日本鳥学会が選定した国鳥[9]であるとともに、国内の多くの自治体でも「市町村の鳥」に指定されている。種小名の versicolor は、ラテン語で「色変わりの」を意味する[4]。日本の古語では「雉子(きぎす)」(10世紀前半成立の『和名類聚抄』巻十八「羽族名」での表記は、「木々須」と記す)。
キジやコウライキジは世界中で主要な狩猟鳥とされ、キジ肉は食用でもある[10]。 日本では北海道と対馬を除く本州、四国、九州に留鳥として分布している[11]。日本には、東北地方に生息するキタキジ、本州・四国の大部分に生息するトウカイキジ、紀伊半島などに局地的に生息するシマキジ、九州に生息するキュウシュウキジの4亜種が自然分布していた。ユーラシア大陸が原産地であるコウライキジが、もともとキジが生息していなかった北海道、対馬、南西諸島などに狩猟目的で放鳥され、野生化している。 全長オスが81 cmほど、メスが58 cmほど[11][12]。翼開長は77 cmほど[11]。体重はオスが0.8-1.1 kg、メスが0.6-0.9 kg。コウライキジではもう少し大きくなる。オスは翼と尾羽を除く体色 山地から平地の林、農耕地、河川敷などの明るい草地に生息している[4][11][12]。地上を歩き、主に草の種子、芽、葉などの植物性のものを食べるが、昆虫やクモなども食べる[11][12]。繁殖期のオスは赤い肉腫が肥大し、縄張り争いのために赤いものに対して攻撃的になり、「ケーン」と大声で鳴き縄張り宣言をする[13]。その際両翼を広げて胴体に打ちつけてブルブル羽音を立てる動作が、「母衣打ち(ほろうち)」と呼ばれている[14]。メスは「チョッチョッ」と鳴く[13]。子育てはメスだけが行う[5]。地面を浅く掘って枯れ草を敷いた巣を作る[13]。4-7月に6-12個の卵を産む[4]。オスが縄張りを持ち、メスは複数のオスの縄張りに出入りするので乱婚の可能性が高い。非繁殖期には雌雄別々に行動する[4][13]。夜間に樹の上で寝る[13][5]。 飛ぶのは苦手だが、走るのは速い[11]。スピードガン測定では時速32キロメートルを記録した[15]。人体で知覚できない地震の初期微動を知覚できるため、人間より数秒速く地震を察知することができる[11][16]。 日本のキジは毎年、愛鳥週間や狩猟期間前などの時期に大量に放鳥される。2004年(平成16年)度には全国で約10万羽が放鳥され、約半数が鳥獣保護区・休猟区へ、残る半数が可猟区域に放たれている。2008年(平成20年)10月25日に那須御用邸で天皇と皇后が、キジとヤマドリの放鳥を行った[17]。放鳥キジには足環が付いており、狩猟で捕獲された場合は報告する仕組みになっているが、捕獲報告は各都道府県ともに数羽程度で、一般的に養殖キジのほとんどが動物やワシ類などに捕食されていると考えられている。これはアメリカ合衆国などでも同様であり、その原因として放鳥場所に適切な草木などキジの生息環境が整えられていない点が挙げられている。しかしながら、少数ではあっても生き残る養殖キジはいるため、日本の元の亜種間で交雑が進み、亜種消滅を懸念する声もある。北海道と対馬ではコウライキジが放鳥されている[11][18]。2002年の日本で農作物への被害額は、2,800万円程と推定されていて、カラスの41.6億円と比較すると少額である[19]。大豆の出芽期に子葉を食べる被害が報告されている[20]。 以下の亜種がある[2]。日本には地理的な変異による4亜種が分布されていたが、放鳥により亜種間の交配が進み差異が不明瞭になってきている[11]。以下の亜種の記載者・記載年・和名・分布は日本鳥類目録 改定第7版に従うが、日本鳥類目録 改定第7版では種 P. versicolor ではなく種 P. colchicus として扱っており、日本国内の亜種の分布域は明瞭ではなく検討が必要としている[6]。 東京都で、レッドリストの指定を受けている(区部で絶滅危惧IB類、北多摩で絶滅危惧II類、南多摩と西多摩で準絶滅危惧)[21]。日本で鳥獣保護法により狩猟鳥獣に指定されている[22]。
分布
形態オスの頭部(繁殖期)
生態
オス
メス
農地で草をついばむつがい
卵
放鳥
亜種キジとコウライキジの交雑とみられる個体
Phasianus versicolor versicolor Vieillot, 1825 キュウシュウキジ
本州南西部、九州、五島列島
Phasianus versicolor robustipes Kuroda, 1919 キジ
本州北部、佐渡島
Phasianus versicolor tanensis Kuroda, 1919 シマキジ
本州(伊豆半島、紀伊半島、三浦半島)、伊豆大島、種子島、新島、屋久島
Phasianus versicolor tohkaidi Momiyama, 1922 トウカイキジ
本州中部、四国
種の保全状況評価
Size:106 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef