き渡された「基隆」と「馬公」

アメリカ海軍での運用は1998年から1999年にかけて終了した。退役後は、高価なイージスシステムより劣るが、手ごろな艦隊防空能力を有するため、ギリシャ海軍オーストラリア海軍が興味を示したが、費用対効果の問題などで導入を断念[11]。結局、中華人民共和国への配慮から引渡しを見送ったイージス艦の代わりとして、中華民国に売却された。8億ドルをかけて再就役および改修が行われた[3]


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